記事のポイント
ヤンキーキャンドルが若年層との関連性を高めるためロゴ刷新や新香料の導入を実施した。
自社チャネルで限定商品を強化し、将来的にはラグジュアリーラインの展開も予定している。
香りを軸にしたライフスタイルの訴求へ転換し、伝統と進化の両立を図っている。


ヤンキーキャンドル(Yankee Candle)は2025年7月、若年層の買い物客との関連性を再獲得し、売上減少を反転させるべく、新たなリブランディングを発表した。これは大規模な再成長戦略の一環である。

今回のリブランディングでは、新しいロゴとワックスの新配合が導入された。さらに、マーケティングの強化や店舗への投資といった取り組みも舞台裏で進められている。

ヤンキーキャンドルの親会社であるニューウェル・ブランズ(Newell Brands)で昨年夏にホームフレグランス部門のシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーに就任したアーロン・スワート氏は、Modern Retailに対し、売上の低迷や時代遅れのブランドイメージ、そして成長のために若年層への訴求が不可欠であることから、今回の再ローンチは必然だったと語っている。

50年以上続くブランドの歩みと変遷



同社は1969年にマイケル・キトリッジ氏によって創業された。およそ30年間にわたりキトリッジ氏のもとで経営されたのち、1999年に上場を果たした。その後2007年にマディソン・ディアボーン・パートナーズ(Madison Dearborn Partners LLC)によって買収され、プライベート・エクイティの領域へと舵を切った。

2013年にはジャーデン・コーポレーション(Jarden Corporation)に売却され、2016年にニューウェル・ブランズがジャーデンを買収したことで、現在の体制へと至っている。

「レガシーブランドの刷新は綱渡りのようなものだ」とスワート氏は語る。ヤンキーキャンドルは50年以上の歴史を持つブランドとして、信頼性と親しみやすさを損なうことなく、時代遅れの印象を払拭する必要があった。

今回の刷新では、ガラスジャーのラベルを大きくして香りのイメージをより前面に押し出した。さらに、ワックスの配合を変更することで、よりクリーンな燃焼と豊かな香りの広がりを実現した。

一方で、象徴的な丸いジャーや太くカーブした蓋、90種類以上におよぶ香りのポートフォリオ、そして220を超える直営店といったブランドの核は維持される。

「10年間、我々はパッケージを一切手直ししてこなかったが、そのあいだに世界は大きく変わっていた」とスワート氏はModern Retailに語る。

「旧パッケージには多くの人が感情的な愛着を抱いていた。だからこそ変更には慎重を要した。だが、進化しなければ時代に取り残されてしまうという強い危機感があった」。

変化する市場とブランドの立ち位置



ニューウェル・ブランズによれば、米国のキャンドル市場はおよそ46億ドル(約6680億円)規模に成長している。ヤンキーキャンドルの主な顧客層は中価格帯の製品を好む層であり、ディプティック(Diptyque)やジョー・マローン(Jo Malone)といった高価格帯ブランドよりも手頃だが、ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)といった卸先での販売価格は15〜35ドル(約2180〜5080円)と、プライベートブランドに比べれば高価格帯に位置づけられている。

ニューウェル・ブランズは、グレコ(Graco)、コールマン(Coleman)、シャーピー(Sharpie)など50以上のブランドを展開しているが、ヤンキーキャンドル単体の売上は開示していない。ただし、過去6四半期以上にわたる決算報告では、チェサピーク・ベイ(Chesapeake Bay)やウッドウィック(WoodWick)を含むホームフレグランス部門のコア売上が減少していることが明らかになっている。

自社チャネル強化とラグジュアリー展開の構想



ヤンキーキャンドルの再ローンチは、単なる見た目の刷新にとどまらない。舞台裏では、直営店や公式ECといった自社チャネルを活用し、シーズナル商品や限定商品の展開を一層強化していく予定である。

2023年には売上の約12%が限定商品によるものだったが、2024年にはこれが30〜35%に達する見込みだ。さらに将来的には、ディプティックやジョー・マローン、ネスト(Nest)といった高価格帯ブランドと競合するラグジュアリーラインの立ち上げも視野に入れている。

店舗戦略とブランド体験の再設計



スワート氏によれば、ヤンキーキャンドルの直営店舗は現在も利益を上げており、今後はトレンド性の高い商品をロイヤルユーザーに届けるための重要なチャネルとして位置づけていくという。契約満了を迎える一部店舗については、従来のショッピングモールから、屋外型ショッピング施設やライフスタイルセンターへの移転も検討している。

「ブランドのエクイティ(資産価値)を最大限に表現するには、自社チャネルがもっとも忠実にブランドを体現している必要がある」とスワート氏は語る。

モダン化に向けたマーケティングとオーディエンス戦略



マーケティング会社OBIクリエイティブ(OBI Creative)のCEO兼創業者であるメアリー・アン・オブライエン氏は、ヤンキーキャンドルのようなレガシーブランドが現代化を図る際には、ブランドの伝統を活かしたアプローチが効果的だと指摘する。ただし、ロゴやラベルを変えるだけでは不十分であり、新たな市場や販路の開拓も重要な要素になるという。

オブライエン氏は、ターゲットやウォルマート、Amazonに特化したインフルエンサーとの連携を強化し、ソーシャルメディアでの認知を高める戦略を提案する。また、ギフトガイドや「ベスト・オブ」リストへの掲載を通じて、1990年代育ちで可処分所得を持つ世代に再びアピールできると述べている。

ブランドの継承と次世代への橋渡し



店頭への集客施策としては、ユニークで特別感のある香りを打ち出した限定ラインの展開が有効だとされている。オブライエン氏は「ヤンキーキャンドルは、すでに築き上げてきたブランドエクイティを活かし、ラグジュアリーラインや手の届くラグジュアリーとして位置づけることで、オーディエンスを広げることができる」と語る。

さらにヤンキーキャンドルには、長年にわたってブランドを支持してきた顧客が存在するという強みがある。こうした顧客層の信頼は、ブランドの価値を次の世代へと受け継ぐ力になる。

「母はヤンキーキャンドルしか買わない。では母はどうやって私に、あるいは、私の娘にそれを受け継ぐ?」とオブライエン氏は語る。長年愛されてきたブランドが世代を超えてつながっていくためにも、今こそその魅力を新たなかたちで表現していくことが求められている。

ホリデーシーズンに向けたプロモーションとブランドの核



タイミングとして、今回のリブランディングは業界でもっとも重要な時期を前に行われた。全米キャンドル協会によれば、年間売上の約35%がクリスマスやホリデーシーズンに集中する。

スワート氏によれば、ヤンキーキャンドルは30代の消費者を狙い、CTVを含む全国メディアキャンペーン、ソーシャルメディア、インフルエンサーマーケティングを展開するという。キャンペーンには女優ブリタニー・スノウも起用し、アップルやパンプキンといった季節の香りも訴求する。

これまで単なるキャンドルのビジュアルに頼っていたが、今後はよりライフスタイルに根ざしたビジュアルを取り入れる方針だ。

「香りの体験」に込めたブランドの再定義



さらに、新たなタグライン「Every Scent Tells a Story(すべての香りには物語がある)」もマーケティングに導入。バニラカップケーキ、フレッシュカットローズ、スイカなど、香りが人々の記憶と強く結びついていることを訴求する。

「クリスマスでも、夏でも、お祝いでも、ひとりの静かな時間でも、ヤンキーキャンドルはその物語を演出できる。香りが記憶において果たす役割はそれほど特別だ」とスワート氏は語る。

同時に、これまで培ってきたブランドの評判やエクイティを損なわないよう慎重さも求められた。ヤンキーキャンドルは、消費者調査やフォーカスグループを複数回実施し、人々が同ブランドに何を求め、何が刷新可能かを見極めた。

なかでも議論を呼んだのが「ヤンキー(Yankee)」というブランド名を継続するか否かだったという。しかし最終的に、「この名前はあまりにもアイコニックすぎて手放すわけにはいかない」という結論に至った。また、蓋付きのガラス瓶や香りの構成に対しても、多くの顧客が強い愛着を示した。

「香りこそが主役であるという点に変わりはない。必要だったのは、その香りを取り巻く体験の再構築だった。パッケージはシンプルに、ラベルは刷新し、写真表現も見直した。しかし、『中身』には手をつけなかった」とスワート氏は語る。

[原文:Yankee Candle is rebranding to regain relevancy amid sales declines

Melissa Daniels(翻訳、編集:藏西隆介)