英語起業のカリスマ! 武智さやかさんインタビュー【後編】 ~「知っている」より「使える」を増やす! 武智流・英語学習メソッド~
カリフォルニアを拠点に独自の「英語最短学習法」を発信し続け、多くの学習者や起業家から熱烈な支持を受ける武智さやかさん。英語スキルを生かして幅広く活躍されている武智さんですが、現在に至るまでには、じつは遠く長い道のりがありました。武智さんご自身の英語学習の原点や、NHK英語学習との出会いについてうかがいつつ、その中で得られた実践的な学習法やアイデアを、前編・後編に分けてご紹介します。
「リスニング」が伸びると、すべてが伸びる!
――ご自身の経験から、いわゆる英語4技能のなかでも、特にリスニングを大切にしてこられたとうかがいました。なぜ、リスニングを重視されているのでしょうか。
前半でも壁にぶち当たったときの話をしましたが、大学卒業後に就職した会社を辞めて、通訳学校に通い始めたときにも、また大きな壁を感じていました。周りのレベルの高さに圧倒されて、「全然ついていけない」とすごく焦っていたんです。
そのとき試したのが、「リスニング」に立ち返ることでした。単に聞くだけではなく、シャドーイングやディクテーション、リプロダクションなどのリスニング練習(※)をひたすら繰り返しました。そうしたら、だんだん自信がついてきましたね。そんな実体験もあったので、私はリスニングを特に重視しています。
実際に、たくさんの生徒さんを見ていくなかでも、リスニングが伸び悩むと全体が伸び悩む、というケースは多いです。逆に、そこをがんばると話す力、読む力、書く力も伸びていく。
子どもが言葉を習得するときも、初めは耳からですよね。聞き取れない言葉は、書いたり話したりできませんから、どんなレベル感であろうと、まずリスニングに磨きをかけると英語力はグッと底上げされる! これは間違いないと思います。
●シャドーイング
英語音声を聞きながら、少し遅れて同じ内容をまねるように発話する練習方法
●ディクテーション
英語音声を聞いて、聞こえた内容を一語一句書き取る練習方法
●リプロダクション
英文を聞いたあと、音声を止めて自分で再現する(復唱する)練習方法
――オススメの「リスニング学習法」があれば、ぜひ教えてください。
1番大切なのは、「小さなまとまりを何度も聞く」ことです。リスニング学習をする方は多いですが、みなさん、圧倒的に「反復」が足りていない印象です。いろんな教材の音源をたくさん聞いているのに力がつかない、という悩みをよく耳にしますが、そういう方は大抵、1つの音源を数回しか聞かないで通り過ぎてしまっています。そうではなく、1つの教材、1つの文章。そういう「小さなまとまり」を繰り返し聞いて「自分のもの」にすることが大切なんです。
例えばNHKのテキストであれば、1レッスン分のディアローグを覚えてしまうくらい聞いてみてください。覚えてきたら、少し頑張ってシャドーイングやディクテーション、リプロダクションに挑戦してみるのもオススメです。広く浅くたくさんの教材をやるよりも、「小さなまとまり」を深く学び尽くす方が、英語力は伸びるんです。
「思い出す時間」が増えれば、自然と親しくなれる
――同じ教材を何度も聞くことが大切なんですね! とはいえ、そんなに何度も聞く時間は取れない!という場合は、どうしたらいいでしょうか?
そんなときは、いわゆる「ながら学習」がオススメです。家事や通勤、通学の途中に、リスニングをしてみてください。ただし、重要なポイントが1つあります。それは「ながら学習」では「新しいことをやらない」ことです。初めて聞く内容だと単なるBGMになってしまって、あまり学習効果は得られません。だから、「ながら学習」では必ず「復習」をやってください。すでに目で見て音読して、よく知っている文章やフレーズを、何度も反復する。これがポイントです。英語も人間関係と同じで、会う回数、思い出す回数が増えるほど、自然と親しくなれるものなんです。
また、何かをしながらのリスニングだけではなく、ちょっとした「すきま時間」の活用もオススメです。例えば私は、スマホのメモ欄に勉強中の単語をいくつかメモしておくようにしています。それを、おかずを煮込んでいる間などのちょっとした時間に見返すことで、同じ単語に何回も触れられるし、その都度思い出せますよね。一度勉強しても忘れるのは当たり前ですから、そんなふうに、すきま時間や、何かをしながらの時間を「思い出す時間」にあてて、同じ内容をできるだけ「深掘り」してみてください。そうすれば、着実に「使える」英語が増えていきます。
NHKのラジオ講座は「深掘り」にぴったり!
――「ながら学習」やすきま時間の活用を心がければ、無理なく「思い出す時間」を作れそうですね! ところで、「深掘り」にちょうどいい学習の分量ってどのくらいなのでしょうか?
それは人それぞれですね。でも、NHKのラジオ講座は毎日ほどよい分量で、無理なく「深掘り」学習を続けるのにぴったりだと思います。分量の面だけでなく、実際に使えるシンプルな表現が多く扱われていて、しかもそれが、異なるシーンで繰り返し出てくるのも魅力です。分厚い単語帳を必死で覚えて「知っている」単語を増やすよりも、実践的なディアローグに何度も触れて「深掘り」して、自分が「使える」単語や表現を増やす方が、言葉の習得においては効果的なんです。
「アメリカに移住する際に持ってきた英語学習書です。実家にある600冊以上の書籍の中から選んで持ってきました」(写真:本人提供)
私自身、これまで使ってきたNHKのテキストは今でも大切にとってあります。育児をしながら英検1級や通訳案内士の資格をとったときなどにも、古いテキストを何度も見返しました。自分がとことん深掘りした跡の残るテキストは、単に内容を振り返って勉強できるというだけではなく、「こんなに勉強してきたんだ!」という自信も呼び起こしてくれます。だから、今でもたまに見返すことがありますよ。
「不必要かもしれないもの」が人生を豊かにする
――まだまだお話をうかがいたいところですが、最後に、英語を学ぶ方、これから学ぼうとする方に向けて、メッセージをお願いします。
一番伝えたいのは、「英語は誰でも習得できる」ということです。センスや能力、意志の強さや年齢、そんなものは関係ありません。信頼できる教材を見つけて、継続できる環境を整えれば、誰だって英語を身につけることはできるんです。
実際、私も決して英語が得意だったわけではないし、意志が強いわけでもなかったと思います。でも、「祖父の応援に応えたい」とか、通訳ボランティアで人の役に立ちたいとか、そういう「誰かを喜ばせたい」という気持ちを柔らかい強制力として使いながら、その時々の自分に合った教材を絞り込んで深掘りしていくことで、英語を仕事にする道が開けました。
大人になって学び直しをする方にとっては特に、現状の生活に英語をプラスするというのは大変な変化だと思います。でも、もしモチベーションを保つのが難しくなりそうなときは、英語学習を「人生を豊かにするための投資」と考えてみてください。私たち日本人にとっては、英語って、できなければできないままでも生きていけるものじゃないですか。そんな「不必要かもしれない」ものだからこそ、敢えてそれに対して自分の時間やお金を使ってみることで、人生は豊かになっていくと私は思うんです。英語が習得できたら、世界は広がります。誰でも、何歳からでも! ぜひ、みなさんそれぞれ、一歩前へ歩みを進めてみてください。
――ご自身の体験から編み出された英語学習のアイデアやポイントをいろいろ教えていただいて、すぐにでも試してみたくなりました! 貴重なお話の数々、ありがとうございました。
香川県生まれ。2005年に大学卒業後、地方銀行、英会話スクールにて勤務。その間に英検1級、全国通訳案内士資格等を取得し、2016年に英語指導、通訳案内、翻訳業で独立。2021年からせとうち観光専門職短期大学にて教べんを執り、同時に大人向けの英会話オンラインスクールを運営。その後、英語を仕事に生かしたい方に向けたビジネススクールも開講し、現在はカリフォルニアを拠点に活動中。著書に『語学書ベストセラー100冊を研究して「最強の英会話本」を作ってみました。』(Gakken)がある。
取材・文 安倍まり子
写真 原田 翔太

