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 タレントの山崎怜奈(27)がマルチに活躍している。自身初の冠ラジオであるTOKYO FM「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」(以下ダレハナ、月曜〜木曜後1・00)は10月で5年目に突入。ラジオだけでなく、報道番組にクイズ番組、エッセイと引っ張りだこだ。飛躍の根底には「言葉」への真摯な姿勢があった。(望月 清香)

 取材前に山崎のエッセー本「山崎怜奈の言葉のおすそわけ」を読んだ。自身の意見をはっきりと発言する知的で物怖じしないイメージとは裏腹に、すごく不器用で不安と隣り合わせの人だと感じた。神経質すぎるくらいに言葉に真っすぐ向き合っている印象を受けた。そのことを率直に伝えると、「意識していないと、人間誰しも鋭利な言葉になってしまう。だから、自分の言葉で誰かが傷つくかもしれないと常に思っている。人間はもろいので、自分の加害性を認識しないとすぐに崩れてしまうのではないかと思っています」と明かした。

 山崎自身、ネットで心ない言葉を浴び、傷つくことがある。「そういう言葉を放たれたとしても放つ側にはなりたくない。自分は自分にとっての言葉の品性を保つ努力をしないといけない」。真剣な眼差しからは、言葉を生業とする人間としての覚悟が感じられた。

 思いやりある言葉を発するため、心の豊かさを大切にしている。山崎は根っからの勉強好きで、好奇心の塊。ニュースを見たり、本を読んだり、映画を見たり。新しい知識や価値観に触れることを欠かさない。

 人と会う時間も心の栄養源。「人とおいしいものを食べる時間が心が落ち着く。フットワークが軽いので、そこの集まりでも呼ばれたら行っています」。どんなコミュニティーにも面白がって飛び込む。芸能界で仲の良い人を聞くと、モデルの井桁弘恵にフリーアナウンサーの笹川友里、脚本家の三谷幸喜ら職業も年代もバラバラの人の名前が挙がった。「自分にはできないことをやっている人の話を聞くと刺激的だし尊敬の念が増します」と語った。

 「自分が知らないことを学ぶのが好き。自分は空っぽの人間なので、中身を満たしていきたい。ラジオパーソナリティーもタレント業もアウトプットの仕事なので、インプットを続けていきたい。自分の時間を確保して自分の心を豊かにしていきたいです」。学ぶことの楽しさが山崎の心を潤し、純度の高い言葉を生んでいる。

 ラジオはメディアの中でもリスナーとの距離が近い。特に、平日昼の生放送「ダレハナ」はリスナー1人1人の生活に密に接する。山崎はマイクの向こうにいる相手の体温を感じながら丁寧に言葉を選んでいる。真っ正面から向き合い、悩み、紡ぎ出す言葉は、きっと誰かの心を軽くするはずだ。

 ○…読書好きの山崎。好きな作家の1人として、「何者」「正欲」などで知られる直木賞作家・朝井リョウ氏を挙げた。エッセーを書き出したのも大学生の時に朝井氏のエッセーを読んだことがきっかけ。「朝井さんの作品は、自分が上手く言語化できなかった違和感が言語化されている。すごく腑に落ちる感覚がある」と、魅力を語った。また、「書評家の三宅香帆さんに“山崎さんにはどことなく朝井リョウさんを感じる”と言われた」と明かし、「どこかににじんでいるのかな」と笑った。