寒波襲来! でも頼りになる「雪でも走れる夏タイヤ」の実力は? ミシュランの新オールシーズンタイヤ「クロスクライメート3/3スポーツ」を試してみた
ミシュランの最新オールシーズンタイヤは2本立て
第51回衆議院議員選挙が行なわれた2026年2月8日、今季最強寒波の影響で東名阪エリアも積雪となりました。高速道路は次々と通行止めとなり、山岳部の道路では立ち往生のオンパレード……。その影響は翌日にも残り、東名・新東名の一部通行止めはなかなか解除されない状況でした。
こうした状況がニュースになるたび、ドライバーの関心が真っ先に向かうのがタイヤです。
【画像】ミシュランが目指す理想のタイヤの入り口…かもしれない?「雪でも走れる夏タイヤ」の実力は?(17枚)
積雪地域に住む人なら冬季はスタッドレス交換が当たり前ですが、東名阪エリアのように「数年に1度」と言う地域ではどうでしょうか? 「スタッドレスを履くほどではない、でも突然の降雪に夏タイヤでは不安が残る」と言う“グレーゾーン”の解決策の1つがオールシーズンタイヤです。
オールシーズンタイヤとはその名の通り、季節を問わず履くことができるタイヤを指します。日本ではこれまであまりなじみのないタイヤでしたが、現在国内外のタイヤメーカーがこぞって商品を展開。そんなオールシーズンタイヤの第一人者と呼べる存在がミシュラン・クロスクライメートシリーズです。
欧州では2015年に登場、日本には2019年に「クロスクライメート+」として導入されました。その後、2021年には市場の成長に合わせて「クロスクライメート2(CC2)」とSUV用の「クロスクライメート2 SUV」へと進化。そして、10年目となる2025年に最新作が2タイプ登場しました。1つはCC2の正常進化モデル「クロスクライメート3(CC3)」、もう1つはスポーツと言う新たな価値がプラスされた「クロスクライメート3スポーツ(CC3S)」になります。
舗装路での性能は◎! 雪道の走りは…?
多くの人は「オールシーズンタイヤ=万能タイヤ」と思っている人が多いですが、これは半分正解で半分は間違いです。
「正解」の部分はCC3/CC3S共にスノーフレーク刻印を備え、国際的な冬用タイヤ基準を満たしており、高速道路の「冬用タイヤ規制」時も通行が可能となっています。「間違い」の部分はスタッドレスタイヤの代わりではないという事です。

オールシーズンタイヤの本来の使命は「年間のほとんどはドライ/ウエット路面、年に数回の積雪時でも走行が可能なタイヤ」です。つまり、極端な事を言うと、基本は“夏タイヤ”であると言う所です。そのためミシュランでは積極的にオールシーズンタイヤとは呼ばず、あくまでも「雪も走れる夏タイヤ」と呼んでいます。
舗装路でのテスト記事はすでにくるまのニュースでお届け済みですが、今回は皆さんが気になる雪道でのテストです。実は筆者(山本シンヤ)は実際にテストするまでこのタイヤに懐疑的でした。その理由は舗装路での性能がすこぶる良かったからです。
オールシーズンタイヤの多くがステアリングの応答、グリップ、ノイズなど夏タイヤとの明確な差がありますが、CC3は何も知らされずに乗ると「君は夏タイヤですか?」と思うくらいの性能。CCS3に至ってはドライ/ウエット性能の高さはもちろん、応答性、一体感、そして意のままの操縦性と、スポーツタイヤで大事な性能まで妥協がない性能を見せます。それが故に「CC3シリーズは舗装路を重視したキャラに変更したのかな?」と。
しかし、雪道を走らせてビックリ!! 率直な印象は「凄い」よりも「何で?」でした。もう少し具体的に説明していきましょう。
驚きと疑問。何でこんなに雪道を走れちゃうの?
雪道で大事な性能は「確実に発進できるか?」、「確実に舵が効くのか?」、そして「確実に止まれるのか?」の3点です。まずはフォルクスワーゲン「ゴルフVIII」+CC3Sの組み合わせで、雪上で制動/スラローム/Wレーンチェンジを従来品(CC2)と比較です。
発進/制動共にCC2でも不満はありませんが、CC3Sは絶対的なグリップはもちろんタイヤにより安心・信頼を感じる+αがプラスされています。絶対的なアクセル/ブレーキ操作時の反応の良さ、つまりグリップの立ち上がりの素早さです。

時間にすると僅かですが、路面μの低い雪道では「発進できる/止まれる」を実感できる信頼の証となります。ちなみに制動距離はCC2に対してほぼ同等レベルでしたが、オンロード性能の伸び代を考えるとむしろ「凄いぞ!!」と。
パイロンスラロームは発進・制動よりもCC2との差が見えた部分で、旋回スピードの高さ(=横方向のグリップが高い)はもちろん、左〜右〜左と切り返す時のヨーの収束の速さ(=挙動が乱れにくい)、そして限界の解りやすさ(=滑り出しが穏やか)などから、最初のパイロンから最後のパイロンまで一定速かつ狙ったラインで走れました(CC2はパイロン途中で挙動が乱れ始め修正舵もしくは速度を落とす必要があった)。
つまり、グリップとコントロール性が高いので、挙動を乱さない→ミスをしない→安心感がより増す→安全運転に繋がると言うわけです。
ミシュランのブレない思想
続いてトヨタ「カローラツーリング」+CC3の組み合わせで同じコースを走ります。ミシュランは「CC3/CC3Sの雪道性能は夏の性能とは異なりほぼ同等」と語っていますが、重箱の隅を突くとクロスクライメート3のほうが雪のグリップは若干高めに感じました。
加えて感覚的な部分にも差があり、何も気にせず走らせてもグリップを感じやすいCC3に対して、反応の良さやキビキビとしたクルマの動きはあるも同じグリップを出すには前後の荷重をわずかに意識した走りが必要となるCC3Sと言った違いを感じました。
この辺りは夏の性能でスポーツを求めるが故のタイヤ各部の剛性や構造の違いによる違いが出たと分析しています。

さらにこの組み合わせで氷上での制動テストも行ないました。ちなみにCC3/CC3S共に氷上性能は「×」なので興味半分、不安半分で試してみると、想像していたよりも止まるし、ステアリングもノーコントロールではなく向きを変えようとします。
個人的には「×」ではなく「△」でもいいと思いましたが、ミシュランは「積雪地域はスタッドレスタイヤを履いてください。我々はオールシーズンタイヤがスタッドレスタイヤの代わりになると思っていません」と首を縦には振りません。
では、なぜこのテストをあえて実施したのでしょうか? 筆者はこう分析します。
リアルワールドは時々刻々と路面状況は変わるためトータルパフォーマンスを謳うミシュランとしては氷上の性能は持たせている。しかし、ミシュランとして求める性能には届いていないのでOKとは言わない……と言う事なのでしょう。
つまりスタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの“役割”を明確にする事、そしてミシュランの思想はどのタイヤもブレていない事を伝える事が、このテストの真の狙いだったと思っています。
オールシーズンタイヤとスタッドレスタイヤの乗り比べテストも実施!
次はアウディ「A3スポーツバック 40TFSI クワトロ」で雪上での定常円旋回です。ここではCC2とCC3Sに加えてスタッドレスの「X-ICE SNOW」を比較しました。横方向のグリップはX-ICE SNOW>CC3S>CC2の順なのは言うまでもありませんが、限界を超えるスピードを計測してみた所、X-ICE SNOW:42km/h、CC3S:40km/h、CC2:38km/hでした。
つまり、雪上ではスタッドレスに匹敵する性能だと言う事です。ただ、X-ICE SNOWはデビューから6年が経過しているので、次世代モデルではその差は更に広がると予想しています。

そして最後はトヨタ「RAV4」でワインディングを模したコースでCC3とX-ICE SNOWを比較です。
もちろん、ただ走るのではなく日常で遭遇するシーン……坂道発進や下りの制動などを試してみました。X-ICE SNOWのグリップの高さと安心感は言わずもがなですが、CC3は比べると修正舵やVSCの点滅、ABSの作動などでグリップの違いは感じるものの、何も知らずに乗ったら「君はちょっと前のスタッドレス?」と勘違いするくらいの性能を持っています。
恐らくFF/FRだともう少し差が出るかもしれませんが、RAV4(=4WD)との組み合わせは、まさにオールラウンダーです。
ただ、中には「テストコースとリアルワールドは違う」と言う人もいると思います。実はあの大雪の日、筆者は群馬の取材を終え、自宅がある静岡まで移動していました。ちなみに愛車のGRヤリスにはCC3Sを装着済み。
実は通行止めになるギリギリのタイミングでの走行でしたが、圧雪、アイス、シャーベット、ウエットと時々刻々と変化する中でも1度もヒヤリとするシーンはありませんでした。そして、CC3Sが舗装路ではサマータイヤ、雪道では雪道タイヤ……と天候と路面にシンクロして特性が変わる事を、リアルワールドでも実感することができました。

そろそろ結論に行きましょう。CC3/CC3Sはまるで電子制御ダンパーの如く、夏は「サマータイヤ」、冬は「雪用タイヤ」と季節や走る環境によって2つの顔を見せるタイヤです。個人的には「カメレオン」と命名したいくらいです(笑)。
ミシュランは全ての性能を追求する「トータルパフォーマンス」をモットーにタイヤ開発を進めています。将来的には1つのタイヤに全ての性能を賄う事を本気で考えているようですが、今回そんな「夢のタイヤ」の入り口を見たような気がします。
