『じゃあ、あんたが作ってみろよ』©TBS

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 10月期のTBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』で、夏帆が竹内涼真とともにW主演を務めることが発表された。

参考:夏帆×竹内涼真が夫婦役でW主演 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』10月期TBSで放送決定

 この“火曜10時枠”といえば、その時代を生きる女性たちのリアルを描くことで知られ、ヒット作を連発中。今や、アラサー女性俳優にとって、本格派への登竜門的な枠にもなっている。2016年には、言わずと知れた大ヒット作『逃げるが恥だが役に立つ』で、新垣結衣が氷河期世代の“こじらせ女子”を表現。翌2017年には、『あなたのことはそれほど』で、波瑠がモラハラ夫を持つ不倫妻に。2019年『わたし、定時で帰ります。』では、吉高由里子がブラック企業に勤めるOL。2020年『私の家政夫ナギサさん』では、多部未華子が家事が苦手なキャリア女性を。2025年『西園寺さんは家事をしない』では松本若菜が一軒家に住む独身女性を演じて、それぞれブレイクしている。そこに、夏帆も仲間入りするというわけだ。

 夏帆が俳優として飛躍した作品といえば、15歳の時に初主演した映画『天然コケッコー』(2007年)だろう。くらもちふさこの名作漫画を、『リンダ リンダ リンダ』(2005年)などの山下敦弘監督が映画化している。物語は、過疎地の学校に東京から美形の転校生・大沢広海(岡田将生)がやってくるところから始まる。夏帆が演じたのは、のんびりした田舎娘の中学生・右田さよ。大沢との出会いをきっかけに、都会への憧れや恋心を知ることになり、子どもから大人へと時間がうつろっていく。廃れていく田舎の町、廃校になる学校、いずれやってくる家族や友人との別れに向き合うことになり、さよは大きな戸惑いの中にある。思春期独特の繊細で微妙な心の揺らぎを表現しなければならず、かなりの難役だったのではないだろうか。監督の山下は起用理由をこう述べる。

「候補の子たちの中で夏帆はお芝居が上手なタイプではなかった。最初に5歳の女の子(宮澤砂耶)がさっちゃんを演じることが決まっていたので、彼女に来てもらいエチュードをやったんです。そのときほかの子たちはさっちゃんをなだめてうまくまとめるんですけど、夏帆は対応できてなかった。その『どうしよう、どうしよう』となっている姿がそよに合っていると思い、脚本の渡辺あやさんたちと相談して決めました」(※1)

 大袈裟なことは起こらないが、日常生活の中で、なんとなく不機嫌だったり、かと思うとやたらにはしゃいだり。そんな不安定な心の機微を、夏帆は自分のそのままであるかのように演じていた。その自然さは、作品への深い理解があったからなのかもしれない。観客も映画関係者もその演技に魅了され、この作品で夏帆は、第31回日本アカデミー賞新人俳優賞、第32回報知映画賞新人賞、第29回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞など、主要な新人賞を総なめにしている。

 その後は、清純派という自らのイメージを打ち破るような役に挑戦していく。2014年の映画『パズル』ではサディスティックな女子高生役に挑み、『みんな!エスパーだよ!』(2015年)では、ギャル風のキャラクターをコミカルに演じ、幅広い役柄を自在にこなせることを証明した。

 そして2015年、是枝裕和監督の『海街diary』では、千佳役を好演。明るく愛嬌のある役柄の裏に、複雑な家族関係への思いを抱える女性を丁寧に表現して、第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞している。

 近年の代表作といえば、2022年のドラマ『silent』(フジテレビ系)だろう。主人公の青羽紬(川口春奈)と佐倉想(目黒蓮)は、高校の同級生カップルだったが、佐倉は難聴を発症して姿を消してしまう。夏帆は、佐倉が大学で出会った聴覚障害のある桃野奈々という役。佐倉とぶつかりながらも交流を深め、いつしか彼女のような存在になっている。しかし、桃野は佐倉の心に紬がいることに気づいてしまう。その切ないシーンでの演技を、ライターの佳香は、こう評する。

「夏帆さんは目で語りかける人」「想のことを恋慕っているのが視線からでもかなり伝わってきました。(6話の)ラストシーンで携帯を耳に当てて、想の顔を覗き込む『私の気持ちに気づいてよ』と言わんばかりのあの表情は圧巻で、息を呑みましたね。夏帆さんの凄みでした」(※2)

 手話で話す、声のない役は、夏帆の魅力をより際立たせたと言ってもよい。第114回ザテレビジョンドラマアカデミー賞や東京ドラマアウォード2023で助演女優賞を獲得し、改めてその演技力が評価された。

 今回発表されたTBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』で、夏帆が演じるのは、「献身的で料理上手な彼女の山岸鮎美。ハイスペックな男性と結婚し安定した人生を送るために努力を惜しまず、“モテ”に全ベットしてきた女性」(※3)だという。常に作品への解像度が高く、役への理解度も高い夏帆が、このドラマ枠で、どんな新しい女性像を作り上げてくれるのか、期待が高まる。

参照1. https://natalie.mu/eiga/news/2583102. https://realsound.jp/movie/2022/11/post-1185284.html3. https://realsound.jp/movie/2025/07/post-2099466.html(文=尾崎真佐子)