にじさんじ・渡会雲雀が愛される理由を探って見えた、全身で伝える“感情の美しさ”について
現在のVTuberシーンにおけるトップランナーのひとつであるにじさんじ。そのなかにおいてもタレントの活躍する分野は日々拡がっている。
【動画】初投稿で1000万再生超え 渡会雲雀が歌うMrs. GREEN APPLE「StaRt」
メインとなる生配信に加え、事務所が主導する企画への参加や監修、主に一人ひとりのライバーが主導となって進む歌ってみたなどの動画のほか、ここ数年ほどはエンターテインメントのフィールドでアーティストとして日の目を見る者も増加してきた。
育成プロジェクトである「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」からも新規ライバーがデビューし始めており、現在約150名のメンバーが所属・活動しているにじさんじ。その層の厚さで今後も大きな影響を与え始めている。
今回は男性4人組としてデビューしたVOLTACTION(ヴォルタクション)から、渡会雲雀(わたらい ひばり)について記していこう。
渡会雲雀は2022年7月13日にSNS初投稿、16日にYouTubeで初配信し、デビューを飾った男性タレントだ。先日当連載内でも取り上げた風楽奏斗(ふうら かなと)とともにデビューし、バーチャル・タレント・アカデミーから輩出された初の男性タレントの1人でもある。
渡会雲雀といえば、紫と赤紫が混ざったショートカット、目尻にかけてキッとあがった切れ目、タイトなパンツに白色のブーツと、ストリート感あるファッションに身を包み、その出で立ちとビジュアルで特に若いファンから注目を浴びている。
また彼は、にじさんじの中でも群を抜くボーカリストとしての才覚をもったタレントとしてファンの間で知られている。
事実、渡会雲雀ソロとしてだけでなく、誰かとのデュエット相手として、そしてVOLTACTIONの一員として、さまざまな楽曲・カバー歌唱に参加してきた。その数、デビューから2年半と経たずして40曲以上もの楽曲である。
自身が好きなボカロ曲やロックバンドの楽曲を中心にカバー・歌ってみた動画を歌い、堀江晶太による「skylark」と164による「tokyolit」という自身のソロ楽曲2曲をリリースしている。この参加楽曲の多さや高い意欲は、その実力にくわえて彼自身が歌を歌うことが大好きであるというのが非常に大きいだろう。
デビュー時にVOLTACTIONとしてリリースしたオリジナル曲「インレイド」や初配信時にお披露目した「サマータイムレコード」の時点でエネルギッシュな声色に注目が集まっていたが、2022年8月31日に公開されたMrs. GREEN APPLE「StaRt」では伸びやかに歌い上げる歌唱で新たな一面を披露し、多くのファンの心を掴んだのだ。
さまざまな楽曲でその歌声を披露してきた渡会だが、共通しているのは彼らしい特有のオーラやエネルギーを常に感じさせてくれるところだ。話し声と歌声で別人のように声が変わるタイプのひとをよく見かけるが、彼にもそういった一面があり、配信内でのすこし荒めな声質から、歌となるとシュッとスタイリッシュかつクールな響きを帯びるようになる。「渡会が歌う」というだけでどんな歌唱をするか注目するファンもなかにはいるようだ。
筆者は昨年の『にじさんじフェス2023』で開催された「にじさんじ 5th Anniversary LIVE 『SYMPHONIA』Day2」を見させてもらったが、初めての大型ステージ出演ながら全体2曲目に登場し、ソロ曲「skylark」もバッチリと歌い上げるなど、会場を盛り上げる姿が印象的だった。
こうした楽曲参加やイベント出演にくわえて、自身の3D配信では生バンドを使ったライブも開催しているため、「渡会雲雀といえば歌・音楽」という印象を抱いているファンが多いだろう。最近のにじさんじの動きを鑑みれば「渡会雲雀」としてのソロシンガーデビューが、今後十二分にありえそうだ。
■感情豊かな姿で周囲を惹きつける渡会雲雀の、ムードメーカーとしての能力
歌声ではクールな一面をみせてくれる渡会なのだが、じつは配信上の彼はまったくの逆。ユーモアに溢れたパーソナリティで多くの人を笑顔にしてくれるタイプの人間なのだ。
同期である風楽/四季凪/セラフらと仲が良く、配信では周囲を巻き込んでいく力……ある種の無邪気さを兼ねた人物として存在感を放つことが多い。
もともと小学校・中学校で野球をしており、チームキャプテンを務めた経験もあるスポーツマンな渡会。同期や先輩らから漏れてくるエピソードによれば「後輩力が高い」「食事会で気配りがすごい効く」と評されることが多いようで、礼儀正しさや言動も含めて運動部らしさ・スポーツマンらしさを感じさせてくれている。
またこれも“運動部あるある”な一面として、「声が大きい」という特徴ももちあわせている。これは渡会にとってプラスに働いており、言い換えれば「声がよく通る」ということでもある。
配信者~ストリーマーとしてさまざまな活動をするうえで、どれだけ多くの人がいてもある程度自分の存在感を示すことができるという点で、なによりシンガーとして活躍する点でも非常に大きな意味をもってくる。
それでいて、本人の明るさや人柄も影響してか、暑苦しさを感じさせることがほとんどない。大人数コラボにおいても、彼が参加していると「あそこに渡会がいるんだな」とリスナーがすぐに察することができるレベルであり、渡会自身ですらも「ちょっとオレの声うるさい! 黙って!」とセルフでツッコむことがたまにあるほど。
そんな彼の大きな声でアツく応援されれば、なんだか勇気が湧いてきそうというもの。渡会はさまざまなゲーム企画や大会に出場し、にじさんじ内外さまざまなメンバーとチームを組んでいるが、チームを鼓舞するパワーはピカイチではないかと筆者は個人的に感じている。会話中に愛嬌ある会話で周囲を和ませてくれる彼は、「チームに居て欲しい」タイプといってもいいだろう。
VOLTACTIONのなかでも随一に茶目っ気があり、風楽とともにハシャぐことの多い渡会。喜怒哀楽が豊かゆえに、その心の動き・情動が配信のなかでもキモとなるわけだが、ゲーム配信をしている途中でおもわず泣いてしまったり、アニメを見ている途中で泣いてしまったりと、涙腺がゆるい方でも知られている。
デビューしてすぐに配信でプレイした『ファイナルファンタジー10』では、「いちばん最初にやりたかったゲーム」として思い入れをもってプレイし、最終決戦を終えたあとのエピローグを嗚咽をもらしながら見守っていた。
ボケ役となってコラボ相手やリスナーを笑わせ続け、時にはゲーム内でも歌を歌唱して多くの者のこころを震わせる。感情豊かで人情味ある渡会、配信で映る彼の表情が喜怒哀楽をしっかりと感じさせてくれていることを忘れてはいけないし、そうした芸達者で感受性豊かな一面が彼の支持につながっているのだ。
VOLTACITON4人の中でもムードメーカー的立ち位置にたっており、3D配信では4人揃ってワチャワチャとふざけ合う中で中心となり、逆に渡会がダンス練習に四苦八苦しているとほか3人が釣られて練習・アドバイスを送るというシーンもあった。そして歌唱となれば「渡会の歌唱力をどう活かしていくか?」という形に自然となっていくのではないだろうか。
今後開催予定となるリアルライブやオリジナルアルバムの制作のなかで、渡会がどのようなポジションで自身の才能を発揮するか。なによりにじさんじ内外でどのようなスタンスで活動していくか、彼の一挙手一投足から目が離せない。
(文=草野虹)