人食いバクテリアも溶連菌も同じ!?(写真はイメージ)

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 「人食いバクテリア」と言われる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」。6月時点で年間の感染者数は過去最多を記録したが、この秋もまだまだ注意が必要だ。手足の壊死や多臓器不全を起こすことから恐れられている感染症だが、名称だけ見れば、子どもがよくかかる喉の感染症「溶連菌感染症(溶血性レンサ球菌)」と似ている。まさか、お馴染みの溶連菌が悪化すると人食いバクテリアになるのか? 相違点やリスクをクリニックフォア内科専門医に聞いた。

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■どちらも“溶血性レンサ球菌”、肌の中に入るか? 喉に感染するかの違い

 「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」とは、溶連菌の一種・A群溶血性レンサ球菌が原因で発症する感染症。急激に進行して手足が壊死したり、複数の臓器が働かなくなるなど深刻な症状を引き起こすとされている。こうしたことからメディアでは「人食いバクテリア」とも報道されている。

 一方、「溶連菌感染症(溶血性レンサ球菌)」もA群溶血性レンサ球菌による上気道の感染症。喉に感染し、発熱や咽頭痛、手足の赤い湿疹や苺舌などがみられることも。子どもがかかることが多いが、大人でも感染する。

――名前がよく似ている「人食いバクテリア」こと「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」と「溶連菌感染症(溶血性レンサ球菌)」。どちらも“溶血性レンサ球菌”ですが、同じものなのですか?

 「これは確かに難しいですよね。大まかに言ってしまえば、どちらもA群溶血性レンサ球菌による感染症という意味では同じです。それが肌の中に入って怖いことを起こすのがいわゆる『人食いバクテリア』と呼ばれるもの。喉で悪さをするのがいわゆる『溶連菌感染症』と言えます。

――肌の中に入るというのは、どのような仕組みなんでしょう?

 「溶連菌が傷口などから皮膚のバリアを超えて、肌の中に入り感染症を起こします。この症状が出ると、急に肌に赤みや痛みが広がったり、発熱することになります。さらに極めて重篤な症状となると、場合によっては黒く壊死のような状態になってしまう。これが、“人食い”と言われる所以です。このように肌や皮膚の中の脂肪組織、その下の筋肉に近いところまで感染してトラブルを起こすもので、医師の言葉で言うと『皮膚軟部組織感染症』になります。とはいえ、感染した誰もが壊死のような重篤な症状に至るわけではありません」

――A群β溶連菌に感染しないためにはどうすればいいのでしょうか。

 「やはり、手洗いや肌を清潔に保つことが大事です。『人食いバクテリア』の感染は、A群溶連菌が肌にくっつき、体の内側に入ることで起こります。肌が清潔でないと、傷口などから体内に侵入しやすくなります。また、アトピー性皮膚炎の湿疹や虫刺されで掻いた傷、水虫で皮がむけたところからも入ります。入口はさまざまな原因でできますが、肌を清潔に保っておけば感染することは防げます」

――今年はすでに感染者数が過去最多となっていますが、秋冬も注意が必要ですか?

 「そうですね。注意したほうが良いでしょう。去年の秋冬にも異常な数値で激増し、その後、春から夏までコンスタントに増加。夏になってようやく報告数は減ったのですが、それでも例年よりは多くなりました。喉への感染である『溶連菌感染症』も併せて、なぜかA群β溶連菌が今までよりも市中に出回っているように感じています」

――ちなみに、喉の溶連菌にかかって咳が出て、溶連菌を含んだ飛沫がついた手で傷口を触ってしまうと、「人食いバクテリア」の症状が出る可能性も…?

 「可能性はありますね。ないとは言い切れないので、気を付けることに越したことはないです」

■「人食いバクテリア」は糖尿病の人に重症化リスク、ほかの感染症にも注意

――以前、「人食いバクテリア」にまつわるネットニュースが出た際、「『人食いバクテリア』で重症化した人は、糖尿病であることが多い」という医療関係者を名乗る人の意見が寄せられていました。これは本当なのでしょうか?

 「糖尿病の方は、重症化する可能性があるとは言われています。血糖値が高い状況が続くと、白血球が仕事をしづらい状況になるからです。白血球は菌などが体内に侵入したら駆けつけて対処してくれるのですが、糖尿病の場合はその性能が落ちるので、感染症になりやすくなるというメカニズムです」

――なるほど。糖尿病の人はより気を付けたほうがいいということですね。またこの意見に対しては、「糖尿病の恐ろしさは啓蒙すべき」「B級グルメやドカ盛りの紹介も良くない」「食事は気をつけないと危険」などの声もあがっていました。

 「そうですね。とはいえ、糖尿病も“食”だけが悪者というわけではありません。体質的にそうなってしまう人もいますし、遺伝的な要因が多いとも言われています。ただ、先述のとおり、糖尿病になると『人食いバクテリア』以外にもさまざまな感染症で重症化リスクが上がるということは事実。それを理解していただければと思います」

【監修】
日本内科学会認定医。東京都済生会中央病院で研修後、同院にて糖尿病をはじめとした総合診療や医学教育に従事。現在は、若い世代の糖尿病など慢性疾患管理の向上などのため、質の高く、アクセスの良いプライマリーケアクリニックの実現や医療情報の提供を行っている。