「穂川果音さん」が抱いた「美人すぎる気象予報士」という形容詞への違和感…気象予報士のイメージを刷新した「理想の人物」とは
いまではウェブで動画やテレビ番組を見ることは普通の行為になっているが、その黎明期から携わっているのが、「美人過ぎる気象予報士」などと表現されることも多い穂川果音さん。彼女は2016年4月に放送を開始した報道番組「ABEMA Prime」(以下「アベプラ」)のお天気コーナーを担当したが、ウェブメディアの変遷についても詳しく分析をすることができる。本人に詳しく話を伺った。【取材・文=中川淳一郎】(全3回のうち第2回)
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尖りまくったニュース番組
2016年4月のアベプラ立ち上げから10年間にわたって出演し続けた穂川さんは、アベプラの過去と現在、そして未来の目標を理解しているのではないか。そんな期待を胸に、彼女の話に耳を傾けた(以下「」内同)。

「当初こそ、“アベプラとかいう謎の番組が始まった”的に扱われていましたが、メインMCには知名度のある方を据え、その知名度と盛り上げ力を利用しながら成長していくスタイルは初期の頃に確立していました。一方で放送内容は、地上波では使えないようなニッチな内容が多かったですね。コンセプトは“オトナの事情をスルーしまくる、尖りまくったニュース番組”でした。
新しいサービスや文化も積極的に番組で取り上げ、たとえば、2016年9月には、当時スタートしたばかりのUber EatsをMCがスタジオから頼んだことも。アプリ画面を表示して宅配スタッフが近付いてくる様を見せ、実際にスタジオまでデリバリーしてもらっていました」
制作陣は「今、コレが熱いですよ!」といったことを企画にし、地上波ではあまり取り上げないようなテーマも放送した。
「企画は本当に面白いのですが、何しろ局と番組の知名度が低かったので、有名なコメンテーターの方に番組を盛り上げていただき、私はコスプレで花を添える、と(笑)。そんな時代を経て、今は有名人の方から“アベプラに出たい”と逆オファーが殺到する謎の状態になっています。ただ、気持ちは分かるんです。中学、高校時代にアベプラを観ていて、自分もいつかは出てみたいというZ世代や20代の有名人は多い。たとえば、32歳になったら都知事選に出馬すると表明している実業家の岸谷蘭丸さんは、自ら“出たい!”とオファーしてコメンテーターを始めたら、約1年で番組MCになりました」
私が発信すべき情報を発信していきたい
さて、穂川さんは4月以降、レギュラー番組の出演予定は特に決まっていないという。だが、今後のプランは考えている。「まだまだ未熟だし、人の意見を聞いて、要望を聞きながら仕事するのが、30代でした」と語る穂川さん。しかし、今後の10年間は「自分が何を発信すべきかを自分で決めるべき」と考えているそうだ。つまり、ある程度ニーズがあると判断できる情報の中で、自分が選別した情報を発信したいのだという。
そこで使えるのが、写真メインのSNS「インスタグラム」。彼女は現在、約16万人のフォロワーを抱えており、この10年間で一緒に育てたインスタグラムを使って「私が発信すべき情報を発信していきたい」と語る。
「美し過ぎる」への違和感
穂川さんのインスタ投稿をめぐっては、いわゆる「コタツ記事」で取り上げられることが多い。要するに「美人過ぎる気象予報士がインスタでセクシーショットを披露し、絶賛の声」的な、SNSを読んだライターが手軽に書いて、それなりのアクセスを稼ぐ記事のことである。
「2日に1回は書いてくれるメディアもあります。でも、“皆さん、大丈夫?”って思うこともあるんですよ。“美し過ぎる”という表現は、ルッキズムが否定される今の時代には合っていません。私のことをそう言ってくれることは嬉しいですよ。なにせ、価値観は人それぞれだから。でも、“美人過ぎはしないが……”や“そこまで美人か?”なんてYahoo!ニュースのコメント欄に書かれると“ごめんなさい”って気持ちになります。ただ、美しいって言われるのは嬉しいことです。だからこそ、これからもフォロワーやメディアの皆さんからそう言われる存在ではいたいです」
現在、本拠としているアベプラでは「美人過ぎる気象予報士」や「Iカップ気象予報士」とは謳っていない。だが、外部のウェブメディアはそのような表現をしているわけで、コンプラ意識の高まりをこれまで見てきた穂川さんはこう語る。
「私自身、“美し過ぎる”と思うことはありませんが、美しい人でいたいとは思っています。そこで、ウェブメディアの皆さんに提案したいのが、“美し過ぎる”という表現ではなく、別の新しい評価を開発してみてはいかがですか? ということです。そうしたらそのメディアの評価が上がるのかな、とも思っています。なにせ、とんでもない誹謗中傷を除き、自由に書けるYahoo!のコメント欄にしても“美し過ぎない”といったコメントに対し“失礼だ”“彼女は頑張っているのにそんなことを言うな”とたしなめる意見をけっこう見ます。そういう意味で、ウェブメディア側のコンプラ意識の高まりに加え、読者側の意識も変化していると実感します」
理想は石原良純
では、ご本人は今後、どんな“肩書”で紹介されたいのだろうか。
「私は誰かの役に立つ人でありたいと思っています。美しいことは自己満足に繋がるので、否定はしません。だからこそ、美しくいるための情報を、気象に関連して発信するのは使命の一つになるかもしれませんね。紫外線が強い時、雨の日、乾燥した日――。天気と美容は密接につながっているので、インスタも含めて“美と天気”といった情報を発信すれば、美容系のコラボも生まれてくるかもしれません」
ただ、気象予報士という職業は若干ステレオタイプな面もあった。いわゆる「お天気お姉さん」とは異なる、ニュース番組に登場する気象予報士は、かつては男性が多く、そして男性であることを信頼感に繋げていたように思われる。穂川さんもかつて「お前みたいな若い女の話は説得力ないから、肩書は気象予報士ではなく“お天気お姉さん”の方がいいのでは」と言われたことがあったという。この時は「かわいい気象予報士が、天気を解説するのはダメなの……?」とショックを受けたそうだ。
所詮、ルックスの良い女性は渡された原稿を読む「お天気お姉さん」であるべき、という空気感を2009年頃は感じていたというのだ。ただ、NHKですらマッチョの気象予報士が出演するなど、時代は大きく変わった。従来型の真面目一徹な男性ベテラン気象予報士像に変化をもたらした立役者の一人は、石原良純氏だったという。穂川さんは「私は“女版石原良純”になりたい」と公言するようになった。
「石原さんは、いじられる気象予報士の原点です。“お前の予報、はずれたぞ!”とか、視聴者にコテンパンに言われた。それが世間的にOKな空気になってから、他の気象予報士もいじられる流れになりました。いじられて、愛される予報士ということで、石原さんみたいになりたい、と思ったんです」
どうやってこの5分の尺を盛り上げるか
穂川さんのアベプラでの天気予報は、普通の天気予報から比較すると「ヘンテコ」である。何しろ、雑談や出演者とのやり取りが続き、最後に自分で描いた全国の天気予報のフリップを出すという流れなのだ。ある意味で、天気予報が「おまけ」のようになっている。アドリブも多く、天気予報というよりは、「穂川さんが出演者からいじられるドタバタトークショー」のようになりがちだった。
「というのも、基本的に台本が『以下、穂川さんフリートーク』『以下、天気』と、すごくシンプルなんですよ。どうやってこの5分の尺を盛り上げるかを自分で考えなくてはいけませんでした。そこには自虐性を加える必要もあったんです。『はーい、天気だよ、みんな楽しんでね』みたいに、自分だけがハイテンションで出オチしやすくなるコーナーだと思っていたんです。
そもそも、お天気コーナーのポジションが、番組の空気をガラッと変えるという立ち位置でした。報道番組なので悲惨なニュースや、暗い話題も取り扱うわけです。重い空気がスタジオに漂うなか、私がノー天気な感じで登場して、その場の空気を変えるということを考えました。せめてお天気コーナーは人を傷つけないコーナー、重いテーマを扱った後でも番組の最後でホッとできるコーナーにしたかったんです」
オウム真理教の「尊師」である麻原彰晃の三女・アーチャリーこと松本麗華さんがゲストで来た時があった。麻原の娘として生きるとはどういうことか? などを麗華さんから聞く内容だったが、お天気コーナーの前にかなり重苦しい空気が漂った。戸塚ヨットスクールの戸塚宏氏が出演した後も出演者は疲労困憊する状態に……。そのような空気を読んで、穂川さんはCMを挟んだ後のお天気コーナーで呑気な空気に戻そうとしていた。
穂川さんの決めポーズ兼決めゼリフは、顎に両拳を乗せて「きゅるん」とカメラに向かうことだが、出演者も半強制的に同じポーズをするのが通例だった。多くの出演者が恥じらいながらこのぶりっこポーズを決め、穂川さんは政治家にも「きゅるん」を要求したことがある。それは、2024年の自民党総裁選である。
この総裁選には、9人もの候補者が出馬し、全員がアベプラに登場。さすがに「空気を読め!」と言われそうな状況だが、穂川さんは「総理大臣になる皆さん、“きゅるん”をやりましょうねー!」と候補者に言った。この時、現総理大臣の高市早苗氏はやってくれたが、総理になる石破茂氏はやってくれなかった。これについて「石破さんがやってくれなかったのが残念」と穂川さんは語った。
第3回【アベプラに10年間出演、気象予報士「ほかのん」が明かす「とりわけ感謝したい人」】では、同番組に10年間出演してきた中で、穂川さんが体験した様々な出来事や、共演者とのエピソードについて伺いました。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
