誰でもChatGPTを駆使して仕事で差がつく活用ができるようになるための「考え方」を解説する(画像:PUGUN_SJ/PIXTA)

ChatGPTは、いまやOfficeやGoogleと同様にビジネスに不可欠なサービスとして定着しつつある。しかし、ちょっとした文章作成やアイデア出しで使うにとどまっている人も多い。本当は、もっとパワフルに業務改善に役立てることができるのに、そのやり方を知らないのだ。

『会社で使えるChatGPT』(東洋経済新報社)を上梓した筆者が、誰でもChatGPTを駆使して仕事で差がつく活用ができるようになるための「考え方」を解説する。

なぜChatGPTを使いこなせないのか?

ChatGPTの登場から2年ほど経ちました。すでに多くの会社で導入されておりビジネスパーソンにとって必携のツールとなりつつあります。ところで皆さんは、「ChatGPTを使いこなしている」「会社にChatGPTを導入すれば成果が出る」と、自信を持って答えられますか。


現場からは「どんな場面で使うべきかわからない」「導入したが利用者が少ない」という声も上がっているようです。原因はChatGPTで実行できることや業務改善における活用法などの理解が不足していることです。

そしてSNSやYouTubeで調べても、インフルエンサーが大げさに紹介する新しい機能や最新情報は、特定の状況や目的でしか使えません。これでは自分の会社の業務では役に立たないでしょう。

本当に会社でChatGPTを使いこなして成果を出すためには、自分自身で活用方法を考えなければいけません。そこでChatGPTで成果を出す業務改善の進め方について、ご紹介します。

ChatGPTによる業務改善のコツは、「型」と「系統」にあります。

ChatGPTの活用に迷う人の多くは、「ChatGPTで何をやるべきか?」という目的が決められません。指示をすれば何でも実行できる反面、やるべきことを絞り込むのは難しいです。そこで最初は3つの目的に限定してみましょう。この目的を「型(カタ)」と表現します。まずは自分のやりたいことを「型」にはめてみましょう。

・代行型:人間の代わりに作業する
目的:人間の代わりにChatGPTが作業を行います。例として大量かつ複雑なデータ処理における、負担軽減が挙げられます。
事例:文章や資料の作成/質問への回答/情報収集 など

・強化型:人間の能力を伸ばす
目的:ChatGPTで人間の能力を伸ばします。より多くのアイデアを考えたり、相談しながら発想を展開させたり、広く深い情報収集などがあります。
事例:アイデア出し/壁打ちの相談/調査や翻訳

・自動型:同じ作業を繰り返す
目的:一定のルールに沿って決められた作業を繰り返します。または、決まった作業を行うプログラムやマクロを生成します。
事例:毎日・毎週・毎月で行う作業の自動化

このように「型」には「代行型」「強化型」「自動型」の3種類あります。これをChatGPTを利用したい目的に当てはめてみましょう。普段行う業務の中で3つの型に該当する作業があるはずです。

できることを理解する「系統」

「型」でChatGPTを使う目的を決めたら、次は「ChatGPTができること」を考えます。ChatGPTに対して魔法の杖のような万能感を抱く人もいますが、実際はできることが限られています。そこでChatGPTでできることを「系統(ケイトウ)」として、6種類にまとめました。

「系統」つまり「できること」は、下記の通りです。

・調査系:わからないことを調べる
活用事例:事前調査として、「問題をどう解決するか」「不明点をどうやって把握するか」などを調査します。

・生成系:成果物を作成する
活用事例:文章、図解、画像などを生成して、業務において説明や提案を行う成果物を作成します。

・対話系:対話しながら考える
活用事例:ChatGPTと対話をしながら、完成度を高めます。人間との対話は時間や場所や回数における制限がありますが、ChatGPTなら自由に相談できます。

・チェック系:問題がないか確認する
活用事例:大量のデータから問題がないかを調べて、修正します。または要約(サマリー)をしてもいいでしょう。

・分析系:傾向や特徴を探る
活用事例:完成した成果物や実行した施策で得られたデータを分析して、課題や改善点などを探ります。

・プログラミング系:プログラムの生成
活用事例:プログラミングによって一連の作業を効率化したり、ルールが決められた作業を自動化します。

以上のように、6つの「系統」がChatGPTにおいて実行できる作業です。自分が行いたい業務が、これらの系統に該当するか事前に調べておきましょう。

もしも該当しない場合は、ChatGPTで不向きな場合も考えられます。ChatGPT以外の方法も検討してください。


図:3つの「型」×6つの「系統」による業務改善

「型」と「系統」を組み合わせる

このように「型」としての目的と、「系統」としてのできることを組み合わせると、ChatGPTを自分の業務でどのように活用すべきかが見えてきます。

例として営業担当のビジネスパーソンで考えてみましょう。

まずは目的である「型」を考えてみましょう。業務において手間がかかっているのは、資料作成です。この作業を代わりにやってもらうので、「代行型」に当てはまります。

次に「系統」から、ChatGPTでできることを考えてみましょう。まずは「調査」で提案すべき内容や課題について調べて、調査内容をPowerPoint形式の資料に「生成」できますね。叩き台になる資料はChatGPTと「対話」しながら改善点を反映させることができます。

次に上司や取引先へ提出する前に間違いがないか「チェック」したり、データから根拠を示す「分析」もできそうです。最後に一連の作業を「プログラミング」で自動化できれば、定期的に行う作業として率化できるでしょう。


図:「型」と「系統」を組み合わせる

ここまで、業務改善の目的を「型」に当てはめて、実際の作業を「系統」として組み合わせる方法を説明しました。一連の流れから、ChatGPTを利用する目的を設定して、該当する業務を効率化するイメージがつかめたと思います。

なお、ChatGPTはつねに新機能の追加や精度向上などが反映されています。従来では実行できなかったり、性能に問題がある用途でも、後日試してみればできるようになっていることもあります。

人とAIの相互補完関係

ここまで挙げたChatGPTによる業務改善ですが、どんな用途であっても簡単に成果が出るとは限りません。ChatGPTの処理結果はプロンプトと呼ばれる命令文によって変化しますし、つねに同じ回答や処理を行うとは限りません。さらに最初は結果の精度が悪かったり、間違っている場合もあるでしょう。そのため、試行錯誤を繰り返すことが前提となります。さまざまなプロンプトや方法を試して、最適な方法を見つけてください。

最適な活用法を発見するコツは、最初から高い完成度を求めないことです。仮にChatGPTによる作業の精度が低くても、足りない部分は人間が支援すれば済みます。従来は人間だけで1時間かかった作業を、すべてChatGPTにやらせる必要はありません。まずは人間とChatGPTによって作業時間を少しでも短くする方法を探ってみましょう。そして試行錯誤の末に、1時間かかった作業が30分になれば、大きな成果となります。

そしてChatGPTを使って業務改善を実現できたら、周囲の人にも勧めてみましょう。あなた以外にもChatGPTや業務改善に関心がある人もいるはずです。

こうして自分以外にも仲間や知見を増やしていきながら、ChatGPTを社内で展開させていくことで、より大きな成果につながるでしょう。

(マスクド・アナライズ)