【解説】電車の“座席確保”に追加料金を支払う時代!?鉄道各社が「有料座席サービス」を実施 春のダイヤ改正でJRは“攻め”の姿勢…新幹線は始発・終電を増設 “乗り鉄”解説委員が読み解く『鉄道各社の最新事情』
“乗り鉄”でもある解説委員が取材 見えてきた鉄道のイマ
新駅の誕生や運行ダイヤの変更など、時代を反映して鉄道事情が大きく変化する「春のダイヤ改正」。中でも大きな話題になっているのが、民営化以降初めてとなるJR東日本の全面的な運賃値上げです。運賃値上げ幅は平均7.1%、通勤定期の値上げ幅は平均12%におよびます。
一方、関西で注目なのが、JR西日本の有料座席サービスの大幅拡充です。一般車両の座席を「のれん」で区切って有料座席エリアにする「うれしート」を、大阪環状線の一部などにも新たに設置。今回のダイヤ改正で、これまでの約2.3倍になりました。
鉄道は今後どうなっていくのか。春のダイヤ改正から見えて来る鉄道事情を、鉄道ジャーナリスト・梅原淳氏と鉄道解説系YouTuber・鐵坊主氏への取材をもとに、自身も“乗り鉄”であるMBS・米澤飛鳥解説委員が解説します。
“出会いと別れ”がある春のダイヤ改正
3月14日、JR各社が春のダイヤ改正を行いました。ダイヤ改正とは、運行本数や発着時刻、停車駅などを変更するもので、春と秋に行われますが、生活スタイルが変化する人も多い4月を前に大きな改正が行われることが多くあります。
鉄道に対する乗客のニーズは年々変化していて、鉄道各社はダイヤを改正することでより利便性を高めていく工夫をしています。新たな駅や路線の誕生がある一方で、廃線になる路線も出てくるなど、“出会いと別れ”があるのです。
特急列車の増便・観光列車の運行 観光需要に応える動き
ダイヤ改正について、各社の動きを見ていきます。まず、近畿日本鉄道では3月14日から特急列車の増発が行われました。
・奈良線(大阪難波~近鉄奈良): 平日+6本 土休日+4本
・京都線(京都~近鉄奈良):平日+4本 土休日+2本
南海電鉄は3月28日にダイヤ改正を実施予定。4月24日から運行開始となる観光列車「GRAN天空」に合わせた改正とみられます。GRAN天空は高野線(なんば~極楽橋)を片道約1時間半で運行します(大人1700円、1日2往復、水・第2&4木除く)。
上記2つの改正に共通するのが「観光需要に応えようとしている点」です。
東海道新幹線では“攻め”の改正
そんな中、“攻め”のダイヤ改正もあるようです。
東海道新幹線「のぞみ」は3月14日のダイヤ改正で、1時間あたりこれまで最大12本だった運行本数を13本に増やしました。「ひかり」や「こだま」も走っている中で1本増やすことは攻めの決断と言えそうです。
また、新幹線の始発と終電の時間にも変化があります。新幹線は6時から24時までの“門限”の中で運行していますが、この時間内で運転時間が拡大することとなりました。
◆始発
臨時 のぞみ548号 京都6:03発→東京8:12着【増設】
定期 のぞみ230号 新大阪6:00発→京都6:14発→東京8:23着
◆終電
定期 のぞみ64号 新大阪21:24発→品川23:38着→東京23:45着
臨時 のぞみ206号 新大阪21:45発→品川23:59着【増設】
ちなみに、6時から24時という“門限”は音や振動などの問題から設定されているようです。また、日中に非常に過密なダイヤで走っていることから、夜間にメンテナンスをしっかり行うことで安全に備えているという面もあります。
有料座席サービス「うれしート」 提供列車数が2倍以上に!
生活に身近な在来線にも変化があります。
今回のダイヤ改正の一つの注目ポイントが、JR西日本の有料座席サービス「うれしート」の大幅拡大です。このうれしートは通常の乗車料金にプラスして、指定座席券を買う仕組みとなっていて、通常期は530円、閑散期だと330円、そしてインターネットで購入すると300円です。
近畿エリアではこれまで、1日あたりの提供列車本数は117本でしたが、14日からは266本と2倍以上に増やしました。大阪環状線の一部でも導入されたことも注目すべきポイントです。
鉄道各社が有料座席サービスを実施
こうした有料座席サービスを行っているのはJRだけではありません。
◆京阪「プレミアムカー」(2017年開始)
400円or500円
当初は1両編成で開始。去年から2両編成に
◆ JR「うれしート」(2023年開始)
300円~530円
今回の拡大で提供列車は当初の60倍以上に
◆阪急「プライベース」(2024年開始)
500円
去年1日160本に増発。当初の約1.5倍に
鉄道解説系YouTuberの鐵坊主氏は「 『うれしート』は仕切るだけなのが画期的」と話します。専用車両を用意するのではなく、のれんで仕切るだけにすることでコストも手間もかけずに実施できているのかもしれません。
年度別の輸送人数はコロナ禍前の水準に戻らず…鉄道のこれからは?
鉄道各社がこうしたサービスを展開する背景には、「利用者減の未来」と「需要を見つけて収益確保」といった思惑がありそうです。
JRと民間の鉄道の年度別の輸送人数をグラフで見ると、2015年度~2019年度までのべ250億人ほどで横ばいで推移していましたが、2020年度は新型コロナで200億人を切るなど落ち込みを見せました。そこから23年度にかけて少しずつ回復傾向にはありますが、コロナ禍前の水準には戻っていません(国土交通省 鉄道統計年報より)。
鉄道ジャーナリスト・梅原淳氏は、こうした状況について「鉄道は都市間輸送や観光需要に集中投資をしている。人口減少社会のなか、もうかるところに注力する流れ」と分析しています。
ダイヤ改正から、鉄道に対する時代のニーズや、鉄道会社が置かれた状況が見えてきます。人口が減っていくなかで、公共インフラとしての役割も非常に大きい鉄道が、集中投資するところには集中投資しつつ、全体の路線をどう安定的に運行していくのかがこれからの課題なのかもしれません。
(2026年3月16日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
