格式を誇る第二の人生 長崎・平戸の宿「旗松亭」 大女将 諸橋舞さん(71)

【風人もよう 諸橋舞さん(71)】
着物がよくなじんでいる。帯に留めた名札には「大女将(おかみ)」の文字。2月、昭和天皇皇后両陛下を迎える施設として建設され、その後も多くの皇族らが宿泊した長崎県平戸市の「国際観光ホテル旗松亭(きしょうてい)」の“顔”に収まった。
東京生まれ。これまでさまざまな接客業に就き、人との交流の腕を磨いてきた。着物は生活の一部だった。
両親らを見送り、家族もなく、第二の人生を模索し始めた昨年春、九州にゆかりがある知人に「それなら平戸に伝統の宿がある」と勧められた。高校時代の修学旅行で、まだ橋がなく船で渡った平戸の記憶がよみがえり、さっそく再訪した。
「青く美しい海は変わらず、懐かしさがこみ上げてきました。お試しで泊まると、予想にたがわぬ格式があり、あちこちで聞く評判も上々。ここだと決めました」
東京で香港出身のオーナーと面会し、入社が決定。年末年始の繁忙期には職場体験を願い出た。
宿泊業は初めてだが、「おもてなし、まごころは、これまでと同じ。推理ドラマとかでよく旅館の女将さんが出てくるでしょ。一つの憧れでもあったの」と気品とユーモアが入り交じった口調で話す。元々、海が大好きだといい「港が一望できる当館に勤めるのは、運命に導かれたような感じ」とも。
海外交流の歴史や文化の深さに加えて、人の優しさ、料理のおいしさ…。平戸には尽きない魅力があると語り、今後それらを具体的な知識として吸収し、発信するつもりだ。人脈を生かし、首都圏のマーケットをさらに開拓するのも自分の役目と心得る。海を背に「いつか旗松亭をロケに使ってもらいたい」とほほ笑む姿は、すっかりドラマのワンシーンのようにも見える。
「名前のようにどこへでも舞い込み、皆さんとお友達になりたいの。よろしくって書いといてくださいな」
平戸を“終(つい)の棲家(すみか)”とする覚悟でいる。(福田章)
私の好きな海
この間まで茅ケ崎(神奈川県)の海のそばに住んでいました。加山雄三さんやサザンオールスターズの歌を聞いて育った世代なので、音楽のイメージを重ね合わせる気分でした。海外ならオーストラリアね。平戸へ越したからには、千里ケ浜や根獅子などで海水浴がしたい。今から夏が楽しみです。