『国宝』©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

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 2025年の国内の映画・ドラマを振り返って、際立っていた若手俳優を挙げるならば、やはりここでも話題の中心は『国宝』になるだろう。6月前半に劇場公開されてから半年間のロングランを記録し、実写日本映画の歴代最高興収を樹立。ここ数年、アニメ映画を中心としたメガヒット作が相次いでいるが、いずれもファンダムにターゲットを絞った“作戦勝ち”の印象は否めず、そうしたなかでここまで正攻法に広がりを見せた――しかも実写の3時間映画で――のは本物であろう。

参考:『国宝』“少年期の喜久雄”黒川想矢の演技に圧倒される 『怪物』『【推しの子】』からの進化

●黒川想矢×越山敬達

 同作で吉沢亮演じる主人公·喜久雄の少年期を演じた黒川想矢と、横浜流星演じる“俊ぼん”こと俊介の少年期を演じた越山敬達。2人はともに2009年生まれの16歳だ。一般的に、主人公の少年期役というのは単なる回想やプロローグの一旦を担う脇役的ポジションになってしまいがちだが、彼らはそうではない。喜久雄が花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、2人が初めて対面するシーンから、この映画の要である喜久雄と俊介の関係は始まり、如実に映画全体と地続きでありつづける。

 黒川といえば、二年前に公開された是枝裕和の『怪物』で物語のキーとなる少年を演じたり、ドラマ版『からかい上手の高木さん』(TBS系)や『【推しの子】』(Prime Video)などにも出演していたが、若い役者にしては珍しく、“スクリーンで観たい”とこちらに思わせるだけのスケール感を備えている。今年の夏に公開された『この夏の星を見る』(これはあまり話題にならなかったが、非常に優れた青春映画である)では東京に住む中学生を演じ、都会とコロナ禍、ふたつの抗えない閉塞感のなかで夜空に希望を見出す少年を見事に体現していた。

 一方の越山の方も、奥山大史の『ぼくのお日さま』で証明してくれたように映画向きの役者であることは間違いない。それでも7月期のテレビドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)で、同年代の役者たちの群像に混ざり、そのなかのアクセントとして信頼のおける働きをしていたのを見れば、まだまだその可能性は計りしれない。いずれにせよ、この黒川と越山、数年もしないうちに「『国宝』で少年期を演じた~」という枕詞など必要のない役者に成長するはずだ。

●星乃夢奈

 先で挙げた『この夏の星を見る』や『僕達はまだその星の校則を知らない』だけでなく、『ちはやふる-めぐり-』(日本テレビ系)をはじめ、2025年は若手俳優の宝庫となる青春群像劇や学園ものが多々見受けられた。そのなかでも特に興味をそそられたのは、4月期に放送された『霧尾ファンクラブ』(中京テレビ・日本テレビ系)であり、以前から注目してきた莉子に、これまでのクールな役柄から一転してギャグ路線を開花させた茅島みずき、そして“なかなか顔が見えない”井上瑞稀と、実にユニークなアンサンブルが味わえる作品だった。

 そのなかでも特に目を引いたのは、主人公2人とは対となる“陽”のキャラクターで、群像に良きコントラストを付与していた皐月役の星乃夢奈。彼女は今年、他にも『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で児童養護施設出身のシングルマザーを演じたり、『君がトクベツ』では大橋和也演じる主人公の心情を左右させる重要な役を演じていたり。YouTuberから『Popteen』モデルを経て、『オオカミ』シリーズに歌手デビュー、さらには『仮面ライダーギーツ』(テレビ朝日系)で女性仮面ライダーの一人を演じるなど、新たな王道出世ルートのパイオニアとして注目したい存在だ。

●杏花

 “飛躍”という点で考えれば、竹内涼真の好演が際立った『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)で後輩社員の南川を演じていた杏花は、待ちに待ったブレイクの好機が訪れたのではないだろうか。多くのブレイク俳優を輩出した『表参道高校合唱部!』(TBS系)から10年、『I’’s』(BSスカパー!)で“第2のヒロイン”を演じてから7年。竹内演じる勝男にズバズバと物言うお構いなしの性格と、彼女が密かに勝男に好意を寄せていく過程(しかも、それが物語に影響を与えないのが良い)。総じてキャストアンサンブルが秀でていた作品のなかでも、頭ひとつ抜けていたかもしれない。

●志田こはく

 最後にもうひとり追加すると、『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(テレビ朝日系)で、降板した前任者から一河角乃/ゴジュウユニコーン役を引き継いだ志田こはくに“敢闘賞”を贈りたい。2年前の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』で戦隊ものを経験している彼女が、放送も終盤になって別の役柄としてカムバック。潜入捜査で顔と声を変えたら元に戻らなくなったという大胆な設定でも視聴者に説得力を持たせるその胆力は恐るべし。スタッフ陣の創意工夫ももちろん讃えるべきだが、こうした無茶振りに即座に応えてくれる志田のような役者がいるからこそ、戦隊ヒーローの歴史が50年続いたのだと思わずにはいられない。

(文=久保田和馬)