一見、防犯性の高い対策に思えても……(画像:keikyoto/PIXTA)

首都圏で発生し、殺人や連れ去り監禁も起きた連続強盗事件。次々と実行犯が逮捕され、その実態が明らかになりつつある。

しかし恐ろしいのは、その実行犯は「闇バイト」で即席的に集められた者たちで、今回の事件の犯人が逮捕されようとも、今後も全国で同様の事件が発生しうる危険性があるということだ。

市民の間では防犯意識がこれまでになく高まっている。これから対策を考えている人のために、セキュリティコンサルタントの視点から、「危険な家」の特徴と「今すぐやるべき防犯対策」をお伝えしたい。

「危険な家」10の特徴

闇バイト」で集められた即席集団であったとしても、犯行グループは強盗に入る前に下見をしていると思われる。大体の狙いを定めた地域で、水道や屋根の修理業者を装って民家の中に入り、その家庭の情報を集めてターゲットを決めている。

もちろん、そういった怪しげな者に声をかけられたり、訪問を受けたりしても絶対に家に入れないこと、そして家庭の情報を一切渡さないことが肝心だ。

しかし、外から見てわかってしまう情報もある。また、「訪問業者を装って、この家の中を調べよう」と思われやすい家というものも存在する。

では、犯行グループから見てターゲットにしやすい「危険な家」とは、どのような条件の住宅だろうか。次の「10の特徴」が当てはまる家は注意したほうがいい。

【強盗に狙われやすい「危険な家」の特徴】

1. 家が目立たない位置にあり、周囲が雑然としている

2. 周囲に高い塀やフェンス、木が多く、隠れやすい場所がある

3. 門やフェンスの施錠がされていない

4. 照明が少なく、夜間は真っ暗

5. 家の構造が入りやすい作りである(ドアや窓が多い)

6. 玄関の鍵が古い・ドアの立て付けが悪いなどで、防犯性が低い印象がある

7. 高級車がつねに駐車されている

8. 家族構成がわかりやすいものが目につきやすい場所にある(洗濯物など)

9. 住人が高齢者一人暮らしだと周囲に知られている

10. 近隣との交流が少ない

言わずもがなだが、強盗は外から見えにくい家を好む。ポツンと一軒家のように、周囲から断絶された場所にある民家が危険なのはもちろんだが、住宅街にあっても、周囲から隔離されたような印象の家は注意が必要だ。

たとえば、防犯やプライバシー保護のために高い塀やフェンスを設置する家は多い。確かに犯行グループが下見する際には家の中を見られずに済むだろうし、侵入の際には乗り越える手間ができるという点では、防犯になるかもしれない。

だが、いったん塀の中に入ってしまえば、絶好の隠れみのとなるわけで危険は増してしまう。上記に挙げた3以降も当てはまる家は、その高い塀やフェンスが逆効果となる。

「マンションでも危険」である理由

ドアや窓が多いという点では、戸建ての危険性がよく言われるが、マンションのような集合住宅であっても変わらない。

集合住宅の1階で、庭やデッキからリビングまでひと続きのようなつくりの部屋がある。大抵、床から天井までの大きな掃き出し窓が設置されており、陽がよく入ったり、換気ができたりとメリットも多いが、防犯上は危険性が増す。

強盗が数人いても余裕を持って通れる大きさで、窓を割れば簡単に侵入することができるからだ。

玄関の鍵が古く、ドアの立て付けが悪い家は、実際に侵入する際に容易というだけでなく、下見の段階で「この家は防犯対策をしていない」とみなされ、マークされやすくなるだろう。

家の作りだけでなく、生活面でも注意が必要だ。住人が高齢者一人暮らしと悟られないようにするためには、洗濯物など家族構成がわかるものを家の外から丸見えの場所に置かないようにする工夫が必要だ。

「家族構成を周囲に知られないようにする」と「近所の交流がない」は一見、矛盾しているようだが、近所に高齢者一人暮らしと知られていても、毎日誰かと顔を合わせ、挨拶するような関係性が築けていれば安心感が増す。

この家がいつもと違う状況になったり、異様な物音がすれば、周囲の家が気づいてくれる可能性が高くなるからだ。

問題なのは、近所付き合いがまったくない状態で、「どうやらあそこは一人暮らし高齢者がいるらしい」となんとなく知られているような状況だ。その噂を聞きつけた強盗に目をつけられるリスクは高まる。

「侵入されない家」にする3つの対策

とはいえ、家を建て替えたり、住み替えをしたりというのも、現実的にはなかなか難しい。今の家の安全性を高め、先述した「10の特徴」を少しでも減らす方法を紹介したい。

まずは、玄関や窓など、出入り口に防犯対策を施すことだ。

警察庁が公表している「侵入窃盗の侵入口」(2022年)のデータによると、戸建てもしくはマンションなどの集合住宅の場合、「窓」と「表出入口」からの侵入が全体の7割以上を占めている。

さらに、同じく警察庁によると、「5分以内」に侵入することができなければ、約7割の侵入者が侵入を諦めるという。つまり、「窓」や「表出入口」に5分を耐えしのぐ設備があれば、強盗を防ぐことが可能かもしれないのだ。

その方法は3つある。

1. 玄関や窓に防犯カメラやセンサーライトを設置する

2. 窓に防犯バーや二重ロックを設置する

3. 窓に防犯ガラスや防犯フィルムを使用する

外から防犯カメラやセンサーライトが見えるだけで、抑止力になる。また、扉や窓の不自然な振動を知らせるセンサーも販売されているので、それらの導入も効果があるだろう。

夜間に侵入者が侵入を試みた際に、ライトが点いたり、振動センサーの音が鳴ったりすれば、住人に危険を知らせるだけでなく、侵入者側も驚き、侵入を躊躇する気持ちが生まれる。

また、防犯バーも効果的だ。窓に設置する鉄格子のようなものだが、仰々しさに抵抗がある場合は、バーの本数が少ないものもある。

ガラスを破壊して中に侵入する際、鍵付近を割って手を入れ、解錠して入ってくるパターンが多いが、この鍵が1カ所ではなく2カ所になれば、それだけ時間稼ぎをすることができる。二重ロックも効果はあるだろう。

ただそれも窓ガラスを全面的に破壊すれば意味はなくなってしまう。より効果があるのが、防犯ガラスに替えることだ。

ただし注意が必要なのは、ガラスが飛び散りにくいとされる網入りガラスは防火用のもので、防犯用ではない。ガラスが飛び散らなければ侵入者にとっては破壊に適してしまうので、必ず「防犯ガラス」にしたい。

賃貸マンション」でもできる対策は?

しかし、賃貸であったり、分譲であっても集合住宅の場合は、規定によって窓やサッシ、ドアを替えられないという物件がほとんどだ。

その場合は窓に防犯フィルムを貼ることで、侵入経路を防ぐことの一助となるだろう。そのときに注意したいのは、鍵部分だけ割られないように貼るのではなく、必ず全面に貼ること。一部だけ貼っても、全体を破壊されたら意味がない。

また、内側にサッシを取り付けることも防犯になるだろう。内窓を設置する(二重サッシにする)ことで、侵入者は窓を二重に破らなくてはならず、侵入に時間を要することになる。

防犯性を高めるためには、これらの策を取り入れたほうがいいが、そこまで予算が許さないという家庭は、「防犯カメラ作動中」といった防犯ステッカーを貼る、金庫などの貴重品を窓の外や玄関先から見える場所に置かない、などの基本的な対策をまずは行おう。

何よりまずは、あなたの自宅が「危険な家」であるかどうか、今すぐに確認してみてほしい。

(松丸 俊彦 : セキュリティコンサルタント)