「今年は箱罠に全くクマがかからない…」 クマ被害が相次ぐ秋田県で囁かれる「明らかにクマが賢くなっている」 おびき寄せる“餌のスイカ”だけが消えることも
日本屈指のクマの出没件数になっているのが、ツキノワグマの被害が相次ぐ秋田県である。今年もクマの目撃情報や人身被害が相次いでいる状況にあり、地元メディア「秋田魁新報」では連日のようにクマに関するニュースが報じられている。
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さて、秋田県南部に位置する羽後町の町長・佐々木康寛氏によると、クマの出没件数が多くなってから、明らかに地域に異変が生じているのだという。それは、これまで見かけなかった野生動物の目撃報告が相次いでいることだ。
最大の異変は、クマが明らかに“賢くなっている”ことなのだという。具体的には、箱罠の構造をクマが学習しており、罠にかからなくなっているというのだ。こうなると、捕獲そのものが難しくなってしまう。

秋田県ではいったい何が起きているのだろうか。クマ対策に取り組む佐々木氏に、町内のクマ問題の現状について、引き続き話を聞いた。【取材・文=山内貴範】
これまで見かけなかった野生動物が急増
――秋田県ではクマの増加が急激に増えた印象を受けます。クマが暮らす山林などに、何か異変のようなものはみられますか。
佐々木:ここ5年くらいでクマだけでなく、イノシシなど今まで見かけることがなかった動物の目撃情報が増えているのが気がかりです。イノシシは羽後にはほとんど生息していなかったのです。ところが、真冬に山間部の道路沿いを走っている様子が、目撃されるようになりました。
イノシシが山の中で生息域を広げ、クマの食料になっていたものを食い荒らしているのではないか。そのせいで、クマが人里に下りてきているのではないかという指摘もあります。イノシシの被害もまた深刻です。昨年、収穫間近に田んぼが荒らされ、まったく収穫ができなかったという事例がありますから。
――それは重大な問題ですね。
佐々木:羽後町は農業が重要な産業であり、野生動物による農作物の被害は無視できません。対策が必要だと考えています。
子供たちの登下校をどうする
――子供たちの登下校も不安です。クマが多く出没する地域では、保護者が学校まで車で送迎する形に切り替えた例がみられます。
佐々木:昨年、羽後町でも出没件数が多かった地域では、10月25日から冬休みの前まで保護者の方に送迎を行ってもらいました。先が見えない、いつまで続くかという状況で、かなり保護者の方には負担をかけてしまったと思っています。
通勤と登校は同じ時間帯ですが、問題なのが下校の時間帯。小学校の低学年は学校が早く終わるので、会社などに勤めている保護者は迎えに行くのも大変だったと思います。町では、スクールバスへの補助などを、国会議員に向けて働きかけています。
――学校の周りにクマが出没する事態は、起きていないのでしょうか。
佐々木:羽後明成小学校の近くではクマが目撃されることが何度かあり、6月30日から7月6日まで保護者の方に送迎をお願いしていました。しかし、あまりに目撃が相次いでいるということで、7月13日まで延長することになりました。
6月1日からは、県の事業で警備会社が巡回し、学校付近で爆竹を鳴らすなどの対策も行っています。当初は1か月間の予定でしたが、10月9日まで延長して取り組むことになりました。
クマが賢くなっている
――町民からはクマ対策に関して、どんな要望が寄せられているのでしょうか。
佐々木:捕獲駆除を進めてもらいたいということで、箱罠の設置依頼が多くなっています。ただ、今年に入って、羽後町では捕獲駆除頭数がゼロなのです。クマの警戒心が強くなっているだけでなく、どうやら箱罠の構造を理解したクマが出現し始めているんですよ。
――それはどういうことですか。
佐々木:罠にかからないということです。クマをおびき寄せるために箱罠の奥に置いてあるスイカだけが食べられているんですよ。クマはスイカを手前に引き寄せ、食べて逃げてしまうのです。
――驚きです。クマはかなり賢いですね。
佐々木:猟友会の方からこの話を聞いたのですが、私も心底びっくりしました。おそらく、親グマが箱罠にかかったことを知った小グマは、構造を理解して、奥まで入らなくなっているのではないかと。これから先、クマの捕獲はかなり難しくなりそうです。人間とクマの知恵の出しあいになるのではないかと思っています。
観光への影響はほとんどないが……
――秋田県は、夏休みにかけて観光シーズンに突入し、「竿灯」「大曲の花火」などの伝統行事が多数開催されます。羽後町は8月に日本三大盆踊りに数えられる「西馬音内盆通り」が行われますが、クマ問題による観光面への影響はみられますか。
佐々木:今年の西馬音内盆踊りは8月16日から18日までの開催で、日、月、火曜と平日が多めです。そのため、西馬音内盆踊りの桟敷席(有料座席)の予約状況は、例年より若干少なめではありますが、極端に減少しているわけではないので、前年並みとみています。クマの影響はないといえるでしょう。
ただ、観光客のみなさんを安全に会場へと誘導しなければいけません。会場周辺には駐車場が少ないため、観光客のみなさんは少し離れた公共施設などに車を停めて、市街地へ徒歩で向かう形になります。
人通りの多いところなら過度な心配は不要ですが、薄暗くて人通りが少ない、緑の多い場所を通る場合は不安でしょう。クマが知らず知らずのうちに近寄ってきて、事件、事故に繋がったらたいへんです。クマ除けの音楽を流すなどの対策を検討しています。
ぜひ羽後町へお越しください
――何かとネガティブな話題ばかりが全国ニュースになってしまう秋田県ですが、魅力的な伝統芸能、そして優れた食文化の宝庫でもあります。最後に、羽後町の観光PRをお願いできればと思います。
佐々木:「道の駅うご」が2016年7月にオープンしてから、今年で10周年を迎えました。先日、10周年を祝うイベントが行われ、多くの方にお越しいただきました。
道の駅は名物の西馬音内そば、岩手県のジェラート屋さん「松ぼっくり」から伝授されたジェラートがウリになっています。館内では新鮮な野菜や加工食品なども提供していますし、県内でもトップクラスの人気を誇る、10年連続で右肩上がりの道の駅です。
スイカのシーズンが到来しています。羽後町は県内でも有数のスイカの宝庫。そして、秋にはおいしいあきたこまちが収穫されるコメどころでもあります。ぜひ、多くの皆さんに羽後町へお越しいただけると嬉しいです。
第1回【「山林から離れた地域でも目撃情報が」…秋田県羽後町長が明かす「クマ被害」激増の背景「LINEや防災メールで出没状況を伝えています」】では、クマが多く出没する秋田県羽後町の佐々木康寛町長に、最新のクマの状況や、対策について、具体的に話を伺いました。
ライター・山内貴範
デイリー新潮編集部
