(※写真はイメージです/PIXTA)

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2024年物流問題と騒がれ、その渦中にいるトラック運転手。元々、全産業を下回る「給与水準」、ゆえに平均を下回る「年金見込み額」……さらに今年に入り「給与減」と踏んだり蹴ったりの様子。また業界的に人手不足は深刻化するばかりで、その影響は私たちの生活にも忍び寄っています。

トラック運転手のジレンマ…運ぶ荷物はそこにあるが、運ぶことは許されず

――もっと走りたいと思っても、いまはそうはいかないよね

地方の運送会社に勤める伊藤浩一さん(仮名・60歳)。法改正により、労働環境は改善されたものの、給与は残業が減った分だけ減額。正直、落胆の色を隠せないといいます。

【改正された改善基準告示の主な内容(2024年4月適用開始)】

・1日の休息時間

「継続8時間以上」→「継続11時間以内時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない*1」に変更

・1ヵ月の拘束時間

「293時間以内(労使協定により、年6ヵ月まで320時間まで延長可)」→「原則284時間以内(例外として年6ヵ月310時間以内*)」に変更

・1年の拘束時間

「3,516時間以内」→「原則3,300時間以内(例外として3,400時間以内*)」に変更。

*1:例外…宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、継続8時間以上(週2回まで)休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える

*2:労使協定により延長可「284時間超は連続3ヵ月まで」「1ヵ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める」

――まだまだ体力的にはまだまだ走れる。でも上限に達したらストップ。そこに荷物はあるのに、運んではいけない。ジレンマだよね

――大変ではあったけど、運べば運ぶほど稼げた時代が懐かしい

忙しいときは家に戻ることなく、休日でもトラックを走らせていたという伊藤さん。家族のために……を言い訳に仕事ばかりしていたからでしょうか、結婚生活は10年ほどで破綻。「今は気楽なひとり身だよ」と笑います。

法令順守で仕事は楽になったものの、人手不足は深刻化。ドライバーが足りない状態が続くうえ、燃料費は高騰。しかし荷主が強い構造から価格転嫁は一向に進まず、会社は疲弊するばかりだといいます。

――会社は厳しそうだね。正直、いつ潰れるかわからない。今仕事を失ったら厳しいから、あともう少しだけ働かせてほしいね

トラック運転手…「低収入」「低年金」、さらに「給与減」の三重苦

今は会社が潰れては困る……そう伊藤さんがいうのは、65歳から受け取れるだろう年金がはっきりいって少ないから。

――「ねんきん定期便」!? あれに書いてあったのは月13万円ほど。40年間走ってきてそれだけだから、はっきりいってガッカリしたよ

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均は14万3,973円。65歳以上男性に限ると16万3,875円、女性に限ると10万4,878円。年金月13万円というと、男性の厚生年金受給者の下位20%を下回ります。

――もう少し働いてお金貯めないとさ、老後なんて迎えてらんないよ

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、全産業の平均年収は507万円。対し、大型トラック運転手の年収は485万円、中小型トラック運転手は438万円。全産業平均と比較して、大型トラックで4%、中小型トラックで14%低くなっています。

一方で法改正前の年間労働時間は全産業平均が2,136時間。対し、大型トラック運転手は2,544時間、中小型トラック運転手で2,508時間。全産業平均より350〜400時間、月間30〜33時間ほど長くなっています。長時間労働でありながら平均以下……これがトラック運転手の現実でした。さらに法改正により、労働時間&給与減。以前は、「走るだけ走れば儲かる」という世界だったので、あえて参入してくる人も多くいましたが、今はそれも封じられ、単に低収入の業界に甘んじているという状況。

――給与があがる気配もないし、夢もない。それでいて、わざわざキツイ仕事を選ぶ人なんていない

担い手不足により、業界では高齢化が進みます。ドライバーの平均年齢は50.6歳。全産業平均43.9歳を6歳以上も上回ります。年齢分布をみていくと、「50代」が30.3%、「40代」が25.4%、「60代」が19.4%。5人に1人は60代以上、一般企業であれば定年超えです。

低年収で低年金、さらに今年に入り給与減と、踏んだり蹴ったりのトラック運転手。その先には、「いつまでたっても荷物が届かない」という未来も現実味が増し、社会インフラの崩壊を指摘する専門家も。私たちもそろそろ「配送料アップ」を覚悟しなければならないタイミングに来ています。

[参考資料]

厚生労働省『賃金構造基本統計調査』

総務省『労働力調査』