アメリカ陸軍では、新たな脅威に対抗するための新しいレーダーとして、RTX社が開発した「LTAMDS」を導入します。最大の特徴は、探知距離の増大に加え、全周360度を全てカバーすることができる点ですが、じつは日本も他人事ではないようです。

全周360度を警戒可能

 2024年10月にアメリカで開催された防衛装備品展示会「AUSA 2024」にて、大手防衛関連企業であるRTXが開発した地上配備用レーダー「低層防空ミサイル防衛センサー(LTAMDS)」の実物を出展しました。このレーダーは、アメリカ陸軍での採用が決まっているものです。


RTX社がAUSAで展示した新型レーダーLTAMDSの実機(画像:RTX)。

 LTAMDSはトレーラーで牽引するタイプの地上配備型防空システム用レーダーの新型で、飛来する敵のミサイルなどを撃ち落す防空ミサイルシステムとともに展開するものです。RTXが「Ghost Eyeシリーズ」と名付けているレーダーファミリーの一つで、従来のレーダーよりも探知距離が大幅に延伸していることはもちろんのこと、最大の特徴として全周360度を全てカバーすることができます。

 たとえば、従来アメリカ陸軍が運用している防空システム「ペトリオット」用のレーダーでは、アンテナが前方向けの1面しかないため、後方をカバーするためには別のレーダーを配置する必要がありました。

 そこで、LTAMDSは前方向けのアンテナである「プライマリーアレー」に加えて、後方向けに2面の「セカンダリーアレー」を配置しています。これにより、側面や後方から迫り来る航空機や巡航ミサイル、弾道ミサイルなどを捉え、対処することが可能となりました。

 また、LTAMDSは整備性も大きな特徴の一つです。レーダーが故障した際には、差し込まれているサーキットカードを交換すれば良いという風に、要員による修理作業やメンテナンスがしやすいように設計されています。

 RTXによると、いわゆる「DX」を活用したヴァーチャルエンジニアリングの手法を用いて開発を行った恩恵とのこと。実際の製品を設計する前に、デジタル空間上で徹底的に問題点を洗い出し、対処したことの成果だそうです。

 なお、LTAMDSは航空自衛隊でも運用されている「ペトリオット」用の新型レーダーとして、日本でも導入が決定されています。