門脇麦が青春群像映画「止められるか、俺たちを」で演じたのは、ピンク映画界の鬼才・若松孝二の下で助監を務めた実在の女性
■若松孝二監督と縁のある人々から、若松イズムを受け継いだ門脇麦が熱演
2018年に公開された、白石和彌監督、門脇麦主演の青春群像映画「止められるか、俺たちを」が、WOWOWにて11月1日(金)に放送される。今作は映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」「キャタピラー」「水のないプール」「天使の恍惚(こうこつ)」など日本映画史に残る数々の作品を遺すと同時に、ピンク映画界の鬼才と呼ばれた若松孝二監督率いる若松プロダクションに実在した助監督を通して、彼らの青春と狂騒の日々を描く物語だ。続編となる「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」も11月1日(金)に連続放送される。1980年代が舞台の第2弾は、名古屋に自らの映画館を作った若松監督と、彼の元に集う新たな若者たちを描いており、前作に続いて、監督の特徴をよくつかんでいる井浦新が若松孝二役を好演している。
メガホンをとったのは、若松プロダクションで助監督を務めていた白石和彌で、脚本も同じく若松プロ出身の井上淳一。そして、若松孝二役は「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」や「キャタピラー」「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」など、数々の若松作品に出演した井浦新。他にも渋川清彦や寺島しのぶ、奥田瑛二、吉澤健など、生前の若松監督をよく知る人物が集い、制作部と俳優部が一体となって、若松イズムをスクリーンに映し出している。
そんな中で、若松組の撮影が初となる主演の門脇は、劇中で70年頃の若松組の撮影を擬似体験しながら、若松孝二監督のDNAを感じ取っていったという。また、思い出話を聞いたり、井浦から見せてもらったプライベート写真を見たりして、監督への理解を深めたそうだ。門脇が演じた吉積めぐみは、未経験のところから若松プロダクションに飛び込んだ吉積恵がモデル。女性ながらに若松監督の下でピンク映画の助監督を務めていた彼女は、どこかぶっきらぼうで、見た目も雰囲気も男の子のよう。門脇は歩き方や姿勢を意識して、めぐみ像を作り上げたという。その後、クールな印象だっためぐみは、情熱的な監督や仲間たちと触れ合ううちに、性格的にも若松組の一員となっていく。
■学生闘争などが起こるエネルギッシュな時代と情熱的な映画たち
この映画の"土台"となっているのは、やはり若松孝二という監督の人間力であろう。劇中でも語られているが、ある理由から"怒り"が映画作りの原動力となっていた監督は、反体制の旗手として、スキャンダラスで情熱的な作品を次々と生み出していた。しかし、学生闘争などが起きていた時代、過激過ぎるものは排除されていく傾向にあった。映画でも描かれているが、せっかく作った大量のポスターを街なかに貼れず、巨額の印刷代を無駄にする一幕も。そんな時にお金を稼ぐために始めたのが、連れ込み宿で流す短い"ピンク映画"だった。評論家や世間からエロ映画とばかにされることもあったそうだが、監督らはエネルギッシュに前進していく。
そうして、映画が持つエネルギーや映画作りの面白さを知っためぐみは、監督を夢見るようになるが、自分がどんな映画を作りたいのかが分からずに悩む。だが、そんな葛藤を抱きながらも若松監督の元、がむしゃらに撮影に挑む姿を演じる門脇は凛々しく、頼もしい。恐らく、監督も一緒に働くスタッフも同じように感じていたのだろう。助監督として成長していく姿をみんなも頼もしそうに感じているように見える。しかし、当のめぐみは新たな悩みを抱え、一方の若松監督は新たに撮りたい題材にたどり着いた時、事件が起きてしまう...。
めぐみを中心に映画作りに向き合う人々の悲喜こもごもと、反体制的な時代のうねりを映し出した映画は、格差が強まる現代を生きる人々の心にも響くはずだ。エネルギーを持ちながらも悩み続ける若者を演じた門脇に注目しながら見てもらいたい。
文=及川静
放送情報【スカパー!】
止められるか、俺たちを
放送日時:11月1日(金)21:00〜
放送チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります