「金持ち農家」はやがて「トマトと会話ができる」ようになる…「貧乏農家」との決定的な違い

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農地法の改正や「地方創生」の後押しにより、今注目を集めている農業ビジネス。だが、サラリーマン時代より稼ぐ「金持ち農家」もいれば、うまくいかない「貧乏農家」もいるという。その差は「観察力」にあると指摘するのは、『金持ち農家、貧乏農家』の著者で、農業経営コンサルタントの高津佐和宏氏。両者の違いについて、くわしく教えてもらった。

「観察力」はどうやって身につけるのか

「同じ農場を見ていても、見えているものが違う」

この違いが金持ち農家と貧乏農家の違いです。

たとえば、「田畑に雑草が生えている状態」を見て、金持ち農家は、問題がある、すぐに除草しないといけないと考えますが、貧乏農家は、このぐらいはいいかと思い、何も行動しない。

同じ雑草を見ても、「雑草が生えている」という状態の見え方が違うのです。

その他にも、病気や養分欠乏などの生理障害、害虫の発生、土壌水分や温度、湿度、日光の取り入れ方の状態など、同じ景色を見ていても見え方、感じ方が違うことは多々あります。金持ち農家と貧乏農家では「観察力」に違いがあるのです。

では、その「観察力」はどうやって身につければいいのでしょうか。何人かの金持ち農家にヒアリングしたところ出てきたキーワードは3つです。

(1) 興味があれば気づく

(2) 比較

(3) 定量化

「興味・関心」があれば自然と違いに気づく

(1) 「興味があれば気づく」については、元も子もない話ですが、見えていないから気づかないケースが多々あります。

多くの金持ち農家から出てきた言葉は「作っている作物に興味・関心があれば違いに気がつきます」というものです。たとえば、「気になる異性の変化にはすぐに気がつくのと同じですよね」と。

もし、自分が作っている作物の違いに気がつかないとしたら、興味・関心の持ち方が薄い可能性があります。それは、本当に楽しくて農業をやっているのかという根本的な問題になるかもしれません。

次に、(2) 比較。比較には2つあります。

1つ目は、過去の状態との比較です。昨日との違い、1週間前との違いを比較することです。植物であれば、葉や茎の色や形、触ってみた感触や花や実の付き具合など、場合によっては土を掘り起こしてみて根の状態を確認することも大事でしょう。

「成績のいい農場」を積極的に見学しに行く

2つ目は、「成績のいい農場」との比較です。収穫量や秀品率が高い農家の農場を見せてもらい、自分の農場と比較することです。自分の農場との違いを感じることがあれば、遠慮せずに質問してみましょう。その積み重ねがあなたの観察力を向上させます。

もしJAの部会などに所属しているのなら、成績のいい農家に見学させてもらえないか、お願いしてみましょう。失礼な頼み方をしない限り、ほとんどの方は見せてくれると思います。

JAなどに所属していないときは、都道府県の農業関係部署の職員にお願いしたり、農業生産資材会社の方などに聞いてみたりして、紹介してもらう方法もあります。また、最近はSNSをやっている農家も多いので、直に視察をお願いしてみれば、交流ができる農家も多いと思います。

実際に見せてもらった農場がそんなに優秀な農場ではないこともあるでしょう。そんなときは、反面教師として、「自分ならこうするのに」と視点を変えてみることをお勧めします。

どんな農場がいい農場で成績がいいのかという視点は、たくさんの農場を見る中で培われていくので、時間があればどんどん他の農場を見る機会を作るといいでしょう。

農業生産のレベルが上がってくると……

(3) 定量化とは、「数値で表す」ことです。植物の観察のために定量化を取り入れて、標本となる株を選んで、定期的に背丈や葉の枚数、葉の大きさ、茎の太さ、花や実の付き方などを数値化して記録します。

作業内容や気象条件による変化を記録し、考察することで植物体の観察力が鍛えられていきます。どんな項目を数値化すればいいのかは、JAの指導員や農業改良普及センターの職員などにアドバイスをもらうといいでしょう。

農業生産のレベルが上がってきた農家が次のように表現することがあります。

「トマトと会話ができるようになってきた」

「トマトが話しかけてくるようになった」

実際に、話をするわけではありませんが、なんとなく、生産している作物のことがわかってくるようになる感覚です。あなたが生産する作物の声が聞こえてくるようになったら「観察力」が身についてきた証拠です。

少し余談ですが、地域でトップレベルの収穫量を叩き出すあるミニトマト農家は、毎日、ミニトマトに「いいね〜」と話しかけるそうです。

葉の色や厚みなど、自分の思った通りの状態で育っていると「いい色してるねー」とか「いい感じだね」とか、プラスの言葉をかけてあげると教えてくれました。毎日、声をかけることがあるくらい観察している証拠ですね。

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