日本から「ユネスコ無形文化遺産」23件目の登録なるか!? 文化庁がユネスコに提案している“伝統的酒造り”とは?
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30〜7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。
10月27日(日)の放送テーマは「守り、つないでいこう! 日本の伝統的酒造り」。文化庁 参事官(生活文化連携担当)付 専門官の清水大樹さんから、日本の伝統的酒造りの技術について伺いました。
◆「ユネスコ無形文化遺産」登録を目指して
「ユネスコ無形文化遺産」とは、“芸能”“伝統工芸技術”などの形のない文化を対象としており、現代まで受け継がれている慣習や知識、技術などと密接に関わっているものを保護し、相互に尊重する機運を高めることを目的に2006年から始まった登録制度です。日本からは「歌舞伎」「能楽」「人形浄瑠璃文楽」「雅楽」「和食」など22件が登録されています。そして現在、新たな登録を目指してユネスコに提案しているのが「伝統的酒造り」です。
近年、日本産の酒類の輸出額は増加傾向にあり、10年前と比べると5倍以上まで増えている一方で、日本国内の酒類の市場を見ると、全体的に縮小傾向にあります。縮小傾向の要因について、清水さんは「少子高齢化による人口減少やライフスタイルの変化、嗜好の多様化など、いろいろ考えられます。酒類全体のなかでも、とりわけ清酒いわゆる日本酒は、約50年前のピーク時から4分の1以下(出荷数量ベース)まで減少しています」と解説。
日本酒は地域に根ざした伝統的なお酒であり、お祭りや結婚式など社会的・伝統的な行事に欠かせないもので、これからも大切に守り、つないでいかなければならない日本文化の1つです。なお、文化庁では2021年に国の登録無形文化財に登録しています。
◆日本ならではの酒造りの技術を解説
伝統的酒造りによって作られるのは、日本酒以外にも焼酎、泡盛、みりんなどさまざま。また、伝統的酒造りでは原料である穀物などに含まれるデンプンを糖に変えるときに、こうじ菌を用いていることが最大の特徴です。「近代科学が普及する前から、杜氏(とうじ)・蔵人(くらびと)といった職人たちが経験の蓄積によって探り出し、築き上げてきた酒造りの技術です」と清水さん。
その技術には、大きく分けて3つの工程があります。1つ目は“原料の前処理”。原料処理のなかで米や麦を“蒸す”工程があり、これによって、こうじ菌を繁殖しやすくしています。ちなみにワインやビールなどのお酒には(こうじ菌は)ありません。
2つ目は“こうじ造り”。麹室(こうじむろ)と呼ばれる高温多湿の部屋で蒸した原料に、こうじ菌の胞子をふりかけ、原料に含まれるデンプンを糖に変える準備をおこないます。「こうじ菌をふりかけたあとは、時間をおいてから木の箱に移します。こうじ菌を順調に生育させるためには繊細な温度管理が必要なため、箱の位置を入れ替えて温度のムラを抑えたり、米をほぐして空気を入れ替えたり、昼夜を問わずこうじ造りに向き合います」と説明します。
そして3つ目は“もろみの発酵”。こちらでは「並行複発酵」という技術が用いられます。ちなみに、ワイン、ビール、日本酒はそれぞれ違う発酵法で作られています。まずワインは「単発酵」といい、収穫したブドウを発酵に適した状態にすれば、自然界に存在する酵母(発酵菌)の働きで発酵が起こることでワインができあがります。
ビールは「単行複発酵」といい、麦に含まれるデンプンを分解して糖分に変える工程と、その糖分に酵母を入れてアルコール発酵させる工程があり、これを別々におこないます。
そして日本酒は「並行複発酵」で作られていますが、こちらは、原料に含まれているデンプンをこうじ菌の働きにより糖に変える作用と、発生した糖を酵母の働きにより、アルコール発酵させる作用を同時並行的におこないます。これにより、日本酒は醸造酒として世界でも類を見ないアルコール度数の高いお酒になります。
こうじ菌を使った酒造りは室町時代に確立したと考えられていて、500年以上前から先人たちが経験と技を蓄積して継承してきたものです。人手不足も影響して、さまざまな分野でスマート化が進んでいますが、こうした古くから伝わる製法を守ることも重要です。
最後に清水さんは「文化庁では、酒類業を所管する国税庁とも連携して『伝統的酒造り』の魅力を国内外の多くの方々に知ってもらうために、ユネスコ無形文化遺産への登録に向けて日本からユネスコに提案しています。この結果は今年12月に出る予定です。この機会に、皆さんにもぜひ日本の伝統的酒造りに関心を持っていただいて、理解を深めていただければと思います」と呼びかけました。伝統的酒造りについて詳しく知りたい方は、文化庁のホームページ https://www.bunka.go.jp/seisaku/shokubunka/をチェックしてください。
番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「伝統的酒造り」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。村上は“守り つなぐ 伝統の酒造り”とポイントを挙げ、「これだけ素晴らしい技術ですから、つないでいきたいです」と話します。続いて、杉浦は“世界に誇れる日本の伝統的酒造り”と書き、「世界にどんどん日本の伝統的酒造りを発信してほしいです!」とコメントしました。
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10月27日放送分より(radiko.jpのタイムフリー) http://www.tfm.co.jp/link.php?id=11383
聴取期限 2024年11月4日(月・振休)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30〜7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
10月27日(日)の放送テーマは「守り、つないでいこう! 日本の伝統的酒造り」。文化庁 参事官(生活文化連携担当)付 専門官の清水大樹さんから、日本の伝統的酒造りの技術について伺いました。
(左から)杉浦太陽、清水大樹さん、村上佳菜子
◆「ユネスコ無形文化遺産」登録を目指して
「ユネスコ無形文化遺産」とは、“芸能”“伝統工芸技術”などの形のない文化を対象としており、現代まで受け継がれている慣習や知識、技術などと密接に関わっているものを保護し、相互に尊重する機運を高めることを目的に2006年から始まった登録制度です。日本からは「歌舞伎」「能楽」「人形浄瑠璃文楽」「雅楽」「和食」など22件が登録されています。そして現在、新たな登録を目指してユネスコに提案しているのが「伝統的酒造り」です。
近年、日本産の酒類の輸出額は増加傾向にあり、10年前と比べると5倍以上まで増えている一方で、日本国内の酒類の市場を見ると、全体的に縮小傾向にあります。縮小傾向の要因について、清水さんは「少子高齢化による人口減少やライフスタイルの変化、嗜好の多様化など、いろいろ考えられます。酒類全体のなかでも、とりわけ清酒いわゆる日本酒は、約50年前のピーク時から4分の1以下(出荷数量ベース)まで減少しています」と解説。
日本酒は地域に根ざした伝統的なお酒であり、お祭りや結婚式など社会的・伝統的な行事に欠かせないもので、これからも大切に守り、つないでいかなければならない日本文化の1つです。なお、文化庁では2021年に国の登録無形文化財に登録しています。
◆日本ならではの酒造りの技術を解説
伝統的酒造りによって作られるのは、日本酒以外にも焼酎、泡盛、みりんなどさまざま。また、伝統的酒造りでは原料である穀物などに含まれるデンプンを糖に変えるときに、こうじ菌を用いていることが最大の特徴です。「近代科学が普及する前から、杜氏(とうじ)・蔵人(くらびと)といった職人たちが経験の蓄積によって探り出し、築き上げてきた酒造りの技術です」と清水さん。
その技術には、大きく分けて3つの工程があります。1つ目は“原料の前処理”。原料処理のなかで米や麦を“蒸す”工程があり、これによって、こうじ菌を繁殖しやすくしています。ちなみにワインやビールなどのお酒には(こうじ菌は)ありません。
2つ目は“こうじ造り”。麹室(こうじむろ)と呼ばれる高温多湿の部屋で蒸した原料に、こうじ菌の胞子をふりかけ、原料に含まれるデンプンを糖に変える準備をおこないます。「こうじ菌をふりかけたあとは、時間をおいてから木の箱に移します。こうじ菌を順調に生育させるためには繊細な温度管理が必要なため、箱の位置を入れ替えて温度のムラを抑えたり、米をほぐして空気を入れ替えたり、昼夜を問わずこうじ造りに向き合います」と説明します。
そして3つ目は“もろみの発酵”。こちらでは「並行複発酵」という技術が用いられます。ちなみに、ワイン、ビール、日本酒はそれぞれ違う発酵法で作られています。まずワインは「単発酵」といい、収穫したブドウを発酵に適した状態にすれば、自然界に存在する酵母(発酵菌)の働きで発酵が起こることでワインができあがります。
ビールは「単行複発酵」といい、麦に含まれるデンプンを分解して糖分に変える工程と、その糖分に酵母を入れてアルコール発酵させる工程があり、これを別々におこないます。
そして日本酒は「並行複発酵」で作られていますが、こちらは、原料に含まれているデンプンをこうじ菌の働きにより糖に変える作用と、発生した糖を酵母の働きにより、アルコール発酵させる作用を同時並行的におこないます。これにより、日本酒は醸造酒として世界でも類を見ないアルコール度数の高いお酒になります。
こうじ菌を使った酒造りは室町時代に確立したと考えられていて、500年以上前から先人たちが経験と技を蓄積して継承してきたものです。人手不足も影響して、さまざまな分野でスマート化が進んでいますが、こうした古くから伝わる製法を守ることも重要です。
最後に清水さんは「文化庁では、酒類業を所管する国税庁とも連携して『伝統的酒造り』の魅力を国内外の多くの方々に知ってもらうために、ユネスコ無形文化遺産への登録に向けて日本からユネスコに提案しています。この結果は今年12月に出る予定です。この機会に、皆さんにもぜひ日本の伝統的酒造りに関心を持っていただいて、理解を深めていただければと思います」と呼びかけました。伝統的酒造りについて詳しく知りたい方は、文化庁のホームページ https://www.bunka.go.jp/seisaku/shokubunka/をチェックしてください。
番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「伝統的酒造り」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。村上は“守り つなぐ 伝統の酒造り”とポイントを挙げ、「これだけ素晴らしい技術ですから、つないでいきたいです」と話します。続いて、杉浦は“世界に誇れる日本の伝統的酒造り”と書き、「世界にどんどん日本の伝統的酒造りを発信してほしいです!」とコメントしました。
(左から)杉浦太陽、村上佳菜子
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10月27日放送分より(radiko.jpのタイムフリー) http://www.tfm.co.jp/link.php?id=11383
聴取期限 2024年11月4日(月・振休)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30〜7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/