◆米大リーグ ワールドシリーズ第4戦 ヤンキース11―4ドジャース(29日、米ニューヨーク州ニューヨーク=ヤンキースタジアム)

 3連敗で崖っぷちに追い詰められたヤンキースが、今シリーズ初勝利。奇跡の逆転世界一に望みをつないだ。1−2で迎えた3回にA・ボルピ内野手が、自身ポストシーズン初本塁打となる左翼への逆転満塁弾を放ち、A・ウェルズ捕手の右越えソロで追加点を奪うなど、若手の活躍でスイープを阻止。第5戦は、当地で30日(日本時間31日)に開催される。

 新星ボルピの一撃で、ヤンキースが息を吹き返した。1−2で迎えた3回2死満塁。ボルピは、2番手ハドソンの初球89マイルの内角低めのスライダーを狙い打った。打球速度107・6マイルの低いライナーが、左翼席に一直線。超満員の本拠地が、歓声と絶叫に揺れ、今シリーズ最高潮の熱気に包まれる中、本塁を踏んだボルピは、待ち受けたジャッジと空中で体をぶつけ合い、ベンチで手荒い祝福に迎えられた。

 「打球がフェンスを越えた瞬間、頭が真っ白になった。間違いなく人生で最高の瞬間だ」

 2019年ドラフト1巡目。遊撃守備の評価は高く、”ポスト・ジーター”とも言われる逸材。課題の打撃面でも大きく成長した。試合前、ブーン監督は「数字以上の実力者。打席内容の質が高い。地区シリーズから、打撃面でも適応し、メンタルも急成長した。打撃は非常に力強い」と力説した矢先。ベンチの期待に応える一発だった。

 マンハッタン生まれ。アッパーイーストで育った。イタリア系移民のボルピ一家にとって、ヤンキースは、「スポーツ以上の存在」(ボルピ)だった。大のヤンキースファンだった曽祖父が、第二次世界大戦から帰還した際、息子(祖父)は幼く、父親の存在を知らなかった。失われた時間をつないだのが、野球。毎日、父の膝に乗ってヤンキースのラジオ中継に耳を澄まし、親子の絆が生まれた。8歳のボルピ少年もまた、15年前、松井秀喜氏がMVPを獲得した2009年のパレードを、街頭で見ている。

 2019年のドラフト1巡目の23歳、ボルピが、満塁弾なら、6回にソロ弾で追加点を奪ったのは、翌年の同1巡目の25歳、ウェルズ。生え抜きコンビのアベック弾で主導権を握ると8回一死一二塁から、その2人が重盗成功。トーレスの右翼3ランのお膳立てをした。

 「ウェルズは親友どころじゃない。兄弟だ。マイナー時代から、最低の時も最高の時も時間を共有してきた」とボルピ。ヤンキースの有望若手コンビが、第5戦へチームの命をつないだ。