ペットの柴犬の写真をX(旧Twitter)に投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第88回を迎える今回は、7年の歴史を持つinubot回覧板の最終回。連載の思い出を振り返ります。

連載開始から7年、今では11歳に

この連載を始めた頃、犬はまだ4歳で、7年と5か月を経て、今では11歳になった。まだまだあどけなかったが、立派な成犬期を経て、シニアの域へあんよを伸ばしている。

私たちの暮らす自然に囲まれた町は、四季折々で表情をずいぶん変える。

季節が訪れ、やがて通り過ぎていくのを犬と見てきた。冬は雪、春は桜、夏は川、秋は柿とミカンの収穫。

犬と一緒にいろいろな場所を巡った

犬といろんな場所を巡った。高野山、信楽、淡路島。

2019年に、淡路島で犬は海を初めて見たが、そのときの犬ったら大興奮して、母の手をグイグイ引いて砂浜を駆けていった。

昔、一緒に暮らしていた犬・エースの話や、連載が始まる前に亡くなった祖母の話をした回は、ふたりとの思い出も重なって、やはりよく覚えている。

思い出を辿っていると、なんだかエースとおばあちゃんが今、一緒にいるような気がしてきた。

ミカン畑を駆けまわる犬の姿には、何度も救われてきた。自然のなかで躍動する命はまぶしくて、心のモヤも晴れていくのだ。

無邪気なかわいらしさはずっと変わらない

その無邪気さにも、何度も笑わせてもらった。坂道を勢いよく転がっていくミカンを追いかける犬は、もう止められない。

ただ年齢を重ねると共に、走る足取りが重たくなってきたようにも感じる。でも、畑の作業中に母が休憩を取ると、すぐに足もとに寄り添いにいく甘えたなところは幼いころのまま。

そんな母がちょっとした骨折の手術で3日だけ入院したときに、退院して帰ってきた母を見つけた犬の「おかえり」の表情にはひどく胸を締めつけられた。安堵があふれている眼差しを母に向けていたのだ。

犬と母のふたりのあいだには言語を超えた交感が、たしかにあった。そう母に言うと「ほんまそうやで」と当たり前のように笑った。

それと、この連載を締めるにあたって、どうしても犬の歯の弱さについて、ふたたび書き残したい。

私の知識不足から、犬は木の棒を噛(か)んで遊んだり、ジャーキーをおやつにしていて、昨年、歯が折れて抜歯手術をすることになった。そこで、獣医さんから聞いたのは、世間一般にはまだ浸透していないが、犬の歯はとても弱いということ。

噛む力は強いが、歯そのものは人間よりも弱い。日常的にかたいものを噛んでいたら、気づかないうちに歯にヒビが入っていたり、折れているのも珍しくないらしい。おやつにしてもオモチャにしても、女性が両手で持ってしならないものは歯には悪いのだと、教えてもらって、今までの人生でいちばん後悔した。

それからはやわらかいオモチャで遊ぶようにして、しならないおやつはあげていない。

来年はついに12歳。いつまでも元気でいてね

来年には12歳になる。12歳や。末長く健康でいられるように、よりいっそう気をつけなくちゃ。

誕生日とうちにやってきた日を毎年inubot回覧板でお祝いできたのも、よいけじめとなっていた。連載が終わったあとも、私たちのパーティは続く。

アルバムをめくっていたら、きりがない!

写真と思い出があまりにも多い。どれもがふたつとない大切な写真だが、あぁ、やはり最後に手に取ってしまうのは、ささやかで、見慣れた日常風景だった。

一緒に迎える朝はかけがえのない宝物

BSで7:30から始まる朝ドラを見届けて、犬と散歩に出かける。

葉っぱや畑のビニールシート、土、塀の影に霜が降りていて、お日さんを反射して小さな光が生まれている。坂の途中に立つカーブミラーの鏡一面に水滴がついている。

朝の光をまとった犬の背中を追いかけるように、うしろをついていって、ふたりで坂をのぼる。奇跡が絶え間なく続いている。

朝が正しくやってくる。しかも、どうやら途切れたことがないらしい。説明できるはずの法則を、私は奇跡だと、毎朝おおげさに感動してしまうのだ。

犬が目を覚ましたら、朝がちゃんと来ている。それだけで、生活は讃歌するに値する。犬と暮らしていて、そう思うようになった。

「なんて手が掛かる子や」と、いつまでも困らせていてね。ひとりでどこにも行かないでね。大変なところもまるごと抱えて、これからも私は、犬と生きてゆく。

おはよう、おやすみ、大好きだよ。犬がとなりにいるから、今日も一日なんとか。