「最初はすごく丁寧で良い人だなと思っていたのに…」 コスプレイヤーや同人作家がストーカーに狙われる意外な理由 「絵やキャラのイメージを相手に重ねてしまう」
コミックマーケットなどの様々な同人誌即売会で以前から問題視されているのが、同人作家やコスプレイヤーに対するストーカー行為である。女性が被害者となるケースが大半を占めるが、男性がターゲットになる場合も少なからず存在するといわれる。
そうしたストーカーは、目当ての同人サークルのスペースにやってきて同人誌を買い求めるだけでなく、長時間スペースを占拠して立ち話をはじめたりする。そして、暗に性的な関係を迫るような会話をしだすのだという。以前は同人誌の奥付に住所が掲載されていたため、自宅を特定された人も多かったようだ。
現在はインターネットやSNSを通じて同人作家とつながりやすい状況になっており、SNSのダイレクトメールなどで同人作家に対し、「結婚しよう」「同棲しよう」などというコメントを何件も送付する悪質な人もいるという。こうした被害に悩み、同人作家が警察に相談する事例が続出しているようだ。【文・取材=宮原多可志】
【写真】秋葉原を凌ぐ勢いで盛り上がりを見せるオタクの聖地・池袋の今を歩く
丁寧な良い人のイメージが一変
実際に同人誌即売会で付きまといなどのストーカー被害を受け、警察に相談したことがあるという女性同人作家が、匿名でこう打ち明ける。

「その男性は、最初は私の作品が好きな一ファンに過ぎなかったと思います。私の同人誌を買って『とても良かったです』と感想を書いたメールが届いたので、『買ってくださってありがとうございます』と返事をしました。このやりとりだけならよくあることですし、私も相手に対して、凄く丁寧な人だなと良い印象を持っていました。
その後、何度かメールをやりとりしているうちに、いつの間にか絵の感想から離れ、彼の生活や趣味の話が日記のように書かれたメールが頻繁に来るようになりました。あまりにたくさん来るので、『プライベートに関するメールは今後、控えてくださいますか』と送りました。彼はその時は、いったん大人しくなったんですよ」
「片付けを手伝いますよ」
安心したのも束の間、である。数ヶ月後、そのストーカーは同人誌即売会に現れ、スペースの前に長時間居座り、立ち話を始めた。周囲のサークルにも明らかに迷惑が掛かっているが、ストーカーは気にする様子もない。そして同人誌即売会が終わる直前、こんな提案までしてきたのだという。
「彼が、『片付けを手伝いますよ』と言い出したんです。本来ならありがたいことですが、さすがに気持ち悪いので、『大丈夫です、私が1人でできますから』と言ったところ、『なんで断るんですか。あなたが大変そうだから手伝おうとしているのに』と、若干キレ気味に言われ、暴言を吐かれたんですよ。
このままではまずいと思い、次回からは男の友達に売り子を頼むようにしたのです。彼は同人誌即売会に姿を見せなくなりましたが、一方で再びメールが来るようになり、『会いましょう』『あなたの活動を支援する準備はできています』など言われたのです。無視すると『どうして返事をくれないのですか』と返事の要求があるので、もう手に負えなくなり、警察に相談しました」
絵と作家のイメージを重ね合わせる
こうした被害をSNSで告白する人は少なくない。ストーカー行為が起こるのは、同人作家に対して歪んだ感情を抱く層が一定数存在するためなのではないかと、前出の同人作家が話す。
「私の知り合いから聞いた話ですが、絵と同人作家のイメージを重ね合わせる人がいるようです。声優さんとアニメのキャラを同一視する人はたくさんいますが、それと同じ感覚なのかもしれません。ただ、“かわいい絵を描く人だから、性的な話をしても問題ないだろう”と一方的に思い込み、卑猥なトークを始めるのは勘弁してほしいです。
それと同じことがコスプレイヤーにも起こっているようです。知り合いはよく、肌の面積が多い、露出度が高い衣装のキャラのコスプレをしています。キャラが好きでコスプレをしているのに、肌を見せるのが趣味だと誤解されることが多いようですし、『変態なんだろ』『肌を見てほしいんだろ』とセクハラに近い言葉を掛けられることがあるそうです」
一昔前、同人誌即売会では、同人作家にスケッチブックに絵を描いてもらう“スケブ”という文化が盛んだった。無料でファンサービスの一環として行われるものだったが、一部の人が同人作家に卑猥なイラストや、強引な要求を行うようになり、実施を取りやめる例が続出した。一部の人の心ない振る舞いで、文化が衰退するのは残念である。
画廊にやってくるギャラリーストーカー
ストーカー行為は、画家などのアーティストの世界でも相次いでいる。貸しギャラリーなどで個展を開いている画家が在廊しているときにやってくる、ギャラリーストーカーという存在もいる。長時間作家を拘束し、まるでギャラリーをキャバクラのように扱っている人がおり、アーティストを悩ませている。
「ストーカーは絵を買うことは一切ありません。数百円のポストカードを1枚買うだけ。本来であればポストカードだって買ってもらえたら嬉しいのですが、それをきっかけに数時間拘束されてしまうのですから、たまったものではありません。しかも、展示されている絵と何も関係ない、個人情報や趣味の話題を振られることもしばしばです」
そう話すのは、人気の高い女性アーティストであるが、美大生時代からストーカー的な存在に悩まされてきたと話す。また、友人にも現在進行形で付きまといにあっている人がいて、心配なのだという。
こうしたストーカー行為を働く人は性別を問わず、一定数いるのは間違いない。同人誌即売会やギャラリーへの訪問は容易だし、アイドルイベントのような距離感があるわけでもないため、ストーカーの標的にされやすいのではないかという意見もある。トラブルに発展しそうな場合は放置をするのではなく、周囲や警察に相談を行うべきであろう。
ライター・宮原多可志
デイリー新潮編集部
