バイデン政権が国家の安全を脅かす可能性のある中国のAI技術等の取引・投資を制限する規則を策定、2025年1月から施行
2023年8月9日付で出されていたジョー・バイデン大統領の大統領令14105号「懸念国における特定の国家安全保障技術および製品へのアメリカの投資への対処」、通称「アウトバウンド・オーダー」の最終規則が、2024年10月28日にアメリカの財務省を通じて公表されました。この規則では、半導体や量子情報技術、AI技術など国家安全保障上の脅威となる技術を特定の「懸念国」と取引したり、そのような技術に対して投資したりすることを禁止しており、バイデン大統領は中華人民共和国と香港特別行政区、マカオ特別行政区を懸念国として指定しました。
https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy2687
FACT SHEET: Addressing U.S. Investments in Certain National Security Technologies and Products in Countries of Concern | The White House
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2024/10/28/fact-sheet-addressing-u-s-investments-in-certain-national-security-technologies-and-products-in-countries-of-concern/
McHenry Statement on Treasury’s Outbound Investment Final Rule | Financial Services Committee
https://financialservices.house.gov/news/documentsingle.aspx?DocumentID=409401
アウトバウンド・オーダーは、アメリカ人に対し、アメリカにとって特に深刻な国家安全保障上の脅威となる技術や製品に関わる「懸念国」の人物との取引を禁止し、国家安全保障上の脅威につながる可能性のある技術や製品について、懸念国の人物との取引を財務省に通知するよう義務づけるものです。
対象となる技術や製品は、半導体&マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、AIの3つです。
バイデン大統領は中国と香港、マカオを懸念国として指定し、最終規則を2025年1月2日に発効することを明らかにしました。
安全保障を専門とするシンクタンクのCSETによると、2015年から2021年にかけて、アメリカの投資家は中国のAI企業251社に402億ドル(約6兆1500億円)を注ぎ込んでいて、これはAIに取り組むすべての中国企業が調達した金額の37%を占めたとのことです。
しかし、こうした投資についてホワイトハウスは「国境を越えた投資とアメリカの開放的な投資政策は我が国の経済活力に貢献しているものの、懸念諸国はこれを悪用し、我が国の国家安全保障上の利益を損なう機密技術や製品の開発を加速させている可能性がある」と指摘。「バイデン-ハリス政権は、懸念国、つまり中国による軍事近代化に不可欠な主要技術の進歩を阻止することで、我が国の安全を守ることに尽力している」と付け加え、一連の規則を発効する意義を説きました。
投資安全保障担当次官補のポール・ローゼン氏は、財務省のリリースを通じて「バイデン-ハリス政権は、アメリカの国家安全保障を守り、重要な先端技術を、それを使って国家安全保障を脅かす可能性のある人々の手に渡らないようにすることを約束する。AI、半導体、量子テクノロジーは、次世代の軍事、監視、諜報、そして最先端の暗号解読コンピューターシステムや次世代戦闘機のような特定のサイバーセキュリティ・アプリケーションの開発の基礎となっている。この最終規則は、アメリカの投資が、先に述べたような重要な技術の開発を進めるために悪用されないようにする、的を絞った具体的な措置である」とコメントしました。
下院金融サービス委員会のパトリック・マクヘンリー委員長は規則の公表にあたり「アメリカの対中投資を制限する最も有名な推進者はもちろん習近平だ」と名指しし、「この最終規則は中国共産党の軍事・監視複合体への資金提供を遮断するための、的を絞った取り組みである。私は、財務省が軍事技術に焦点を絞ろうとしていることを評価する」と述べました。