『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』©︎テレビ朝日系

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 松嶋菜々子が主演を務めるドラマ『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』(テレビ朝日系/以下、『おコメの女』)には、脱税を見つける”アベンジャーズ”のような布陣がそろっている。大地真央演じる飯島作久子が“ガサ入れの魔女”と呼ばれているのは、なんとなく想像がついていたけれど、ごくごく一般的なアラサー女性のように見えた俵優香(長濱ねる)が“人心掌握術の天才”と分かったときの衝撃はすごかった。

参考:長濱ねる、活動の軸にある“誰かのために”という思い 目標は「お芝居と社会的な視点の両立」

 長濱ねるが演じている優香は、いわゆる“イマドキの子”。税務署時代、優秀さを見込まれて若くして“コメ”の一員として活躍していたのに、ワークライフバランスを重視して異動。残業はもちろん、「休日出勤なんてありえない!」という令和的価値観を体現した人物だ。しかし、米田正子(松嶋菜々子)がピンチのときにはサッと現れてくれる、仲間思いなところがある。

 長濱の演技のなかで印象に残っているのが、第1話。“年金ビーナス”と称される紅林葉子(アンミカ)の裏の顔を暴くために、“アベンジャーズ”が集結した場面だ。国税局・資料捜査課のなかに新設された複雑国税事案処理室(通称:ザッコク)のメンバーたちは、30分以内に裏金の隠し場所を探さなければならない。そのなかで優香が対峙したのは、葉子の右腕である証券アドバイザー・生島輝一(田中幸太朗)だ。

 正直、彼女がそんなにデキる人間だとは思っていなかったので、「これだけワインが並んでいたら怪しいと思ったけど、ボトルのなかも棚の隙間も金は詰まってない。困りました。ここにはなさそう」と言ったとき、この勝負が空振りであることを悟ったのだが……。生島が意気揚々と「ここにはじゃなくて、どこにもないんだよ」と語り出した瞬間、優香はパッと目の色を変えて、「ありがとう。大事なことを教えてくれて。ふっ、今の返事であなたの精神状態に余裕があることが伝わった。ここにはない。それを教えてくれたお礼」と返したのだ。このときの優香の笑顔に、ゾワっとしたのはわたしだけではないだろう。

 思い返せば、長濱はこれまでさまざまな役柄に挑戦してきた。『おコメの女』で演じている優香は、『アンサンブル』(日本テレビ系)の園部こずえと被る部分がある。“今”を大事に生きていて、仕事よりもプライベートを優先する。上司に対してもぶっ込んだことを言ったりするときもあるけれど、なぜか許されてしまう……という感じ。こういった役柄がハマるのは、演じている長濱自身が人並み外れた愛され力を持っているからだと思う。

 その一方で、『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の樋口ゆかりのような“キラキラ”とは正反対の立ち位置にいるキャラクターも、リアルに演じられるからすごい。これは、『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)で、失踪した三女・町田衿を演じていたときに感じたことだが、彼女の演技には奥行きがあるのだ。普通に笑っていたとしても、“何か”を秘めているんじゃないかと思わせるような。だからこそ、優香のようなキャラクターにも説得力を持たせることができるのだろう。

 優香はこれまで、どのような人生を歩んできたのだろう。これだけの人心掌握術を持っているということは、“何か”があったに違いない。そして、長濱ならその人生の奥行きを、丁寧に演じ切ってくれるはずだ。

(文=菜本かな)