東北電力女川原子力発電所2号機(手前)(29日、宮城県女川町で、読売機から)=大石健登撮影

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 東北電力の女川原子力発電所(宮城県)2号機が29日に再稼働し、東日本の電力需給の改善へ一歩踏み出した。

 国内では今後も電力需要の伸びが予想されており、政府は安定的な供給に向け、他の原発の再稼働を進めたい考えだ。

12月にも営業運転

 「東日本の原発としても、国内のBWR(沸騰水型軽水炉)としても震災後初めての起動で、大きな節目になる」。武藤経済産業相は閣議後の記者会見でこう述べ、今冬は企業や家庭への節電要請を行わない方針を明らかにした。

 女川2号機は12月にも営業運転を始める予定で、東北電管内の供給力は単純計算で5%程度の底上げになる。全国で最も需給が逼迫(ひっぱく)する東京電力管内でもプラスになる。東北と東京は連系線でつながっており、東京向けには最大650万キロ・ワットを送ることができる。

基準を厳格化

 政府は2023年に脱炭素電源として原発を「最大限活用する」と閣議決定したが、東日本を中心に再稼働は遅れている。東日本大震災前に国内で稼働していた54基のうち、廃炉が決まった21基を除き、新規制基準の安全審査に合格したのは17基にとどまる。

 新規制基準は東電福島第一原発の事故を教訓に定められたもので、地震や津波といった自然災害への対策の基準が厳格化された。このため電力会社は対応に時間を要し、原子力規制委員会の審査が長期化するようになった。

電力料金に格差も

 政府のエネルギー基本計画では、30年度に原発の電源比率を20〜22%に引き上げる目標だが、22年度はわずか5・5%。女川2号機に続く再稼働も、12月の中国電力島根原発(松江市)2号機以外は決まっていない。東電柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機は17年に安全審査に合格したが地元同意を得られていない。

 再稼働の遅れに伴い、東日本の電気料金は西日本より約2割高いという格差が生まれている。国内では今後、人工知能(AI)の普及やデータセンターの増加で必要な電力量が伸びると予想される。電力の供給体制が不十分なままでは、半導体工場の誘致などにも支障が出る恐れがある。