見逃してしまいそうな微かな触れ合いが、思いもよらない幸せを呼ぶ……。人のつながりを描いた黒木華さん主演の映画「アイミタガイ」が11月1日(金)より全国公開。主人公・梓の親友を演じた藤間爽子さんが、カメラマンとしての役作りや映画の黒木さんとの共演について語ってくれた。

 

藤間爽子●ふじま・さわこ…1994年8月3日生まれ。東京都出身。三代目 藤間紫として日本舞踊紫派藤間流の家元を務める。女優としても活躍しており、ドラマ「マイファミリー」、「silent」などに出演。10月スタートのドラマ「つづ井さん」(読売テレビ)にて主演を務める。公式HP/Instagram

【藤間爽子さん撮り下ろし写真】

 

叶海は演じ甲斐がありそうだな、楽しみだなと思いました

──黒木華さん演じる梓の親友・叶海役で出演が決まったときの率直な心境からお聞かせください。

 

藤間 主演の黒木華さんとの共演は2回目で、お話をいただいたときにまたご一緒できることをすごくうれしく思いました。1回目は後輩役でしたが、役者として大先輩である黒木さんの親友を演じられることもうれしかったです。

 

──映画を拝見して、心が温かくなるような優しいお話だなと思いました。

 

藤間 脚本の前に原作を読んで、背中を押してくれるような優しい本だなと思いました。人と人とのつながりや思いやりといった、人間の良い部分がいろいろ描かれていてすごく温かい気持ちになる。叶海は最初の方で亡くなり、梓が立ち止まってしまい、再び動き出すきっかけになる役でもあるので、演じ甲斐がありそうだな、楽しみだなと思いました。

 

──叶海ははつらつとしていて、さらに施設の子供たちに贈りものをするようなとても優しい女性だなと思いました。藤間さんは叶海をどんな女性だと思いましたか?

 

藤間 中学時代にいじめられていた梓を助ける場面もあり、正義感が強く、行動力がある女性だなと思いました。その頃から好きだったカメラを自分の仕事にして、海外に行くことを夢見ている。外に意識が向いた強い女性でもあるけど、カメラで撮るのは日常のなんてことない場面だったり、人の温かい光景だったりして。そういう優しい部分も兼ね備えた女性なんだろうなって印象がありました。

 

カメラが欲しい熱が再燃して買いました(笑)

──街で見かけた人を楽しそうに撮る叶海が印象的でした。カメラマン役ということでしたが、どんな役作りをされましたか?

 

藤間 役作りというか、事前にできることといえば、これかなと思ってカメラマンの友人にカメラについていろいろ聞きました。基本的なカメラの持ち方を教えてもらいました。ケータイでパシャッと撮ったことしかなかったから、「(ファインダーを)右目で見るの? 左目で見るの?」みたいな感じで(笑)。カメラの持ち方から「普段は首にかけてるよ」とか、「一般的なカメラマンってこんな感じ」みたいな写真を友人が撮って送ってくれました。

 

──カメラマンの友達に基本から教えてもらえるのは心強いですね。

 

藤間 ありがたいです(笑)。現場でもスチールを撮ってくださるプロのカメラマンの方に、付きっ切りで教えてもらいました。「これ合ってます?」って聞いたりして。実際に持ってみると、「カメラってこんなに重いんだ!」って思いました。

(C)2024「アイミタガイ」製作委員会

 

──現場でカメラを持っているうちに、撮るのは楽しいなって思ったりしませんでした?

 

藤間 この撮影がきっかけで、カメラがすごく欲しくなりました。しかも先日撮影していた作品の現場でもカメラを持っている方が多くて。そこでまたカメラが欲しい熱が再燃して買いました(笑)。旅行先の景色や食べたものを撮ろうと思っています。

 

嘘がないのは華さんの人柄だったり、いつも自然体でいるからこそ

──黒木さんと一緒のシーンは気心の知れた親友同士の雰囲気でした。

 

藤間 華さんは気さくでとても話しやすいんです。この現場でもカメラが回っているとき以外は、ずっとおしゃべりしていました。映画のことだけじゃなくて、たわいもないことをずっと話して。本当に撮影が始まるギリギリまでおしゃべりしていたので、カフェで二人で話すシーンは、その延長で撮った感じでした。華さんは役者として大先輩ですが、緊張感や威圧感みたいなものが一切感じられないので、それが本当にありがたかったです。

(C)2024「アイミタガイ」製作委員会

 

──一緒にお芝居をして、黒木さんの素敵だなと思うところは?

 

藤間 いつも自然体。おそらく「こうしよう」と頭で考えるのではなく、そのときの相手から出るものを受けて、言葉を発していらっしゃると思うんです。だから何回か芝居することになったとしても、全く同じようなことはしない。そういうことがリアリティーにつながるんだなって思いました。華さんの芝居には嘘がなくて、「ここにいること」に無理がない感じがして。設定が現代でも、時代劇でもファンタジーでも、そこに嘘がないのは華さんの人柄だったり、いつも自然体でいるからこそなのかなって思います。

(C)2024「アイミタガイ」製作委員会

 

──中学時代の叶海と梓とのエピソードも素敵でした。

 

藤間 完成した作品を観たら、キラキラし過ぎて、私の中学時代とは思えないぐらいかっこいいと思いました。叶海の中学時代を演じた白鳥玉季さんがきれいで、スラっとして「同じ人物に見える? 大丈夫?」って心配でした(笑)。

 

──完成した作品を観て、好きだなと思ったエピソードを教えてください。

 

藤間 草笛光子さん演じる小倉こみちさんのエピソードです。こみちさんはピアノを弾くことにトラウマがあり、その理由を明かして最終的にピアノを弾くんです。草笛さんのお芝居がとても素敵で、ピアノを弾くシーンは感動しました。

 

人と人とがつながっていくことで、いま私たちはここにいる

──タイトルの「アイミタガイ」は、誰かを思ってしたことが巡り巡って見知らぬ誰かを救うという言葉だそうですが、とても素敵な言葉ですね。これが「アイミタガイ」かなと思う経験をされたことはありますか?

 

藤間 私もこの作品を通して初めて知って、こんな素敵な言葉が日本にあるんだって思いました。巡り巡って……、「人と人とがつながっていくことで、いま私たちはここにいる」という考え方だと思うんですね。そう思うと、私が今この仕事をしているのもそうなのかなって。この映画にめぐり合えたのも、そういうことがつながって、今返ってきているのかもしれない。例えば、この作品を観た方が、何かを感じ取ってくださって、他の人に優しくなれるかもしれない。人のつながりってそういうことが全部循環しているのかなって思います。

 

──ではここからはGetNavi webにちなんで、「モノ」や「コト」に関するお話をお聞かせください。最近ハマっているものはありますか?

 

藤間 ハマっているというか、おすすめしたいのは大谷翔平さんも使っているマットレスです(笑)。今年30歳になりまして、母に「何か欲しいものある?」と聞かれまして、誕生日プレゼントにマットレスを買ってもらいました。10年使えるらしいので、40歳まで使えるなと。

 

──やはり寝心地が違います?

 

藤間 その前に1年ほど使っていたマットレスが自分の体に合わな過ぎて、睡眠の質が悪かったんです。大谷さんが使っているものよりワンランク下ですが、疲れの取れ方が違う! 人間は一生の3分の1を寝ていると言いますからね。睡眠は大切にしたいですよね(笑)。

 

──なるほど! 疲れが取れるならちょっと高めでも欲しくなりますね。では趣味を教えてください。

 

藤間 旅行、舞台鑑賞、映画鑑賞。非日常を楽しむことが趣味かなと思います。私は家であまりダラダラしないですね。お出かけするのも好きです。

 

つながっている感じがするんです。本当にありがたいことだと思います

──2024年はどこか旅行されましたか?

 

藤間 年始に友達とイギリスとフランスに行きました。演劇旅というか、1日1本舞台を観ました。

 

──芸術や舞台演劇の本場って感じですね。

 

藤間 すごく楽しかったです。ミュージカルをやっている友達と一緒にミュージカルを観て、美術館に行って。国全体が芸術を大切にしている感じを受けました。

 

──これから行ってみたい場所はありますか?

 

藤間 頑張って行こうと思わないと行けない場所に行きたいです。近場は休みがあったらパッと行ってしまうので。目的はないけど、30歳のうちに親友とアフリカかフィンランドに行こうって約束をしています。30歳って節目じゃないですか。よく旅行する親友で、昨年はその友達とセブ島に行きました。

 

──旅行のお話を聞くと、藤間さんにも梓にとっての叶海みたいな親友と呼べる存在がいそうですね。

 

藤間 いますね。友達がいっぱいいるわけじゃないけど、親友と呼べる友人はいます。小学校が一緒で、小学校時代はそんなに仲良くなかったけど、中学から仲良くなりました。小学校からの親友は二人いて、大学時代に仲良くなった子もいます。

 

──3人も親友と呼べる人がいるなんて素敵なことだと思います。

 

藤間 今日も親友の1人と会います(笑)。そんなに頻繁に会っていなくても、何かあったときには気に留めてくれるから、つながっている感じがするんですよね。そういう人がいてくれるのは本当にありがたいことだと思います。

 

 

アイミタガイ

2024年11月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

【映画「アイミタガイ」からシーン写真】

(STAFF&CAST)
原作:中條てい「アイミタガイ」(幻冬舎文庫)
監督:草野翔吾
脚本:市井昌秀、佐々部清、草野翔吾
音楽:富貴晴美
配給:ショウゲート

出演:黒木華、中村蒼、藤間爽子、安藤玉恵、近藤華、白鳥玉季、吉岡睦雄 / 松本利夫(EXILE) 、升毅 / 西田尚美、田口トモロヲ、風吹ジュン/草笛光子

(STORY)
名古屋で働く梓(黒木華)と、大阪を拠点に活動するカメラマンの叶海(藤間爽子)。今は離れて暮らす二人は中学時代からの親友同士だ。帰省した叶海と会った梓はつい愚痴をこぼすが、叶海はネガティブになりがちな梓をいつも応援してくれる。ところがその直後、海外の撮影に旅立った叶海は、現地の事故で命を落としてしまう。

突然の事故で娘の叶海を失った朋子(西田尚美)と優作(田口トモロヲ)は、四十九日を終えても遺品のスマホを解約できずにいたが、そこには叶海の死後に届いた新しいメッセージの存在を知らせる通知が溜まっていた。すべての差出人は梓。叶海の不在を受けとめきれない梓は、これまで叶海と交わしてきたトーク画面に日々メッセージを送り続けていた。

 

(C)2024「アイミタガイ」製作委員会

 

撮影/映美 取材・文/佐久間裕子 ヘアメイク/坂本志穂(グラスロフト) スタイリスト/李 靖華