「フォーマットが10年変わっていないことに疑問を抱いた」国山ハセン氏が明かしたTBSの局アナを辞めた理由

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アナウンサーの「退社ラッシュ」が収まらない。華やかな世界の裏側では、思わず気の毒になってしまうほどの艱難辛苦が待ち受けているのだ。

国山ハセンが局を辞めた「意外な理由」

「20代後半のとき、メインキャスターに抜擢された情報番組『グッとラック!』が短命に終わりました。番組終了後に仕事のない時期があったことで『会社の判断で、自分の人生が左右されるんだな』と強く感じたのです。

その後に『news23』のキャスターを務めたのですが、進行表のフォーマットが10年前からほとんど変わっていなかったことにも疑問を抱きました。アップデートされた環境になるまで会社でただ待つより、自分で作り上げるほうがいいと感じました。それがTBSを辞めた理由のひとつです」

そう振り返るのは、映像メディア「PIVOT」でコンテンツプロデューサーを務め、その後米国で起業した国山ハセンさん(35歳)だ。

TBSアナウンサーとして『グッとラック!』をはじめ『アッコにおまかせ!』に出演するなど第一線で活躍していたが、'22年に退職。エースアナだった国山さんの決断は、業界内外で話題となった。

かつてはテレビ業界の「花形」と言われたアナウンサーだが、いまや時代は変わった。局アナの退職報道は日常茶飯事だ。この1年を見てみても、TBSの良原安美アナ(30歳、1月退社)、NHKの和久田麻由子アナ(37歳、3月退社)、日テレの岩田絵里奈アナ(30歳、3月退社)など、「看板」や「ホープ」と呼ばれた面々が局を離れている。

特にフジテレビは「退職ラッシュ」が起きており、永島優美アナ(34歳)や椿原慶子アナ(40歳)、藤本万梨乃アナ(30歳)などが昨年をもってお台場を去った。ほかにも小澤陽子アナ(34歳)や勝野健アナ(26歳)、竹内友佳アナ(38歳)が退職する意向を示している。

短期間のうちに、これほど多くの局アナが退職することは異例の事態と言っていい。

アナウンサーの世界で何が起きているのか。元エースアナたちや、現役のテレビ局員にありのままの現実を聞いた。

「若手の仕事」がベテランのアナに…

ここ数年で局アナが会社を離れるようになった要因は、大きく3つある。

在京キー局の現役アナは、一つ目の要因について、匿名を条件にこう明かす。

「想像していたよりも給料が低いからです。特にフジに関しては、他局に比べて圧倒的に低いと言われています。同じ30歳の局アナで、残業代を考慮せずに比較した場合、テレ朝とフジとでは200万円近く年収に差があるのではないでしょうか。昨年初めに『中居騒動』が起きてからはボーナスも激減したそうです。

また、近年の働き方改革も影響しています。アナウンサー職は裁量労働制ではないため、かつては働けば働くほど残業代がついた。しかし10年ほど前から厳格に労働時間が管理されるようになり、働きたくても働けないようになってしまったのです」

そうなると、営業職の局員などと年収に差は生まれない。失言ひとつで炎上し、タレントと同じようにプライベートにも気を遣わないといけないにもかかわらず、待遇面で他の局員と同じというのはモチベーションが上がらないのだ。

そして、二つ目の要因は「業務の多さ」だ。かねてから人気アナは負担が大きかったが、近年の退職ラッシュがその状況にさらに拍車をかけている。とりわけ「深夜のニュース読み」がキツいという。

「どの局にも、その日のまとまったニュースを夜に10分ほど放送する枠があります。この業務は基本的にシフト制で、本来は若手がやるのですが『やりたくない』と断る人が増えてきました。その上、30代前後の中堅アナが退職しているとなると、40代のベテランがやらざるを得ません。

この『ニュース読み』の日は、たった10分の原稿を読むために、ニュース速報などに備えて当直として8時間近く待機しなければいけません。仕事を終えて家に帰ったら深夜2時過ぎです。家庭やプライベートを犠牲にせざるを得ませんし、なによりベテランになればなるほど身体にこたえてきます」(前出の現役アナ)

こうした業務を局アナが任される一方で、ニュース番組のMCや情報バラエティのリポーターをフリーアナが務めるというケースも増えている。こうした現状に不満を抱える局アナも多いという。前出の国山さんはこう憤る。

「いまは『アナウンサー』という肩書きが誰でも使えるようになっています。タレント事務所に所属しているとはいえ、まだ大学生なのに『フリーアナウンサー』と名乗り、テレビに出ている人もいる。果たしてアナウンサーとは何なのか。

局アナは厳しい採用試験を突破して、原稿読みなどの訓練を受けている自負があります。一方で、テレビ局は何者でもない人に『アナウンサー』の仕事を任せてしまう。こうした構造は、局アナのやりがい低下につながると思います」

売り出し中のタレントを「フリーアナ」として起用することで、テレビ局は所属事務所にも恩が売れる上に、話題性で視聴率を稼げる。「局アナを育てる」という中長期的な視点はない。

40代になったらアナウンス部から異動

そして三つ目の要因とされているのが「キャリアの不安定さ」だ。局アナには、報道やスポーツ、バラエティなどそれぞれに志望ジャンルがある。

たとえば報道志望の場合、目指すべきキャリアは自然と固まってくる。若手のうちは現場リポーターや短尺のニュース番組キャスターで研鑽を積む。それからは情報バラエティ番組などで進行やアシスタントとして実力をつけ、評価されれば『Nスタ』や『ひるおび』といった帯番組のメインキャスターに抜擢される。

そして『ニュースウオッチ9』の和久田アナ、『情報7daysニュースキャスター』の安住紳一郎アナのように、看板番組を任されるようになれば、「局の顔」と言える。

だが、局アナの世界は実力だけで評価が決まるわけではないという。前出の現役アナはこう声をひそめる。

「正直、有力な番組プロデューサーに気に入られるかどうかです。誰を番組に起用するか決めるのは彼らですから。だから、局アナの間でも足の引っ張り合いは多い。

冗談のような話ですが、バレンタインデーで駆け引きする女子アナもいます。『バレンタインのチョコは制作陣にあげないでいいよね』とライバルに言っておいて、自分だけコッソリわたして好感度を上げる。そんなアナを見たことがあります」

ただ、有名番組に起用されたからといって順風満帆なキャリアを送れるわけではない。

「報道や情報バラエティにとって、アナウンサーは『顔』です。視聴率が悪かった場合、いちばん責任を負わされやすい。若いうちに帯のメインキャスターになったとしても、視聴率が取れず番組が終われば当分使われません。そして、局からしても帯番組まで務めたアナに、今さらニュース読みをさせるわけにもいきません。

こうして燻っているうちに、40代になり、アナウンス部から異動になる。ただ、顔や名前の売れた人間が営業や制作をすることは現実的に難しい。なので、たいてい新人研修や人材育成の部署に移動します。こうした現状を鑑みたら、先行きが不安になるのも当然でしょう」(同前)

【後編を読む】中川安奈さん「キャスター就任から丸3年で番組の降板を告げられ…」人気の元アナウンサーたちが明かした「私が退社した理由」

「週刊現代」2026年6月8日号より

【つづきを読む】中川安奈さん「キャスター就任から丸3年で番組の降板を告げられ…」人気の元アナウンサーたちが明かした「私が退社した理由」