Luup

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 最近、よく見かけるのが公道をシューッと走る電動キックボードだ。大手事業者としては緑色のLUUPが知られており、大都市を中心に1万カ所以上のポート(駐輪場)がある。ちょっとした買い物や近場の通勤などに利用する客が増えているという。

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 運営する「Luup」は、2018年の創業で、CEOの岡井大輝氏は31歳。業績はというと年間約20億円もの赤字だが、なぜか永田町や霞が関とは相性がいい。

 創業翌年には甘利明氏をトップにした自民党の「マイクロモビリティ(電動キックボードなど)」の議連が誕生し、20年には警察庁が規制緩和に乗り出した。そして23年には改正道交法が施行され、免許が要らない「特定小型原付」、つまり電動キックボードが公道に姿を現した。何という早さであろうか。

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「交通畑出身の人ではない」

 そのLuupが10月16日、監査役として樋口建史氏を迎えると発表した。元警視総監である。警察のトップを務めたOBなら普通赤字のベンチャーには行かない。どんな人物なのだろう。警察庁の関係者が言う。

「樋口さんは警視庁の公安部外事第1課長や、公安総務課長などを経て警視庁副総監、警察庁生活安全局長から警視総監になった人です。だから、交通畑出身の人ではありません」

 最初から総監候補というわけではなかったが、注目されたのは、03年、警察庁刑事企画課長に就任したことだった。

「樋口さんは自民党の菅義偉氏に働きかけて、特殊詐欺などを防ぐための“インフラ”を整備したのです。当時は詐欺に使われやすい他人名義の携帯や銀行口座などが比較的簡単に作れた時代。それに先駆ける形で規制案をまとめ上げた。いわば“新しい犯罪”を防ぐ土台を作ったことが評価されたのです」(同)

 振り返れば、拙速などと批判を受けてスタートした電動キックボードは、案の定というべきか昨年7月からの1年間で約2万5000件が交通違反で摘発されるという事態になっている。

 そこで、樋口氏の役割をLuupに聞くと、

「樋口監査役には、今後これまで以上に交通違反者を減らし、また交通事故の発生を抑えるべく、交通ルールの周知や安全対策の強化について指導を賜りたいと考えております」(広報グループ)

 新しい乗り物の“お目付け役”を期待されているのだろうか。それにしても、これだけの大物を引っ張ってくる政治力。Luupもタダモノではない。

「週刊新潮」2024年10月31日号 掲載