あさくま&ブロンコ躍進…なぜ「愛知発祥のステーキ店」ばかり全国区の人気チェーンに成長を遂げたのか

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愛知県名古屋市に本社を構えるステーキチェーン「あさくま」の業績が好調だ。2019年の上場後、新型コロナウイルスの影響などもあって、売上高は一時50億円台まで落ち込むなど苦境に見舞われていたが、ここへきて“起死回生の事業再生策”で、28年ぶりに売上高100億円を突破。V字回復を達成したのである。

「ステーキチェーン」と聞いて、どこを思い浮かべるだろうか。「いきなり!ステーキ」、「さわやか」、「ステーキ宮」、「フォルクス」……。実に多種多彩なチェーンがあるが、こと“愛知県民”および東海圏の人間にとって、ステーキチェーンと言えばやはり「あさくま」と「ブロンコビリー」の2強だろう。

現在、この2つの愛知発祥のステーキチェーンが、こぞって好業績を背景に店舗網を急拡大、全国区の大人気チェーンへと変貌を遂げつつある。美味しさだけでは説明できない“強さ”の理由について、今回は「あさくま」をメインに迫っていく。

「日本4大外食チェーン」に数えられた時代も

「あさくま」のルーツは、1948年(昭和23年)に愛知県で設立された旅館「合資会社割烹旅館朝熊西店」に遡る。その後、1962年に旅館の一角で、「あさくま」創業者の近藤誠司氏がステーキレストランとして「ドライバーズコーナーキッチンあさくま」をオープンしたのが始まりだ。

「お値打ち商品を感じの良いサービスで、楽しく快適な空間を楽しんでいただく」という理念の元、同店は人気を集めていく。これが、やがて愛知県名古屋市内およびその近郊を中心に、ロードサイドに店を構え、駐車場を完備した「ステーキのあさくま」というブランドへとつながっていく。

日本における郊外のロードサイド型レストランの先駆けとなった「あさくま」は、フランチャイズ展開、コックレス店舗の導入、レトルト商品の販売など業容を拡大。さらに日本初となる「セントラル・キッチン」を開設し、外食産業が一気に発達した1970年代後半には、「すかいらーく」「ロイヤルホスト」「デニーズ」と並んで“日本4大外食チェーン”に数えられる時期もあったという。

だが、そんな栄華も長くは続かなかった。1990年代後半に入ると不採算店舗が増加し、ピーク期には180あった店舗数も30にまで縮小。財務内容も最悪な状況に陥ってしまう。

そんな「あさくま」にとって転換期となったのが2006年、株式会社テンポスバスターズ(後に持株会社テンポスホールディングスの中核企業)と資本・業務提携を締結したタイミングだ(2011年4月にはテンポスバスターズの株式保有比率が52.57%に達し、正式に同社グループの子会社となった)。

テンポスは単なる中古厨房販売から、飲食店経営支援ができる企業への転換を図ろうとしていた時に、飲食店のノウハウを学ぶのを目的で「あさくま」を買収。それが結果的に同社の意識改革を進め、再生へとつながることになったわけだ。

「あさくま」と「ブロンコ」

現在(2026年2月末時点)、「あさくま」グループ全体の店舗数は74店舗。愛知県が28店舗、静岡県が13店舗と、この2県で全体の半数を占めている。うち、主業態である「あさくま」66店舗のほか、「カレーのあさくま」や「厳選もつ酒場エビス参」といった業態を運営中だ。

店舗数こそ最盛期の頃と比べれば少ないが、言い換えれば“筋肉質な経営”ができているとも言える。では、なぜここまで復活することができたのか。

同社の経営理念は「食を通じて、社会に貢献していく」ことであり、その理念に基づき、「お客様にびっくりしてもらう」ことを共通の価値観や行動様式に落とし込み、企業文化を形成。ベクトルを合わせている。

「あさくま」は家族や仲間たちと楽しめる“本格ステーキ&ハンバーグレストラン”として、長年存在感を発揮してきた。厳選したお肉とサラダバーをセットで提供しているわけだが、これは、けっして単なる「美味しい」ではなく、「健康的で美味しい」食事の提案を意味するものだ。新鮮な野菜を取り揃えたサラダを筆頭に、コーンスープ・ライス・カレー・デザートと、充実した内容のサラダバーは、まさにその象徴と言っていいだろう。

ここで「あさくま」との比較として、同じく愛知県発祥のステーキチェーンである「ブロンコビリー」にも言及しておきたい。おそらく全国での知名度では、こちらに軍配が上がるのではないだろうか。

同チェーンは、1978年に愛知県名古屋市で創業したステーキハウス「ブロンコ」から始まっている。今年で創業48年目と、歴史あるチェーンも少なくない外食業界にとっては後発組ではあるが、その業績は目を見張るものがある。売上高302億円、営業利益29億円、店舗数は150店舗(2025年12月末時点)――「あさくま」とは単純比較で、大きく差をつけている現況だ。

経営面に改善の余地はあるが…

もう少し「あさくま」の業績を詳しく見ていこう。

2026年1月期決算によれば、売上高は100億4588万円と、前年比で20.3%も増加している。ただ、より突出しているのは営業利益。前年比188.9%増の5億1909万円を叩き出しており、約2倍もの伸長度を見せている。それほど「あさくま」の儲ける力は強靭なものになりつつある、というわけだ。

一方で改善点が無いわけではない。営業利益“率”で見ると5.2%となっており、業界内の理想値と言われる10%には程遠い(ライバルである「ブロンコビリー」は9.7%)。とはいえ自己資本比率については68.6%あるので、財務基盤は盤石と言えるだろう。

さて、2026年(通期)第4四半期において、既存店売上高の前年比が3ヵ月連続で20%を上回っていることにも注目したい。その勢いそのままに、今期(2027年1月期)に入っても、スタート月である2月も20%を超えるなど、活動成果が如実に実績に表れているようだ。

主業態である「ステーキのあさくま」に絞っても、既存店売上高は39ヵ月連続で前年超えを達成。値上げによる既存店の客数減少を、客単価上昇でカバーしきれず、新規出店で売上高をなんとか維持する外食チェーンも多い中、この推移は実に堅実なものだろう。

あくまで希望的観測にはなるが、今後もこの勢いを維持することができるなら、の「ブロンコビリー」共々、全国区の人気チェーンとしてさらなる飛躍も期待できる。「愛知発祥のステーキチェーン」の熱狂はまだまだ続きそうだ。

【後編記事】『愛知県民のごちそう「ステーキのあさくま」業績がいきなりV字回復…28年ぶりの売上100億円突破《独特な経営術》カギに』へつづく。

【つづきを読む】愛知県民のごちそう「ステーキのあさくま」業績がいきなりV字回復…28年ぶりの売上100億円突破《独特な経営術》カギに