(※写真はイメージです/PIXTA)

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現在は高年収のエリート会社員であっても、多くの日本企業や外資系企業では50代以降、「55歳(あるいは50歳)の役職定年」や「給与カーブの頭打ち」が待ち受けています。そのため、現在の年収を前提に生活レベルを固定化してしまうと、収入が下がった途端、家計が一気に苦しくなる恐れも……。そこで本記事では、50代サラリーマンの事例とともに、資産形成における重要な考え方と年収が下がる前に考えておきたい「給与以外の収入源」について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

年収4割減…エリートを追い詰める「役職定年」

金融機関に勤める町田さん(仮名/50歳)。現在の年収は約1,800万円で、妻(50歳・専業主婦)と、私立理系大学に通う長男(18歳)、私立文系大学へエスカレーターで上がる私立高校に通う長女(16歳)の4人家族です。

住まいは、十数年前に購入した湾岸エリアのタワーマンション。週末は夫婦でゴルフや外食を楽しむなど、一見すると順風満帆な生活を送っているようにみえます。しかし、町田さんの胸の内は、焦りと不安で渦巻いています。

「正直なところ、将来への不安が年々強くなっているんです」

町田さんを追い詰めているのは、日本の金融機関に根強く残る人事制度、いわゆる「役職定年制度」です。

「55歳になれば、私も役職を外れます。同期の多くは関連会社へ出向(転籍)となり、本体に残れたとしても給与テーブルが大きく変わることは明白です。人事部から提示された来期以降の年収は1,000万円前後で、いまの6割くらい。さらに60歳以降、定年後の再雇用では、年収400万〜500万円程度まで下がることが確定しています」

問題は、年収が下がるタイミングと、人生最大の支出の山場が重なってしまっていることです。

「子どもたちが大学を卒業するまで、まだ数年かかります。理系の長男は大学院進学を希望しており、学費負担はさらに4年続く見込みです。住宅ローンは20年近く残っていますし、正直なところ、うちの妻も“部長夫人”としての生活水準がなかなか落とせないようで……手取りがガクンと減るのに、出ていくお金はピークのまま。収支が赤字に転落するのは目に見えています」

ねんきん定期便が突きつけた「老後の現実」

さらに町田さんは、誕生月に届いた「ねんきん定期便」をみて愕然とした様子です。

「これまでの給与水準を踏まえると、もらえる年金もそれなりだろうと思っていました。だけど、思わず二度見しましたよ……。よもや、見込み額が月たったの22万円程度(厚生年金+基礎年金)とは……。妻の分を合わせても、月28万円ほどです。管理費と修繕積立金だけで月8万円かかるいまのマンションに住み続け、固定資産税を払い、さらに老後資金を残す……。貯蓄を取り崩す生活が続けば、70歳を待たずに破綻してしまいそうです」

外資系企業のように「クビ」にはならないものの、「飼い殺しのような給与減」が制度として確定している現実に、町田さんは逃げ場を失っていました。

「減収リスク」がみえていない…高収入が陥りがちなバイアス

ファイナンシャルプランナー(FP)である筆者は、実務において高所得者からの相談を受けることも少なくありません。多くの高所得者のキャッシュフロー診断を行うと、共通して見受けられる「計算ミス」があります。

それは、生涯賃金を「現在の年収×定年までの年数」という単純な掛け算で“皮算用”しているということです。

FPの視点からみると、これは「楽観バイアス」に支配された危険な計算といえます。特に金融機関や外資系企業、専門職の場合、50代以降も収入が右肩上がり、あるいは現状維持で推移するケースはまれです。

役職定年、転職による給与ダウン、健康上の理由による離脱……キャリアの後半戦には、必ずといっていいほど「減収リスク(キャリアのダウンサイド)」が立ちはだかります。

高収入の生活に慣れた家庭にとって、年収が4割、5割と下がることは、単なる数字の減少以上の痛みを伴います。一度上げた生活水準を下げることは、精神的にも物理的にも簡単なことではありません。

資産形成とは、単にお金を貯めることではなく、「将来訪れる減収期を、いかに現在と変わらぬ生活水準で乗り越えるか」を設計するプロセスであるべきです。

年収が下がる前に信用を「資産」に変換すれば、お金が長生きする

では、町田さんのような高所得者が、いますぐ取り組むべき対策とはなんでしょうか。それは、「現役時代の社会的信用(クレジット)」を、将来にわたり収益を生み続ける「資産(アセット)」に変換しておくことです。

年収が高く、企業の信用力も高いいまこそ、金融機関からの融資を受けやすく、資産形成の選択肢も広い絶好のタイミングです。逆に、年収が下がってからでは、同じ条件で融資を受けることは難しくなります。

高年収という武器には“有効期限”があります。つまり、「稼げているいまこそが、将来の備えを仕込む最大のチャンス」なのです。

収入を増やす選択肢

この「信用の変換」を実現する具体策のひとつが、「新築アパート投資」です。新築アパート投資は、高属性の現役世代にとっていくつかの理由から相性のいい選択肢であるといえます。

1.高年収の信用力には“賞味期限”がある

新築アパート経営には、億単位の融資が必要です。しかし、高収入という強い信用力があれば、銀行は低金利かつ長期間という好条件で融資を承認します。

しかし、数年後に年収が下がってから不動産投資を始めようとしても、借りられる金額は大幅に減り、有利な条件での参入は難しくなります。現役時代の高い属性を活かせる期間は限られており、年を重ねると、たとえ年収が高くても「完済時年齢」の制約でローン期間が短くなり、収支(キャッシュフロー)が悪化するリスクがあります。

いまの高い年収は、将来の不労所得をつくるための「ブースター(加速装置)」として積極的に活用すべきです。また、新築アパートであれば、初期の修繕リスクが低く、長期的な運用計画を立てやすいというメリットもあります。

2.給与減のあとも、生活水準を維持する“クッション”になる

仮に55歳で役職定年を迎え、手取りが年間500万円減ったとしましょう。そのとき、所有するアパートから年間500万円の純収入が生まれていれば、世帯収入は実質的に維持できます。

これは単なる収入源ではなく、生活水準を急激に下げないための“クッション”として機能します。給与だけに依存する人生から、「給与+副収入」の人生へ。この転換ができているかどうかが、50代以降の安心感を大きく左右します。

キャリアの終焉は「準備」で乗り越えられる

「キャリアの終焉」と聞くと、どこかネガティブな響きがありますが、それは「準備がない場合」の話です。いまのうちに将来の収入減を見据えた資産形成を始めておけば、会社員としての収入が下がったあとも自分らしい人生を歩むことができます。

「50代で年収4割減」は決して他人事ではなく、多くの高所得の会社員が直面する現実です。しかし、年収が高いいまこそが、未来の自分を助ける最大のチャンスです。「いまの信用を、未来の安心に変える」--その一歩を、今日から踏み出してみてはいかがでしょうか。

藤原 洋子
FP dream
代表FP