JAXAが「H3」ロケット8号機の再打ち上げ日時を決定 「みちびき」5号機を搭載
JAXA=宇宙航空研究開発機構は2025年12月20日、内閣府の準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」の測位衛星「みちびき」5号機(QZS-5)を搭載する「H3」ロケット8号機の再打ち上げ日時が決定したと発表しました。
H3ロケット8号機の打ち上げ日時は、日本時間2025年12月22日(月)10時51分30秒、打ち上げ時間帯は10時51分30秒〜11時04分33秒となります。打ち上げ予備期間は2025年12月23日〜2026年1月31日です。
ペイロードの「みちびき」5号機については、以下の記事をご参照ください。
JAXAが中止・延期していた「H3」ロケット8号機の打ち上げ予定日を再設定 「みちびき」5号機を搭載(2025年12月19日)
IMUの問題にともなう延期に続き異常検知で打ち上げ中止
当初、H3ロケット8号機は2025年12月7日に打ち上げられる予定でしたが、ロケット2段目の搭載機器のひとつであるIMU(慣性センサユニット、慣性計測装置)に確認が必要な事象が認められたため、JAXAは打ち上げを12月17日に一度延期。
17日は打ち上げ直前までカウントダウンが進んだものの、冷却水注水設備で発射約17秒前に異常が検知されたことで緊急停止が発令され、この日の打ち上げは中止されていました。

冷却水注水設備は、ロケットエンジンから噴射される燃焼ガスが通過するロケット直下の煙道部や、燃焼ガスを受け止めて方向を変える耐火コンクリート製のフレームデフレクターを保護するために、燃焼ガスに注水して冷却する装置です。注水によって発生する水蒸気がロケットエンジンの発する音響を吸収することで、ロケットやペイロードを音響から守る役割も担います。
注水には以前はガスタービンポンプ方式が採用されていましたが、H3ロケット4号機以降は窒素ガスの圧力を用いるブローダウン方式に変更されています。
バルブの開度が足りず窒素ガスの流量が不足
12月20日に開催された再打ち上げ前ブリーフィングでは、JAXAの有田誠さんと三菱重工業株式会社の志村康治さんから、異常検知の原因に関する詳細が説明されました。
ブローダウン方式に変更された冷却水注水設備には水タンクと加圧用の窒素ガスタンクがあり、双方をつなぐ配管には手動弁と空圧弁の2つのバルブが設けられています。手動弁は窒素ガスの流量を調整するために、総員退避前に規定の開度まで手動で調整されます。また、空圧弁は総員退避後のカウントダウンシーケンスに従って開放されます。今回の異常検知の原因は、このうち手動弁の操作に関連していたことが明らかにされました。
従来は手動弁のシャフトに取り付けられている開閉指示板の位置をスケールで測定しながらmm単位で開度を調整していましたが、暗い時間帯での作業も必要となることから作業性の向上を図り、今回のH3ロケット8号機の打ち上げからは治具を用いて確認する手順に変更されました。

従来の手順では開閉指示板の外側からスケールで測定していたため、開度確認用の治具も外側部分に当てて使用することが想定されていました。しかし、17日の打ち上げにともなう実際の作業では、開閉指示板の内側部分に治具を当てて確認が行われていたといいます。
開閉指示板の治具を当てる側は外側部分よりも内側部分のほうが数mm厚く、その分だけバルブの開度が不足したことで窒素ガスの流量が規定値に届かず(※)、結果的に冷却水の圧力が不足したことで異常検知につながりました。
※…規定値の毎分200立方mに対して、17日の実績値は毎分約150立方m。
従来通りの手順で開度設定を行ったところ規定の流量に達することが確認できたことから、8号機では実績のある従来の手順で開度設定が行われることになりました。開度確認用の治具については検討の上で改良を進めていくとしています。
また、治具の使用方法が想定と異なっていたことについては、変更後の事前検証や初回作業時の立ち会いといったケアが十分ではなかったことから、今後は検証試験の実施や手順書への適切な反映をはじめ、品質を保つ仕組みの徹底と改善を行っていくということです。
文・編集/sorae編集部
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