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保護命令を受けていたにもかかわらず、元妻に連絡を取ったとして、DV防止法違反の罪に問われた30代男性に対し、大阪地裁は3月10日、拘禁刑6カ月(求刑同じ)、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

離婚した元妻に緊急時を除いて連続した連絡を禁じる保護命令が出されていた。しかし、そのわずか3日後に命令に違反する連絡をしたとして起訴されていた。

警察庁によると、DVの相談件数は増加傾向にあり、最新のデータでは全国で9万件を超えている。また、DVに関連する暴行や殺人などの刑法犯・特別法犯の検挙数も、ここ10年は高い水準で推移している。

一方で、今回のような保護命令違反で刑事裁判に至るケースは、ピーク時の半数程度にとどまる。法廷では、被告人と被害者の「主張」が大きく食い違い、DV問題における法的介入の難しさを感じさせる内容となった。(裁判ライター・普通)

●「お前を殺すことだけ考えることにするわ、マジ殺す」

被告人は身柄拘束された状態で出廷したが、清潔感があり、法廷ではきはきと受け答えしていた。

もっとも、起訴事実そのものは認めており、検察官が請求した証拠についても、すべて取り調べに同意している。ただ、事件に至った経緯については、被害者とは異なる見方を示した。

被害者が捜査機関に供述したところによると、2人は交際約半年で結婚したが、被告人は嫉妬深く、暴言や、髪をつかんで振り回す、平手打ちなどの暴行が繰り返されていたという。

結婚から約半年後、被告人から「お前を殺すことだけ考えることにするわ、マジ殺す」との連絡が届いたことで別居。被害者は脅迫罪で刑事告訴し、被告人は逮捕・勾留された。

その勾留中、DV防止法に基づく保護命令が出された。

さらに3日後、被告人が離婚に合意し、賠償金の支払いと被害者に接触しないことを誓約する内容で示談が成立。脅迫罪に関しては不起訴となった。

しかし、釈放された当日の夜、被告人はLINEや電話など計4回、被害者に連絡したとして、再び逮捕された。

●「好きな気持ちをうまく伝えられず」

一方、被告人は捜査機関に対して、被害者の説明とは異なる供述をしている。

結婚後に口論が多かったことは認めつつも、「自分は思いやりのある性格であるが、被害者は人の意を汲むことができない」と説明。

暴力とされる行為については「手を振りほどいたり、被害者が爪を立てたのを振りほどく程度」と主張。暴言についても「好きな気持ちをうまく伝えられず」と述べた。

●離婚後、行き場を失った被告人

弁護人による被告人質問では、事件当時の心境が問われた。

脅迫とされた「マジで殺す」とのメッセージについて、被告人は「振り向いてほしかっただけ」「連絡が途切れ、イライラしていた」と説明。殺人や暴行の意図は否定しつつ「自己中心的だった」と謝罪した。

離婚成立後、保護命令が出され、その重大性は認識していたという。しかし、釈放後に行き場がなく、元上司に連絡したところ飲酒することになった。

弁護人:その後、被害者に連絡しようとしたのは?
被告人:酒が入っていたこともあり、行くところがなく病んでたこともあり、今後頑張るためにと…。

弁護人:保護命令に違反しているとは?
被告人:頭ではわかっていましたが、踏ん切りがつかず。

弁護人:踏ん切りのために、被害者に何をしてほしいと?
被告人:短い通話でも謝りたかったのと、これから頑張っていくと伝えたくて。

送信したメッセージも「最後に話をさせてほしい」といった内容だったと主張した。

だが、被害者にとっては、被告人の意図など知りようがない。弁護人も「釈放日に電話などが来たら被害者はどう思うか」と問い、二度と接触しないよう強く念を押した。

被告人は今後、知人を頼って関西以外で仕事を探すと話した。

●検察官「被害者が家出をした原因は?」

検察官は、被告人のDVに対する認識を問いただした。

被害者が暴言や暴行を受けたと主張する点について、被告人は「つかんでくるのは被害者のほう」「あっちが暴言を言って、こちらの言うことを聞かないので」と反論した。

検察官:被害者はなぜ離婚したいと言ってたと思う?
被告人:思い描いた結婚生活じゃなかったんだと思います。「私の言うことを聞いてくれる人でないと」と言ってたので。

検察官:被害者が家出をした原因は?
被告人:私が浮気を疑ったので。

検察官:それだけで出て行った?
被告人:つかみ合いになった勢いで、防犯ブザーが押されて人が来たのでそれで…。

検察官:当時、そのことをどう思ってたの?
被告人:よく自分を棚に上げてそんなこと言えるなと。

●弁護人「DVって言葉は聞いたことありますか?」

被害者の尋問は予定されておらず、双方の主張の真実は法廷で直接検証されることはなかった。

もっとも、裁判所で問われるのは、保護命令に反して接触した事実と、再犯のおそれである。弁護人は最後に被告人の認識を確認した。

弁護人:あなたは自分で嫉妬深いと思いますか?
被告人:疑うと嫉妬深いのと、嘘が嫌い。

弁護人:嘘をつく被害者が悪くて、自分は正しいと思っていますか?
被告人:嘘をつくなら理由をちゃんと言ってほしい。

弁護人:DVって言葉は聞いたことありますか?
被告人:はい。

弁護人:自分がそれに当てはまると考えたことは?
被告人:あまり…。

●ペットの骨壺を開けて「今から捨てる」

その後、被害者の意見陳述が検察官によって代読された。

被害者は、結婚生活を通して、強い支配や人格否定などを受け、常に精神的苦痛を感じていたという。暴行によって、鼓膜を損傷したこともあった。

「暴力を奮うのはお前のせい」と言われ、自分が悪いのではないかと感じることもあったという。

離婚の意思を示した際には、「離婚するなら殺す」「死ね」と首を絞められながら罵られたと主張した。

また、位置情報の共有を強要され、携帯電話を無断で見られるなどの行為もあったという。

パソコンや携帯電話を衝動的に捨てられたり、壊されたりしたこともあり、被害者が大切にしていたペットの骨壺を開けて「今から捨てる」と言われたこともあったと述べた。

被害者は被告人については「すぐ人のせいにする」「外面はいいが、身近には支配的」と指摘。

これまで約束を破り続けており、今回も反省しているとは思えないとして、「重大なことをしたと理解するために実刑を希望する」とうったえた。

●裁判所「犯行は誠に身勝手で被害者の精神的苦痛は大きい」

判決は拘禁刑6カ月(求刑同じ)、執行猶予3年。

裁判所は「犯行は誠に身勝手で被害者の精神的苦痛は大きい」と非難した。

一方で、前科がなく反省の態度を示していることや、今後被害者に接触しないと誓約していることなどを考慮し、執行猶予を付したと説明した。