(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

本記事は、マネックス証券株式会社が2024年10月18日に公開したレポートを転載したものです。

本記事のポイント

・市場は与党過半数割れのリスクを認識しはじめた
・株価が反発する場面があればヘッジのチャンスか

市場は与党過半数割れのリスクを認識しはじめた

10月17日の日経平均株価は続落し、およそ1週間ぶりに節目の3万9,000円を終値で下回った。16日のNY市場ではダウ平均が300ドル以上の反発を見せ、為替も円安に動いただけに、17日の東京市場で日経平均は反発してもおかしくはなかった。実際、16日のシカゴ市場で日経平均先物は、米株の反発に連れ高し、前日比495円高の3万9,450円で終えていたのだ。

市場ではASMLショックの余波が残り、半導体関連株への売りが続いた。半導体受託製造大手の台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)[TSM]が、2024年7〜9月期の決算を発表した。純利益は四半期ベースで過去最高で市場予想も上回った。発表直後、日経平均は値を戻す場面もあったが買いは続かず、結局、安値引けとなった。

17日の東京市場で日経平均が下落したのは、日経新聞が報じた世論調査の結果に嫌気が差したことが背景にある。日経新聞は序盤情勢を調査した結果として、自民党は定数465の衆院の過半数にあたる233議席に届かない可能性があると伝えた。しかし、いまになって反応するとは、日本株市場は鈍感である。

すでに10月第3週の3連休明けには共同通信社が12、13両日に実施した全国電話世論調査(第1回トレンド調査)の結果が伝わっていた。それによれば、石破内閣の支持率は急低下した。自民が裏金事件に関係した前議員ら12人を小選挙区で非公認とした対応に関しては「不十分だと思う」が71.6%にのぼった。この非公認問題に関しては立憲の野田代表の主張を国民は支持していることになる。

石破首相が党内の反対勢力を押し切って、非公認を打ち出したが、まったく国民は納得していないことが浮き彫りになった。前回記事で、メインシナリオは「自民単独での過半数をぎりぎりで確保」などとしたが、全然、筆者のヨミが甘かった。

株価が反発する場面があればヘッジのチャンスか

16日に出演したテレビ東京ニュースモーニングサテライトではこの結果を受けて、「勝敗ラインと掲げる与党(自民・公明)で過半数も危なくなった」とコメントした。つまり、前回記事でのリスクシナリオが示現する可能性が高くなったのだ。以下は日経電子版に掲載された筆者のコメントである。

もう1つ、きょうの日経平均の重荷となったのが政治情勢だ。

日本経済新聞社は27日投開票の衆院選について世論調査を実施し、自民党は定数465の衆院の過半数にあたる233議席に届かない可能性があると17日付朝刊で報じた。他のメディアの調査でも同様の結果が出ており、過半数割れが現実的になってきたとみられる。

マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは「自公政権は続くにせよ、石破茂首相の求心力が低下して、思ったように政策を進められなくなる可能性がある」と指摘。

そのうえで、「外国人投資家は不安定な政権を嫌う。岸田文雄前首相の進めた資産運用立国や半導体への投資などが停滞すると考えれば日本株の買いも手控える」と話す。

(10月17日「TSMC決算控え半導体株に警戒 政治情勢も重荷に」日経電子版)



ポイントは自民単独の過半数割れでは済まないかもしれないということだ。与党での過半数割れとなると相当大変な事態になる。株式市場は遅まきながら、ようやくそのリスクに気付き始めたようだ。

米国市場の動向によっては、日経平均は反発するかもしれない。そうであれば、ヘッジをするチャンスなので、ポートフォリオの一部でもエクスポージャーを下げておくべきだろう。
 

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員