【木田 トウセイ】篠田麻里子と伊藤健太郎を蘇らせた「オワコン」と揶揄される「不倫ドラマ」が減らないウラ事情

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TVer見逃し配信が3200万回超え…ドラマ界を占拠し続ける“不倫ドラマ”

近年のテレビドラマにおけるトレンドといえば、“不倫もの”と言って間違いないだろう。

特に2020年代以降は、テレビ東京の『ドラマプレミア23』や日本テレビの『ドラマDEEP』、MBS・TBSの『ドラマ特区』を中心とした深夜ドラマ帯で、不倫をテーマにした作品が毎クールのように放送されている。

きっかけになったのは、2014年にフジテレビで放送された『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』。不倫を禁断の恋愛ではなく、ピュアなラブストーリーテイストで描いたことで30〜40代の女性視聴者からの共感を獲得し、最終話では16.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク。同年の新語・流行語大賞にノミネートされるほどの社会現象に。それ以降も『あなたのことはそれほど』(TBS系、2017年)、『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、2023年)などがヒットした。

その中でも最大級の盛り上がりを見せたドラマは、演技派女優・松本まりか主演の『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系、2024年)だろう。同作は『TVer』の見逃し配信再生数が驚異の3200万回を突破。また、『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系、2024年)や日本テレビ系『ドラマDEEP』枠のドラマも軒並み数千万回規模の再生数を記録し、不倫ドラマが業界内で確固たる地位を築くようになった。

その流れは、7月からの夏クールドラマでも止まっていない。

何度復讐を果たしても過去に巻き戻ってしまう妻役を内田理央が演じる『夫を殺したはずなのに』(テレビ東京系、月曜午後11時6分〜)、森迫永依と前田公輝が共演する『もう1度夫婦になりますか?〜カモフラージュ夫婦〜』(日本テレビ系、月曜深夜0時24分〜)、早見あかりと伊藤健太郎がダブル主演をする『一緒にごはんをたべるだけ』(テレビ東京系、木曜深夜0時〜)、北乃きいが主演を務める『未婚詐欺 私の知らない彼の顔』(MBS、木曜深夜0時59分〜)など、不倫が絡む作品がズラリと並んでいる。

オワコンと揶揄されるのに量産されるワケ

ミステリーやラブコメのように、ドラマ界にすっかり定着したジャンルになった不倫ものだが、視聴者からの反応は良いものばかりではない。

不倫ドラマばかりが並ぶ現状に対してドラマファンから「また不倫ものか……」「サレ妻の復讐劇、何回目だよ」「オワコン。視聴者を舐めすぎ」などと揶揄される声が聞こえてきている。また、最近は高視聴率をマークする作品も少ない。

それなのになぜ、テレビ局側は不倫ドラマを量産し続けるのだろうか? プロデューサーや業界関係者、ドラマライター、脚本家たちからその裏事情について聞いてみた。

世間から『また不倫モノか』とSNSで揶揄されていることは百も承知です。でも、配信の数字が取れてしまうんですよ

民放キー局で連続ドラマのプロデュースを手掛けるA氏は自嘲気味にそう語る。

「テレビ離れが叫ばれ、世帯視聴率が1ケタ台になることが当たり前になった今、テレビ局にとって見逃し配信の再生回数は、番組の成否を測る重要なバロメーター。その配信において、不倫ドラマはいまだに驚異的な強さを発揮しています。

不倫ドラマは、男女のドロドロとした感情を覗き見したいという視聴者の欲求を刺激する。現実で不倫をすれば社会的に糾弾されてしまいますが、フィクションであれば画面越しからスリルを味わうことができる。この“怖いもの見たさ”感覚が、配信再生数に直結しているのです」

「出演者のギャラがかなり安め」…金がないテレビ局の事情

不倫ドラマは安く作れることも理由でしょうね

ドラマ制作会社でアシスタントプロデューサーとして働くB氏からはこういった意見も飛び出した。

「はっきり言って、今のテレビ局にはお金がありません。昨今の深夜ドラマの制作費は1話あたり500万円ほどに抑えられているケースも珍しくない。そんな状況でドラマを作ろうとしたときに、最も低コストで数字も計算できるのが不倫ドラマなんですよ。

基本的に家のセットやホテル、カフェ、路上といった限られた空間での会話劇が中心なので、刑事ドラマのように多数のロケ地やエキストラも必要ないですし、医療ドラマにある専門的なセットや監修費用もいらないですから。予算面で不倫ドラマが多くなってしまっているのは事実でしょう」

さらにB氏は制作側の見解を続ける。

「出演者のギャランティでも、不倫ドラマはコスパが良いんです。プライム帯の主演級俳優を深夜ドラマにキャスティングすることは、予算的にほぼ不可能。

でも、不倫ドラマであれば経験の浅い若手俳優、実力派だが近年露出の少ない中堅俳優を起用しても、設定やストーリー展開の面白さだけで十分に視聴者を惹きつけることができる。むしろ人気俳優を起用すると数字が伸びないとすら言われていますから」

制作側からすると、不倫ドラマは低コストで数字が取れるため、深夜ドラマに欠かせないジャンルになっているようだ。

不祥事俳優の再ブレイクの場所に

さらにB氏は「喜んでいるのは制作側だけではない」と続ける。

「過去に不祥事などで表舞台から遠ざかっていた俳優にとって、不倫ドラマの悪役は強烈なインパクトを残して復帰をできる絶好のチャンスの場になっているんです。

1月クールの『略奪奪婚』(テレビ東京系)に出演していた伊藤健太郎さんは、周囲を翻弄する不倫夫役を見事に演じ切っていましたし、元AKB48・篠田麻里子さんも『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』で怪演を見せていた。お二人ともヘイトを集めるほどの振り切った演技で、確かな演技力を証明し、再ブレイクのきっかけを掴みましたよね。

視聴者は過去のスキャンダルと役柄を重ね合わせながら、ある種のリアリティを持ってドラマを楽しんでいる部分もあるのでしょうが、ちゃんとイメージの払拭にも成功している。今や伊藤さんも篠田さんもいろんな作品に引っ張りだこですから」

また、他業種から俳優に転身したタレントの活躍も光っている。B氏は語る。

「TBSでアナウンサーをしていた宇垣美里さんがその代表格でしょう。『あなたは私におとされたい』(2023年、MBS)、『シンデレラ・コンプレックス』(2024年、MBS)、そして夏クールで放送される『おちたらおわり』(日本テレビ系、水曜深夜0時24分〜)は、いずれも不倫絡みのドラマ。

彼女のキャリアを考えれば、いきなりメインキャストは難しい。しかし、低予算の深夜ドラマだからこそ出番の多い役どころで抜擢されているワケです。

事務所側も不倫ドラマに出演させることへの抵抗感が10年前と比べると格段に下がっており、他業種出身タレントや若手俳優を積極的に売り込んでくるし、局側も喜んで起用しているんです」

再起を誓う有名俳優や他業種タレントの増加も不倫ドラマの乱発と深い関係があるようだ。

後編記事『不倫ドラマは「オワコン」じゃなかった…スマホ視聴で「背徳感」主婦からの熱烈需要』ではひきつづき、不倫コンテンツ量産の裏側に迫る。

【つづきを読む】不倫ドラマは「オワコン」じゃなかった…スマホ視聴で「背徳感」主婦からの熱烈需要