「大腸がんの検査費用」はどれくらい?検査内容や検査の流れも解説!【医師監修】

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大腸は消化された食べ物が通る最後の器官です。小腸から続く大腸は、1.5~2m程の長さがあります。

食べ物の水分を吸収するのが、主な役割です。栄養の消化吸収は小腸で済まされており、大腸では水分を吸い取って便を作ります。大腸の働きが低下すると、軟便や下痢になります。

そんな大腸にがんが発生する大腸がんは、検査費用にいくらかかるのでしょうか。費用と併せて検査内容や内視鏡検査の流れも解説しますので、検査前の参考にしてください。

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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

大腸がんとは?

大腸がんは結腸や直腸に発生します。良性ポリープからがん化するケースと、正常な粘膜から直接がんになるケースがあり、早期の段階では自覚症状がほとんどありません
進行した大腸がんに見られる症状では、便に血がついたり血が混じったりすることがあります。さらに進行すると、下痢や便秘、残便感やめまいなどの貧血の症状が現れます。
その他にも、お腹の張りや便が細くなるなどの症状もあるため、心当たりがある場合は早めに検査を受けるようにしましょう。さらにがんの進行が進むと、腸閉塞や嘔吐体重減少などの症状が現れることもあります。
大腸の粘膜にできた大腸がんは、進行を放置すると大腸の壁の深くにまで侵入し、壁の外まで広がるリスクがあります。すると、大腸の壁の中のリンパ液からリンパ節転移をしたり、血液に乗って肝臓などの別の臓器に遠隔転移したりします。
現れる頻度の高い便に血がつくなどの症状は、痔の症状にも似ているため、検査に行くのを躊躇してしまう人も少なくありません。しかし、放置してしまうとがんが進行したり、転移したりしてしまう可能性があります。気になる症状があれば、すぐに消化器科・胃腸科・肛門科などで受診するようにしましょう。

大腸がんの検査費用はいくら?

大腸がんの検査費用は、市区町村から案内される住民健診や職場から案内される検診などで自己負担額が変わります。自治体の検診の場合は、各自治体のホームページ、もしくはがん検診窓口から確認できます。
保険適用前の検査費用は、腫瘍マーカーを含む血液検査が7,200円(税込)、大腸内視鏡検査が20,000円(税込)です。また、胸部と腹部のCT検査は、全額自己負担の場合16,400円(税込)程度で受けられます。

大腸がんの検診内容

大腸がんの検査内容としては、検便や内視鏡検査などがあります。大腸がんの検査方法を正しく理解し、適切な検査を受けられるように検査内容を解説します。

便潜血検査

便潜血検査は便に血液が混ざっていないかを調べます。大腸がんやポリープがあると便に血液が付着するためです。よく知られる呼び方では、検便と呼ばれます。便潜血検査は通常2日分の便を採取します。
自覚症状のない大腸がんを調べる方法として広く実施されており、血液が検出された場合などは精密検査が必要です。要精密検査となった場合は、早めに大腸内視鏡検査を受けましょう。また、1回の検査では見つからないケースがあるため、毎年受けることが大切です。

全大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入して大腸全体を詳しく検査する方法です。検査中に病変が見られた場合は、部分的に採取して病理検査をすることもあります。
20分程度の検査で、一般的には大きな苦痛を伴わないのが特徴です。検査で大腸がんが発見された場合、がんが大腸粘膜の表面部分だけであれば内視鏡で取り除くことができます。

注腸検査(注腸造影検査)

注腸検査(注腸造影検査)では、肛門から細い管を挿入して薬と空気を注入し、X線写真を撮ります。大腸の壁にある病変やがんの大きさや位置、形などを調べる検査です。
検査の前に腸管内をきれいにする必要があり、前日から検査食を食べたり下剤を服用したりする必要があります。また、検査当日にも下剤を飲みます。

大腸CT検査(CTコロノグラフィ)

大腸CT検査(CTコロノグラフィ)は、通常のCTと比べてより大腸の粘膜面の病変まで精密に検査できる検査方法です。大腸にある病気の発見はもちろん、転移の診断まで行えます。
検査前に下剤を服用した処置が必要で、処置後に肛門から大腸CT検査(CTコロノグラフィ)専用の炭酸ガスを注入します。炭酸ガスでお腹を膨らませてCTを撮影しますが、炭酸ガスは腸管から短時間で吸収されるため、一般的に腹部膨満感は持続しません。検査時間は15分程度です。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査は、血液中のCEAやCA19-9を測定する検査です。CAやCA19-9は大腸がんの検査で測定する腫瘍マーカーです。腫瘍マーカー検査はがんの診断の補助や診断後の経過を観察するために実施されます。
しかし、がんがあっても腫瘍マーカーの数値が高くならないケースがあり、がんの有無や場所を腫瘍マーカーだけで調べることはできません。ほかの検査と併用されることが多く、それらの結果と合わせて医師が判断します。

大腸カプセル内視鏡検査

大腸カプセル内視鏡検査は、 小型カメラを内蔵したカプセルを飲み込み、腸管内部を進みながら内蔵の小型カメラで写真を撮る検査です。 この検査では消化管通過による痛みがありません。
また、麻酔や鎮静剤が不要で、放射線被ばくの心配もありません。大腸内視鏡を肛門から挿入しなくてもよいため、恥ずかしいや怖いなどの精神的負担も軽減されるでしょう。大腸内視鏡検査が施行困難で、過去に全大腸の検査が受けられなかった方が保険適用となります。

大腸内視鏡検査の流れ

大腸内視鏡検査を受ける場合、前日から食事に関する制限や下剤の服用などが必要です。当日の検査後まで注意するべきポイントがあるため、事前に流れを知っておきましょう。

検査前日の夜から絶食・下剤の服用

19時までや20時までなど、夕食を済ませておく時刻はクリニックによって前後します。また絶食を指示される場合もあるため、検査前日の夜の食事については、担当の医師の指示にしたがってください。
十分な水分補給が推奨されますが、飲めるものは水やお茶、スポーツドリンクなどに限られます。また、処方された下剤を指示どおりに服用しましょう。

検査当日に腸管洗浄液を摂取

検査当日に腸管洗浄液を摂取します。朝食は食べられません。検査の数時間前から腸管洗浄液を服用し、便が透明に近くなるまで排出します。腸管洗浄液を服用しているときに、腹痛や吐き気を感じた場合は、飲むのを中断して医療機関に相談しましょう。

大腸の動きを抑える薬を服用

排便状況を相談しながら、大腸内視鏡検査に移行します。検査着に着替えてストレッチャーに横になり、大腸の動きを抑える薬と鎮静剤を注射します。鎮静剤はウトウトするようなリラックスした状態になるため、楽に検査を終えることが可能です。

検査・ポリープ切除

大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入してがんやポリープなどを探します。このとき発見した切除できるポリープはその場で切除して、顕微鏡でより詳しく検査することもあります。何事もなければ、検査は10~30分程度で終了です。

30分~1時間休憩して帰宅(鎮静剤を使用した場合)

鎮静剤を使用した場合、検査後に30分~1時間程度休憩したら帰宅が可能です。休憩後に診察室で内視鏡検査の結果の説明があり、内視鏡写真や検査結果用紙を受け取れます。
検査時にポリープを切除した方には、別途切除後の過ごし方についての説明もあります。なお、鎮静剤を使用した検査の後は、バイクや車の運転はできません

大腸がんの検査費用についてよくある質問

ここまで大腸がんの検査方法・検査費用・検査の流れなどを紹介しました。ここでは「大腸がんの検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸内視鏡検査を受ける頻度はどのくらいですか?

中路 幸之助(医師)

大腸内視鏡検査は便潜血検査で要精検となった方や、大腸がんが疑われる自覚症状のある方が受けることの多い検査です。定期検診として受ける場合は、年齢や罹患歴によっても推奨される頻度が変わるため、一概にはできません。しかし、大腸がんの内視鏡治療や外科治療を行なった方や、10個以上もしくは20mm以上の大きなポリープを切除した方は、1年に1度は検査を受けた方がよいでしょう。ほかにも、過去に3~9個のポリープを切除した場合は3年ごとの検査が推奨されています。

大腸がんの治療方法にはどのようなものがありますか?

中路 幸之助(医師)

がんの治療方法には、次のようなものがあります。
・内視鏡治療
・外科治療
・化学療法
・放射線療法
一般的に、がんが粘膜の表層部分に留まり転移が見られない早期のがんでは、内視鏡治療が実施されます。粘膜の下層深部までがんが達している場合や、リンパ節転移が見られる場合に実施されるのが外科治療(手術)です。また、ほかの臓器への転移が見られる場合には外科治療、もしくは化学療法が選択されます。大腸がんは根治的治療ができれば、長期生存が見込めるとされる病気です。発見当初に根治的治療ができないとされた場合も、化学療法を経て根治的治療ができるようになるケースがあります。

編集部まとめ

この記事では、大腸がんの検査方法やよくある質問などを解説しました。大腸がんは早期であれば90%以上が完治するとされる病気です。

要精検とされた場合には、早めに検査を受けるようにしましょう。

大腸がんは早期の段階であれば、内視鏡治療が可能です。

しかし大腸の壁の外まで進行していたり、ほかの臓器への転移が見られたりする場合には、外科治療や化学療法が選択されます。

気になる症状がある場合は、早めに消化器科や胃腸科、肛門科のある医療機関で受診するようにしましょう。

大腸がんと関連する病気

「大腸がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

肛門がん

遺伝性腫瘍

また、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群、潰瘍性大腸炎やクローン病などの罹患歴がある方は、大腸がんになる可能性が高くなる可能性があります。併せてチェックしておくとよいでしょう。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は9個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

血便

貧血

めまい便秘

下痢

残便感

腸閉塞

嘔吐

体重減少

大腸がんは初期ではほとんど症状がありません。早期の段階で現れる、便の血の付着を見逃さないようにすることが重要です。

参考文献

大腸がん(結腸がん・直腸がん)について(国立がん研究センター)

大腸がんとは(国立がん研究センター中央病院)

大腸がん検診の検査方法(日本医師会)