18日、韓国国家情報院は北朝鮮が8日からロシア派兵のための特殊部隊兵力の移動を始めたと明らかにし、衛星写真やウクライナ情報当局が戦場で回収した北朝鮮製武器など関連資料を公開した。写真はウクライナ軍が回収した北朝鮮製KN−23の残骸。[写真 国家情報院]

写真拡大

北朝鮮当局がウクライナ戦争への地上軍派兵を住民に伝えていない中、韓国軍の心理戦団がこれを拡声器放送で北朝鮮側に知らせた。これはイスラエル・ハマス戦争をはじめとする現代戦の核心手段に浮上した認知戦または心理戦の一環と解釈される。北朝鮮住民はもちろん軍事境界線(MDL)一帯の北朝鮮将兵に心理的動揺を招く効果を狙うという点でだ。

軍当局によると、対北朝鮮心理放送「自由の声」は21日午前のニュースの2件目に「ウクライナのゼレンスキー大統領が17日、ウクライナ・ロシア戦争に北朝鮮軍の存在が確認されているとし、北朝鮮軍の派兵説を公式化した」という現地メディアの報道を伝えた。

自由の声は「今月初めにウクライナのドネツク戦線で北朝鮮軍6人が空襲で死亡し、ロシア軍が北朝鮮兵力で構成された3000人規模の特別大隊を編成中」という内容をウクライナメディア発として伝えた。また「現地メディアは18人の集団脱営兵までが発生したという具体的な内容を相次いで報道している」と付け加えた。

さらに自由の声はロシアのウラジオストク北側ウスリースク地域の軍基地に多数の北朝鮮人が到着したという英BBC放送の現地取材も伝えた。

韓米情報当局も「6月に金正恩(キム・ジョンウン)委員長とプーチン大統領が平壌(ピョンヤン)首脳会談で相互軍事援助条項を復元する条約を結んで以降、ロシアに対する北朝鮮の軍事支援が続いている状況」を確認し、「長い期間にわたりロシアや北朝鮮の間で頻繁に多くの人員と物資が列車で行き来した」ことを捕捉したと明らかにした。両国情報当局が「北朝鮮からロシアに移動した北朝鮮軍の人員に大規模な戦闘兵が含まれた可能性が高いとみて確認中」としながらだ。

この日の放送は朝ロ間の水面下の軍事取引を北朝鮮住民と最前方の将兵に直接露出したことに意味がある。朝ロはロシアに対する北朝鮮の砲弾支援と大規模な地上軍派兵事実を公式的に認めていない。

このため北朝鮮は労働新聞など対内メディアを通じてこれを住民に伝えていない。今年6月の朝ロ平壌首脳会談の結果、「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結したという事実と2人の指導者間の親密な関係が深まったという点ばかりを強調してきた。したがって韓国軍が直接、北朝鮮への情報流入を始めたとみられる。

特に対北朝鮮放送の「1次聴衆」がウクライナ戦争への派兵対象になる北朝鮮将兵という点に注目する必要があるという指摘だ。その大部分は金正恩国務委員長の指示に基づき最前方一帯で防壁建設など「要塞化作業」を行っている。彼らが実際に戦場に自分たちが投入されることを知ったり、持続的に北朝鮮軍の死亡・集団脱営情報などに接したりする場合、心理的に恐怖感を感じて動揺する可能性がある。

ただ、自由の声は18日の国家情報院の公式発表は引用していない。事実上機密に該当する内容を北朝鮮住民にまで詳細に説明する必要はないと判断したとみられる。同時に韓国の国家情報院が状況に深く関与しているように見えれば反感や疑心を招きかねないという側面もある。

これに先立ち国家情報院は「北が8日からロシア派兵のための特殊部隊兵力の移動を始めた」と発表した。続いて「ロシア太平洋艦隊所属の揚陸艦4隻および護衛艦3隻がこの期間に北の清津(チョンジン)・咸興(ハムフン)・舞水端(ムスダン)近隣地域から特殊部隊員およそ1500人をロシア・ウラジオストクに1次移送するのを完了した」として衛星写真など具体的な「物証」まで公開した。

国家情報院は北朝鮮軍が「暴風軍団」と呼ばれる最精鋭特殊作戦部隊の第11軍団所属4個旅団(約1万人規模)兵力を派兵すると予想している。平安南道徳川(ドクチョン)に駐留中の暴風軍団は配下に計10個旅団(狙撃旅団3個、軽歩兵旅団4個、航空陸戦旅団3個で構成)があり、首都圏および後方浸透任務などを遂行する特殊戦部隊。