記事のポイント
マイケルズは、GoogleのGeminiを搭載したAIショッピングアシスタント「Ask Mike」を導入した。
利用者の購入率は従来検索の2倍以上で、会話の27%が商品クリックやカート追加につながった。
会話型AIは、単品検索から用途に応じた商品一式の提案へと、小売の購買体験を変えつつある。


米国でもっともよく知られたアート&クラフト(手芸)用品小売業者の1社が、GoogleのGeminiを搭載した新しいAIアシスタントのこれまでの成果を明らかにした。

手芸用品大手のマイケルズ(Michaels)は7月21日、初となる顧客向けAIショッピングアシスタント「Ask Mike」を正式に発表した

Ask Mikeは、買い物客の質問に答え、「子どもの誕生日パーティーの計画を手伝って」「子ども向けの夏の工作アイデア」「DIYカーテン用の生地がほしい」「旅行の写真を入れるフレームがほしい」といったプロンプトに応じることをめざしている。プロジェクトの種類、色、素材、予算などの詳細を尋ねてくる仕組みだ。

Ask Mikeは、同社のWebサイト(デスクトップおよびモバイル)に加え、iOSアプリとAndroidアプリ上でも利用できる。マイケルズによれば、このアシスタントは5月にひっそりとローンチされて以来、7万5000件の会話を記録している。

同社は、このツールをGoogle CloudのGemini Enterprise for Customer Experienceを用いて構築したと明らかにした。これは、アルタ・ビューティー(Ulta Beauty)、メイシーズ(Macy's)、ホーム・デポ(The Home Depot)といったほかの小売業者が、AIを活用したショッピング機能を作る際に使ってきたソフトウエアパッケージだ。

従来検索の2倍、高まる購買とエンゲージメント



マイケルズのプレジテント兼最高顧客責任者(CCO)であるヘザー・ベネット氏は、Modern Retailへのメールで、Ask Mikeを利用した買い物客は、従来の検索方法を利用した買い物客の2倍以上の割合で、オンラインで商品を購入していると語った。
同社はまた、やり取りの27%が、顧客による商品リンクのクリックやカートへの追加につながっていると述べた。

「従来の検索とは違い、Ask Mikeは、買い物客がインスピレーションから商品の発見、そしてカートへの追加までシームレスに進めるよう手助けするクリエイティブなアシスタントとして機能し、全体のエンゲージメントを大きく高めている」とベネット氏は述べた。

「従来の検索では、顧客はプロジェクトを『花柄の生地』のような個々のキーワードに分解する必要があり、その結果を自分で選り分けなければならなかった。Ask Mikeなら、買い物客は自然な会話形式で、『宇宙をテーマにしたパーティーの計画を手伝って』といった完全な質問を投げかけるだけで、ツールが必要な商品とアイデアを瞬時にキュレーションしてくれる」。

ベネット氏はまた、AIアシスタントを使う買い物客は、パーティーの開催、額装、工作などのために、中心となる材料と仕上げ用のアイテムを1回のセッションのなかでまとめて購入していると述べた。一方、従来の検索を使う人々は、すでに念頭にある単一の商品を探していることのほうが多いという。

わずか6週間で構築、会話型AIの新時代へ



Google Cloudでリテール業界戦略・ソリューション部門のグローバルディレクターを務めるポール・テプフェンハート氏は、ニュースリリースのなかで、同小売業者がわずか6週間でコンセプトから本番運用レベルのAIへと移行したと述べた。

Google Cloudで南北アメリカのリテール・CPG(消費財)ソリューション責任者を務めるカピル・ダビ氏はModern Retailのインタビューで、マイケルズがこの短期間での実現を成し遂げられたのは、同社がすでにGoogle Cloud上に強固なクラウドインフラの基盤を持っていたからであり、さらに技術スタックを刷新し、AIに対応できる形で商品カタログを整理していたからだと語った。

「技術的な基盤に加えて、成功にはカスタマーエクスペリエンスに対する明確な視点も必要だといえる」とダビ氏は述べ、その小売業者がそれぞれの業界で、優れた顧客とのやり取りとはどのようなものかを理解していることも必要だと語った。

たとえばマイケルズは、顧客が誕生日パーティーを開こうとしているかもしれないこと、そしてその際にどんな商品を探しているのかを把握している。

ダビ氏は、リテール業界は、会話型AIが買い物客とブランドをつなぐ主要なインターフェースになりつつあり、発見がより速く、検索がより直感的でよりパーソナライズされたものになる新たな時代に入りつつあると述べた。

「ハイパーパーソナライゼーションであれ、業務効率化であれ、あるいは(小売業者が)高い革新性を求めることであれ、我々は自社のAI、データ分析、クラウドプラットフォームを活用して、小売業者が一対一のオーダーメイドな顧客体験を実現できるよう、あるいはあらゆるやり取りが高い関連性を持ち、最終的にロイヤルティを高めるよう支援している」とダビ氏は述べた。

[原文:Michaels says Google-powered AI assistant doubles conversion rate of traditional search]

Mitchell Parton(翻訳、編集:藏西隆介)
Image/Instagram : Michaels