そして、取引先のひとつだった大手制作会社のアマナにキャリア入社し、「オモシロ未来研究所」を立ち上げる。そこでは企業やブランドに対して、アーバンカルチャーやストリートカルチャーをテーマにしたコミュニケーション戦略やコンサルティングの案件を担当、活動範囲をさらに拡大していく。

◆「口内炎が1ヶ月も治らない」検査結果は舌がんステージ4

M.C. BOOさんが、自身の体の異変に気づき始めたのはアマナへ入社した2年目のときだった。

「舌に口内炎ができて、ちょっと調子悪いと思っていたものの、特に何も気にせずに毎晩お酒を飲んで遊び回っていました。しばらくすれば、口内炎は消えるだろう。そう軽い気持ちで考えていたんですが、なかなか口内炎は治りませんでした。そこでまずは医者に診てもらうために、かかりつけの耳鼻科に行ったんです」

最初は口内炎と診断されたが、一向に治る気配がない。そこで、もう一度耳鼻科に足を運ぶことに……。

そのときは、大学病院から来た若い先生に診てもらったのですが、言われたのは「1ヶ月経って治らないのはおかしいので、もう1週間待って様子が変わらなければ大きい病院に行った方がいい」ということだった。

「東京医科大学で検査を受けた当日は、『色々と調べるので今日はお帰りください』と言われました。その後、10日くらいして検査結果を聞きに行ったら、『舌がん』ステージ4の宣告を受けたんです。そのときは本当に『まさか自分が……』という気持ちでした。がんになったとは思いたくないし、今までの人生そんなに運が悪くないと思って生きてきたのもあって。

でも、首にしこりが2つあったんですよ。年をとると顔の骨格が変わるから、『しこりくらいできるかも』とわざと前向きに考えていましたが、ちょうど同じ時期にタレントの堀ちえみさんが舌がんを患っていて。その様子を赤裸々にブログへ綴っていたのを読んだりすると、“自分もそうなのかもしれない”と考えるようになっていました」

M.C. BOOさんは、衝撃的な事実を知らされて「まるで後ろから殴られ、人生が暗転したような気分でした」と語る。

人生はいつ何が起きるかわからないのだ。

<取材・文/古田島大介、撮影/藤井厚年>

―[M.C. BOO]―

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている