暑い夏の日を生き抜くにはエアコンで屋内を冷やすことが必要不可欠ですが、時にはエアコンが「シックハウス症候群(Sick building syndrome)」と呼ばれる症状群を引き起こす可能性もあります。イギリスのレスター大学で臨床微生物学の准教授を務めるプリムローズ・フリーストーン氏が、一体なぜエアコンがシックハウス症候群を引き起こすのか、シックハウス症候群を防ぐにはどうすればいいのかについて解説しました。

Can air conditioning really make you sick? A microbiologist explains

https://theconversation.com/can-air-conditioning-really-make-you-sick-a-microbiologist-explains-260648



シックハウス症候群とは、特定の建物内にいる時に生じる頭痛・めまい・倦怠(けんたい)感・鼻づまり・せき・発疹といった症状の総称です。一般に、新築の住居などで使用される化学物質が原因とされますが、エアコンの効いたオフィスや病院に長時間滞在することでも発症する場合があるとのこと。

インドで行われた研究では、エアコン完備のオフィスで1日6〜8時間働く健康な成人200人と、エアコンのないオフィスで働いた健康な成人200人を比較しました。その結果、エアコンのあるオフィスで働いたグループは2年間の研究期間中、より多くシックハウス症候群の症状を経験しており、特にアレルギーの有病率が高いことが判明。また、エアコンのあるオフィスで働いた人々は肺機能が低下しており、欠勤率も高かったと報告されています。他の研究でも、エアコン完備のオフィスで働く人々はシックハウス症候群の発症率が高いことが確認されています。

エアコンがシックハウス症候群を引き起こす原因のひとつは、エアコンの機能不全にあると考えられています。エアコンが正常に機能していない場合、本来であればフィルターなどに捕らえられるはずのアレルゲンや化学物質、浮遊微生物が空気中に放出されてしまうとフリーストーン氏は指摘しました。



また、故障したエアコンは洗浄剤や冷媒から生じる化学物質の蒸気を建物内に放出することもあります。これによって広がる「ベンゼン」「ホルムアルデヒド」「トルエン」といった化学物質は有害であり、呼吸器系を刺激する可能性があるとのこと。

適切にメンテナンスされていないエアコンには、レジオネラ症を引き起こすレジオネラ・ニューモフィラなどの病原体が繁殖するリスクもあります。レジオネラ・ニューモフィラは浴槽やエアコンといった水分の多い環境で増殖する可能性があり、レジオネラ症にかかると肺炎やインフルエンザに似た症状が現れ、時には命を脅かす危険もあります。

病院の換気システムを対象にした研究では、水分の多い場所で繁殖する「コウジカビ属」「アオカビ」「クラドスポリウム」などの真菌がエアコン内で繁殖しやすいことがわかっています。これらの真菌が引き起こす感染症は、免疫が弱い人や未熟児などに重篤な症状を引き起こす場合があるとのこと。

中国の幼稚園では、トイレに備え付けられていたエアコンが原因でノロウイルスが流行してしまったという事例も報告されています。ノロウイルスは通常、感染者や汚染された表面との接触によって感染しますが、このケースではノロウイルスを含むエアロゾルがエアコンによって拡散し、多くの児童が感染したと考えられています。

エアコンが感染症のリスクを高めるもうひとつの理由としては、エアコンが室内の湿度を下げ、外気よりも乾燥した状態にするという点が挙げられます。湿度の低い環境に長期間いると、鼻や喉の粘膜が乾燥してしまい、細菌などの侵入を防ぐ能力が低下してしまうことがわかっています。



メンテナンス不足のエアコンはシックハウス症候群を引き起こす一方、適切にメンテナンスされたエアコンは、新型コロナウイルスを含む空気中のウイルス拡散を防ぐこともわかっています。

フリーストーン氏は、「エアコンは空気中の汚染物質・カビの胞子・細菌・ウイルスをフィルターで除去し、室内の空気中に侵入するのを防ぐように設計されています。しかし、フィルターの老朽化や汚れ、またはシステムの清掃が不十分だと、この保護機能は低下します。エアコンの適切なメンテナンスは、エアコン関連の感染症の予防に不可欠です」と述べました。