岸田退陣・自民大敗に追い込んだ“赤旗砲” 2000万円問題スクープの舞台裏 編集長「問題意識を持つかが大事」
自民党は先日の衆院選で、「裏金」「2000万円問題」によって議席を大幅に減らした。“赤旗砲”によるスクープの影響が指摘されるなか、しんぶん赤旗日曜版の山本豊彦編集長は、「産経新聞は『大敗』と書いた。朝日新聞も『いよいよ終えんが始まった』。なってみると『あぁそうか』と思うが、衝撃を受けた」と語る。
共産党の機関紙「赤旗」は選挙終盤、裏金事件で非公認となった候補が代表を務める支部への政党交付金2000万円支給問題を報じた。裏金問題の報道は、2024年度のJCJ(日本ジャーナリスト会議)賞の大賞に選ばれている。
山本氏は「選挙中は、他のメディアはなかなかスキャンダルを打てないが、『赤旗』は関係なく打てる」と説明する。赤旗がスクープして、他社が後追いしない記事も多いと言うが、「今回の2000万円問題は他紙が追いかけてくれた。だから世論になった」と指摘した。
これまでも赤旗は、2020年度は安倍晋三元総理の「桜を見る会」私物化問題でJCJ大賞を受賞。2021年度には菅義偉元総理の「学術会議人事介入問題」でも賞を受賞するなどスクープを連発。そして今回の裏金問題は、2022年の“赤旗砲”を発端に、岸田文雄前総理の退陣から、自民大敗まで及んだ。
裏金問題をめぐっては2023年12月、宮澤博行元衆院議員が「3年間で140万円」と告白し、大きな話題を呼んだ。山本氏は、この発言を「非常に大事な告白だ」と評価する。「自民党は安倍派、もっと言うと個人の問題にしているが、『きちんと自民党全体の問題として解明して』というのが我々の主張だ。裏金問題の真相究明はやらないといけない」と協力を呼びかけた。
投開票を間近に控えた10月23日、自民党の裏金事件で非公認となった候補が代表を務める支部に、政党交付金2000万円が振り込まれたと、赤旗が報じた。編集部は、森山裕幹事長から支部の会計責任者宛に送付した振込通知書を独自入手。非公認候補が代表の支部に確認すると、2000万円の振り込みを認めたという。
森山氏は「党の勢力拡大のために配布したもので、候補者に支給したものではない」とコメント。裏金事件で非公認となった萩生田光一元政調会長は動画で、「今回の選挙費用には使用していない。突然このような資金を振り込まれても、正直ありがた迷惑な話だ」と発言した。
このスクープは、ある小さな“気づき”が発端だったという。「自民党が選挙の時期に、政党助成金から公認料や活動費を出している。それは誰もが知っているが、『当然だよね』で終わるのか、『非公認の人はどうしているのか』と問題意識を持つかだ」と、山本氏は語る。
とある共産党候補が、裏金問題で非公認となった候補者のポスターに「自民党支部長」と書かれていると、Xに投稿した。この投稿から取材を重ねた結果、非公認候補者11人のうち、8人が自民党支部長のまま、2000万円が振り込まれていた事実が確認された。
しかし赤旗スクープの一方で、共産党は公示前の10議席から、8議席へと減らす結果となった。「世論を動かせたが、共産党は票を取れなかった。それはなぜかをよく考えないといけない。選挙の開票直後から赤旗の購読者が増えている。中には『裏金を暴いて2000万円もスクープしたのに、共産党が伸びていないから申し訳ない』と言ってくれる人もいて、すごく励みになっている」(山本氏)。
(『ABEMA的ニュースショー』より)