高市首相

写真拡大

 2025年10月21日、臨時国会で首相指名選挙が行われ、女性としては憲政史上初となる高市早苗首相が誕生した。NHKは11月9日から3日間、世論調査を実施。10日に「高市内閣支持率66% 小泉内閣 鳩山内閣に次ぐ水準 NHK世論調査」との記事を配信した。NHKは《調査方法が異なるため単純に比較はできない》としながらも、政権発足時の内閣支持率としては小泉内閣の81%、鳩山内閣の72%に次ぐ水準と報じた。(前後編の前編)

 ***

【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 現在と比較すると「まるで別人」

 驚くべきは長期政権となった故・安倍晋三氏の第2次政権でも、NHKの調査によると発足時の支持率は64%だった。いかに高市首相に対する国民の期待が強かったか、66%という数字が改めて認識させてくれる。

高市首相

 その後も高市政権は高い支持率を維持してきた──ところが、である。

 7月に入ると、マスコミ各社の世論調査で支持率が軒並み下落して大きな注目を集めている。まずは各社の調査結果を振り返ってみよう。

 7月12日、TBSをキー局とするJNNが発表した世論調査は前回より4・1ポイント下落して65・9%。翌13日はNHKが2ポイント下がって58%となった。

 14日は産経新聞とフジテレビをキー局とするFNNの合同世論調査が発表され、3・7ポイント下がって61・6%。16日は時事通信の世論調査で5・3ポイント下がって49%となり、同社の調査としては「初めて5割を下回った」と伝えた。

 20日の朝日新聞は7ポイント下落して53%。そして同じ日に発表された毎日新聞の世論調査は何と10ポイント下落して41%となった。

 大幅な下落も衝撃的だったが、毎日の場合は不支持率が9ポイント増えて44%となり、支持と不支持が逆転したことも話題になった。

値上げラッシュだった7月

 22日はテレビ朝日をキー局とするANNの調査が発表され、10・9ポイント下落して49・2%。27日の読売新聞も12ポイント下落して57%。同紙の調査では過去最低を記録し、無党派層では支持と不支持が逆転した。

 なぜ急に高市政権に対する評価が変わったのだろうか。政治部デスクは「物価高対策に対する不満は、もちろん大きな影響を与えています。しかし、実はもう一つ別の原因も浮上しています。人によっては意外と受け止めるかもしれません」と言う。

 まず物価高を見ると、7月は食料品の値上げが相次いだ。もともと原材料費や人件費が高止りしていたところに原油価格の上昇が直撃。食品トレーやフィルムなどの価格も高騰し、スーパーなどの小売店では販売価格に転嫁せざるを得なくなった。

「消費税減税や現金給付が物価高対策として機能するかは議論があります。ただし、少なくとも今のところ、たとえ消費税減税が国会で可決されたとしても、実施は来年というスケジュールです。ならば現金給付を8月から始めるかと言えばそうでもなく、『高市首相は物価高対策を放置している』と不満に感じる国民が増える原因になっています。さらに支持率が大きく下がった別の理由として、改正皇室典範の成立を挙げる分析が相次いでいます」(同・政治部デスク)

改正に対する違和感

 改正皇室典範は7月17日に参議院本会議で可決・成立した。大手マスコミは特に「旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎え、その養子の下に生まれた男子が皇位継承資格を持つ」との改正点に注目し、問題点を含めて詳報した。だが国民の“素朴な実感”は違う点に注目していたという。

 先の読売新聞の世論調査を見てみると、《物価高に対する政府の対応を「評価しない」は71%》に上った。

 加えて、《皇室典範改正などの重要な法案や政策について、首相が国民に十分に説明していると思うかについては「思わない」が62%で、「思う」の29%を大きく上回った》のである。

 読売新聞の世論調査で高市政権の支持は57%。つまり高市支持者の中にも、皇室典範改正に対して不満を抱えている層が少なからず存在するということに他ならない。

「国会で皇室典範の改正が議論されていた時、国民から批判が殺到する、という状況ではありませんでした。これなら“無風”だと判断した国会議員は少なくなかったと思います。ところが改めて今になって振り返ると、きっと国民は国会審議を見ながら“モヤモヤ”とした気分だったのでしょう。そのため沈黙を保っていたけれど、違和感は徐々に広がっていったのです」(同・政治部デスク)

「男尊女卑では?」の声

 国民が「改正皇室典範に納得できない」と最終的に判断したのは「愛子さまのご子息は皇族ではないのに、皇室に養子に入った旧宮家の男子の息子は天皇になる可能性がある。これはおかしいのでは」と感じたからだ──との分析もある。

「国民の“素朴な実感”として、保守派の国会議員が『愛子天皇はダメ』と釘を指したように感じられたのでしょう。さらに『女性・女系天皇がダメというのは男尊女卑にならないの?』という素直な疑問も湧き上がったはずです。世論調査の結果を踏まえても、これが高市政権の支持率を低下させた大きな原因となったように思います」(同・政治部デスク)

 7月27日に行われた衆議院の予算委員会で、中道改革連合の階猛幹事長は高市首相に支持率が大幅に下落した原因について質問した。これに高市首相は「原因に関しては分からない」と答えた。

 この答弁に政治学者や経済評論家、選挙コンサルタントといった有識者から「失言だ」という指摘が相次いだ。

 高市首相は低下した原因の分析を放棄したと国民が受け止める可能性があり、「自分たちの声に耳を傾けようともしないのか」と、さらに不満を強くしても不思議はないという。

他に方法はなかった高市首相

「近年の通常国会で歴代首相が衆参予算委員会の集中審議に出席した時間を比較すると、高市首相は半分か半分以下であることをマスコミ各社は報じています。率直に言って、こうした分析から浮かび上がるのは、厳しい質問を嫌い、批判されても真摯に答えるという姿勢に欠けた首相の姿でしょう。失言との指摘が相次いだ『原因は分からない』という答弁にも、同じ姿勢が垣間見えると思います。ただし、高市首相は支持率が下落した原因が改正皇室典範にあると分かっているに違いありません。とはいえ国会で『改正皇室典範が原因です』と言えば大問題になりますから、『原因は分からない』と答える以外に方法はなかった、とも言えるのではないでしょうか」(同・デスク)

 支持率の減少は、高市政権の弱体化を意味する。どうやって首相は逆風に立ち向かうのだろうか。

 後編【「当分は支持率回復を見込めない…」 “高市一強”が一転して自民の“党内政局”激化か? 後ろ盾“麻生副総裁”との関係を左右する“財務省”“維新”との距離感】では、高市首相と麻生太郎・鈴木俊一両氏との意外な人間関係について詳しくお伝えする──。

デイリー新潮編集部