〈年収600万円台〉日本の30代・40代が「老後のために」やっていること
年金は将来どうなるか……。老後不安は、多くの人々にとって深刻な問題となっています。そんななか「資産形成」という言葉に注目が集まり、自分なりの対策を講じる人も増えています。本記事では年収600万円台の30代・40代の人々が、実際にどのように老後資金を準備し、将来に備えているのかをみていきます。
1つの仕事だけでは生活できない…?
国税庁の調査によると、正規社員の平均給与は年間530万円(「令和5年分 民間給与実態統計調査」)。
「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、大卒の初任給は平均23万7,300円ですので、昇給率を考えると「平均は随分と高い」と若い人が感じるのも無理はありません。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」には、
“労働者が副業・兼業を行う理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活できない、自分が活躍できる場を広げる等さまざまであり、業種や職種によって仕事の内容、収入等も様々な実情があるが、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したい、スキルアップを図りたいなどの希望を持つ労働者がいることから、こうした労働者については、長時間労働、企業への労務提供上の支障や業務上の秘密の漏洩等を招かないよう留意しつつ、雇用されない働き方も含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要である。”
と書かれており、副業・兼業を考えるタイミングにあるかもしれません。今後、平均年収をもってしても、普通に貯蓄しているだけでは老後までに「不足する」ことが想定されます。ましてや平均以下の場合は、よほど節約しないと貯蓄できないかもしれません。
老後不安は大きくなる一方、「資産形成」という言葉が流行している今、平均より少し高い「年収600万円台」の30代、40代の人たちはどのような工夫をしているのでしょうか。
「金を購入」するワケ
34歳の増田さん(仮名)は、定期的に金を購入しているそうです。
「iDeCoとか新NISAとか、『税金がかからないからやらないと損だ』と言う人もいますけど、“やらないと損”なんて言われると、なんだか恐くないですか? 特にiDeCoは、20年も取り出すことができないわけですし。ビットコインなんてよくわからないただの文字列が何千万円にもなっちゃう時代なんで、20年も先には、何が起きるかわかりません。とはいえ銀行に預金していても、同じようにどうなるかわからないので、金を買っています。インフレにも強いと言いますし」
金価格の下落リスクは恐くないのでしょうか。
「金の価格はゼロになることはないし、下落しているときには“今は安くなってる”と考えて、買う量を増やしています。経済危機が起こると金価格は上がる傾向にあるし、将来的に消費税が上がることを考えると、貯金のかわりに金を買っておくことで得する気がしています」
持ち家。プラス年金でなんとか…iDeCoも検討
42歳の高梨さん(仮名)は、持ち家を購入しているので、老後は年金でなんとかやっていけるのではないかと考えています。
「ローンはあと10年、なんとか返せそうです。やっぱり一軒家はいいですよ。家さえあれば、節約すれば年金でなんとかなるでしょう。子どもも自立していくわけだし。夫婦で月20万円くらいはもらえると思いますから。あとは“無駄”とも言われる医療保険にもちゃんと入っているし、不測の事態はそう起きないと思います」
ローンがあと10年ならば、その後、貯蓄もできるのではないでしょうか。
「できるかもしれませんが、子どもの教育費と親の介護費を考えると、どれだけできるかは、ちょっとわからないですね。65歳まで働くとすると、ちょうど12年ですか。月10万円貯めたとして、1,440万円。2,000万円には足りないですけど、年金プラスそれくらいあれば、まあ、なんとかなるのではないでしょうか。ローンが終わったら、iDeCoにでも入れておいて70歳くらいまで運用させときますよ。少しは増えるでしょう」
貯金はないが、ネットショップで副業したい
40歳の皆川さん(仮名)はネットショップでの副業を始めました。貯金はないが、定年後も働き続けたいと言います。
「不景気ですね。貯金は100万円ほどしかないです。給料も上がらなくなってきて、会社からも副業を奨励されているので、ネットショップを始めました。まだ全然売れていないですが、やってみると面白いんですよ。自分の店のロゴを作ったり、好きなものを揃えたり、利益を計算したり。なんとか軌道に乗せて、定年後も収入を得たいです」
定年後でもできるような仕事なのでしょうか。
「自分で店を出すこと、今は結構簡単にできるんだなと感動しました。電子決済の方法とかアプリとか、同じものが同じように定年後も使われているかわかりませんが、国も副業を奨励しているだけあって、やろうと思えば空いている時間でできるくらいの労力でできています。今から慣れておけば、定年後もそれで食べていけるのではないかなと」
それぞれ、ライフスタイルやリスク許容度に応じた資産形成の工夫をしていることがわかります。それぞれに一長一短がありますが、共通しているのは「老後の不安を少しでも軽減しよう」という姿勢です。資産形成は一律の方法ではなく、自分に合った手段を見つけることが大切であり、長期的な視点で計画的に取り組むことが、将来の安心につながると言えるでしょう。