『ジョン・ウィック』新作『バレリーナ』北米公開で見えた課題 『リロ&スティッチ』がV3
実写版『リロ&スティッチ』強し。6月6日~8日の北米映画週末ランキングは、3週連続で『リロ&スティッチ』が首位を守った。週末興収は3250万ドルで、前週比マイナス47.4%と変わらず堅調。北米興収3億3579万ドル、世界興収7億7259万ドルと、まずは8億ドル突破が直近に迫っている。
参考:『リロ&スティッチ』北米V2、配信&グッズ展開が奏功 『ベスト・キッド』新作は思わぬ苦戦
これに敗れたのが、『ジョン・ウィック』シリーズ初のスピンオフ映画『バレリーナ:The World of John Wick』だ。北米3409館で週末興収は2500万ドル、R指定のアクション映画として見れば決して悪くないものの、シリーズでは下から2番目のオープニング興収となった。
問題は、ライオンズゲートが本作に課していたハードルがもう少し高かったことだ。本作は3週間前の段階で興行収入3500万ドルが期待されており、この通りになっていれば『リロ&スティッチ』を破って首位発進だったのである。ところがその後、予測値は3000万ドルに下方修正され、現実の数字はそれよりも低かった。前週の『ベスト・キッド:レジェンズ』と同じ現象である。
いったい何が起きているのか……と過剰にシリアスになる必要はない。端的に言えば、『ベスト・キッド:レジェンズ』も『バレリーナ』もスタジオ側が期待したほどの求心力をそなえていなかったのである。『コブラ会』に熱狂したファンは新たな主人公に関心を示さず、キアヌ・リーブスのアクションを愛する観客はアナ・デ・アルマスが主演の新たなストーリーにさほど注目しなかったのだろう。
Deadlineは興味深い分析をしている。『バレリーナ』の数字は近年の女性アクション映画では悪くなく、『マッドマックス:フュリオサ』(2024年)の2632万ドルや『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)の2852万ドルに比肩するものだと。アイコニックな男性主人公のフランチャイズから派生した女性スピンオフとして、本作はポジションも興行の苦戦も『フュリオサ』と似ている。女性主人公のガンアクション映画が配信プラットフォームでいくつも製作されている今、宣伝レベルでうまく差別化できなかった可能性もありそうだ(たとえジョン・ウィック=キアヌ・リーブスが予告編に登場していても)。
もっとも、実際に映画館へ足を運んだ観客からは高い評価を得ており、Rotten Tomatoesでは批評家スコア75%に対して観客スコアは93%。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」と、前作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)には及ばないものの、2作目・3作目と同等の評価を得ている。
製作費は9000万ドルと控えめで、しかも報道によると海外配給権の売り上げが予算の大部分をカバーしているという。したがって劇場興行で稼ぎ出すべき金額は大手スタジオのフランチャイズ映画よりも低そうだが、現時点で北米の最終興収は8000万~9000万ドルとの予測。現時点で海外興収は2600万ドル、こちらの数字をいかに伸ばせるかも問題だ。
確かに言えるのは、本作がフランチャイズの分岐点となりうることだ。ライオンズゲートはドニー・イェンが主演・監督を務めるスピンオフ映画や、前日譚を描くアニメーション映画も企画中。これらを『ジョン・ウィック』第5弾までのつなぎにする以上、逆に言えば、スピンオフによってシリーズのブランド性を損なうわけにはいかないのである。
日本公開は8月22日。『ジョン・ウィック』人気の高い日本では、北米公開で見えてきた課題を克服することができるか?
今週は、トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が第3位にランクダウン。第4位は公開2週目の『ベスト・キッド:レジェンズ』で、週末興収870万ドル、前週比マイナス58%とやや大きめの下落を示した。世界興収7404万ドルという数字は、わずか4500万ドルの製作費を鑑みてもまだ課題が大きい。
第6位にはウェス・アンダーソン監督最新作『The Phoenician Scheme(原題)』が前週の第14位から大幅ランクアップ。北米拡大公開で興行収入は約700万ドルとなった。本作はベニチオ・デル・トロ主演のスパイブラックコメディで、トム・ハンクスやベネディクト・カンバーバッチ、ブライアン・クランストン、スカーレット・ヨハンソンらが出演。Rotten Tomatoesでは批評家79%・観客71%、CinemaScoreでは「B-」評価だった。日本公開は9月19日。
そのほか、第8位『Dan Da Dan: Evil Eye(原題)』は、日本の人気テレビアニメ『ダンダダン』第2期第1話の劇場公開版。海外市場では劇場公開が随時開始されており、北米では観客の80%が18~34歳という若者たちである。
北米市場全体の週末興収は、『バッドボーイズ RIDE OR DIE』が公開された前年比プラス11%。ライオンズゲートにとっては不本意でも、『バレリーナ』の公開は映画界にとっての追い風となったようだ。このあと、6月には実写版『ヒックとドラゴン』や『28年後...』、さらに『F1/エフワン』などが登場するサマーシーズンはまだまだこれからだ。
【北米映画興行ランキング(6月6日~6月8日)】1.『リロ&スティッチ』(→前週1位)3250万ドル(-47.4%)/4185館(-225館)/累計3億3579万ドル/3週/ディズニー
2.『バレリーナ:The World of John Wick』(初登場)2500万ドル/3409館/累計2500万ドル/1週/ライオンズゲート
3.『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(↓前週2位)1500万ドル(-44.9%)/3496館(-365館)/累計1億4921万ドル/3週/パラマウント
4.『ベスト·キッド:レジェンズ』(↓前週3位)870万ドル(-57.1%)/3809館(+50館)/累計3544万ドル/2週/ソニー
5.『Final Destination: Bloodlines(原題)』(↓前週4位)650万ドル(-40.4%)/2867館(-267館)/累計1億2356万ドル/4週/ワーナー
6.『The Phoenician Scheme(原題)』(↑前週14位)625万ドル(+1015.1%)/1678館(1672館)/累計698万ドル/2週/Focus Features
7.『Bring Her Back(原題)』(↓前週5位)352万ドル(-51%)/2425館(-24館)/累計1411万ドル/2週/A24
8.『Dan Da Dan: Evil Eye(英題)』(初登場)309万ドル/1085館/累計309万ドル/1週/GKIDS
9.『罪人たち』(↓前週6位)291万ドル(-44.8%)/1518館(-620館)/累計2億7263万ドル/8週/ワーナー
10.『サンダーボルツ*』(↓前週7位)250万ドル(-47.8%)/1955館(-565館)/累計1億8649万ドル/6週/ディズニー
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年6月9日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W023/https://variety.com/2025/film/box-office/john-wick-ballerina-box-office-opening-weekend-lilo-stitch-rules-1236422459/https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/ballerina-opening-office-lilo-stitch-1236258585/https://deadline.com/2025/06/box-office-ballerina-lilo-stitch-1236425576/
(文=稲垣貴俊)

