長年愛用している有線イヤフォン/ヘッドフォンの調子が悪い…… そして同じ機種で買い換えようにも、もう取り扱いがなくなってしまっていたり、機種が変わってしまって同じ機種がなかなか手に入らない。古い機種のユーザーにとっては“あるある”なことだと思う。

とくにワイヤレス製品が普及するにつれて有線モデルの展開が減ったり、取り扱い自体が無くなくなり、それに合わせてサポートも終了してしまって修理が受けられない……ということも。そんなときに頼りになるのがe☆イヤホンの修理サービス「e☆イヤホンクリニック」だ。

筆者も長年愛用しているヘッドフォンがある。以前紹介させてもらったソニーEXTRA BASSシリーズ初期のヘッドフォン「MDR-XB700」だ。実はヘッドバンド部分が壊れて、プレミア価格の付いた2台目を購入したこともあるのだが、壊れた1台目も自力でどうにか修理した。

しかし、1台目は15年ほど使い込んでいるので見た目からしてもうボロボロ。イヤーパッドも表面が剥がれてしまっている。もし補修などできれば、綺麗にして2台目が壊れた時の予備にしたい……。でも古い機種なので修理してもらえるだろうか? そんな思いで、e☆イヤホン秋葉原店のe☆イヤホンクリニックに話を聞きに行ってみた。

修理だけじゃない!? カスタマイズやコーティングでより使いやすく

今回取材させていただいたe☆イヤホン秋葉原店6階のe☆イヤホンクリニック

e☆イヤホンクリニックのサービスについて簡単に説明しておこう。店舗での故障品の修理はもちろんなのだが、販売店ということもあって、メーカー修理の窓口にもなってくれる。調子の悪い製品を持ち込めば、その場でメーカーの保証の範囲で直せるか、店舗での修理の方がお得かなどを判断してくれるわけだ。

今回取材したのは秋葉原店6階にあるe☆イヤホンクリニック。他店舗では、大阪日本橋本店、名古屋大須店でもその場で診てもらうことができる。仙台駅前店にも持ち込みは可能なのだが、見積もりや修理は別店舗になる。

ちなみに完全ワイヤレスイヤフォンは基本的に店舗での修理できないという。それでもメーカー修理の対応もしてもらえるので、わからない時はひとまず持ち込んで相談すれば解決してくれるようだ。

ケーブル交換などのカスタマイズも依頼できる。リケーブルのできないヘッドフォン/イヤフォンでもケーブルを変えたり、プラグも含めてバランス接続化するなんてこともできてしまう。取り扱いパーツも豊富で、担当者が販売店での経験を活かして、リケーブル後の音の予想や似た機種で試聴できたりと、専門店ならではサポートが充実している。パーツは持ち込みも可能なので、別で購入したケーブルに変えてもらう、なんていったことまでできてしまうそうだ。

試聴比較用のケーブル

用意されているプラグの一部。こちらはオススメの製品だそう

さらに「eSiq」という、厚さ1μ(0.001mm)のガラスコーティングを施すサービスと、ポリッシングサービスも行なっている。原理は車や自転車のコーティングと同じで、クレストヨンドの協力のもと、コーティング材を独自のオーディオ機器向けに調整している。イヤフォンやヘッドフォンの筐体をコーティングすることで、傷を付きにくく、目立ちにくくさせる効果があるため、コラボモデル製品でよく依頼があるそう。

eSiqの一例

上記の通りとても薄いので充電ケースにも干渉しないため、完全ワイヤレスイヤフォンもコーティング可能。最近は高価な機種が増えたこともあり、購入した完全ワイヤレスイヤフォンをそのままeSiqでコーティングして、大事に使っているという人も増えてきているとのことだ。

仙台駅前店を除いてe☆イヤホン各店では、ポリッシングサービスまで含めて、修理・カスタマイズをすべて店頭で行なうというのがコンセプトの一つとなっているそうだ。また、店頭持ち込みの他、宅配修理も可能で直接お店の方に行けない遠方の人であっても依頼できる。筆者もいざとなったら宅配で依頼してみよう。

古いヘッドフォンも大丈夫! 50年前のモデルの修理依頼も!?

今回持ち込んだ筆者のヘッドフォンMDR-XB700は、前述のイヤーパッド部分はもちろんのこと、所々に細かい傷が付いていて、持ち込み前に一度音を再生して確認してみると、プラグ部の問題だろうか、ノイズが入ったり、片方からしか音が出なかったりといった症状が出ていた。メンテナンスが必要なのは見た目だけではなさそうだ。

どちらもMDR-XB700だが今回持ってきたのは右の真っ白になっている方

「15年前のモデルを診てもらうことはできるのか?」と心配していたのだが、今回対応していただいたクリニック営業部部長の伊藤晃さんに見せたところ、「大丈夫ですよ」とすぐに症状をチェック。「ここまでイヤーパッドがキレイに剝がれちゃってるのも中々無いですね」と、筆者の心配とは裏腹にものの数分で音の途切れとアーム部分も直してもらえた。

早速チェックしてくれている伊藤さん

長年使い続けてもうガタが来てしまったのではと少し深刻に考えていた筆者は「え!? こんなに早く直るの?」とその速さに驚く。

「両出しのタイプの方が(断線していても)直しやすいんですよ」とケーブルも確認してもらったのだが、音途切れの原因も意外と単純なところにあった。ノイズも音切れもプラグ部のくすみが原因だったのだ。メンテナンス用油を使って磨いてもらい、あっという間に復活。何事も無かったかのように綺麗に音が再生されるようになった。バンド部のネジも一度締め直してもらったら、問題なく締まったそうだ。

一方で、イヤーパッドはさすがに取り扱いがないそうで、今回はそのままに。上記の通り、持ち込みが可能なので、また別のタイミングで代えのパッドを持ち込んで取り付けてもらうつもりだ。

改めて見ると中まで結構ボロボロ……

気になったので、ほかにもXB700の修理依頼があるのか聞いてみると、年に数件あるそうだ。お仲間がいることもそうだが、前例があると少しホッとする。人気モデルだけあって、今でもノンブランド品のイヤパッドなども比較的入手しやすいそうだ。

このほかにも古いモデルの修理依頼は多いそうで、伊藤さんは「10年くらい前のモデルとか、過去一番古いものはSONYさんの50年くらい前のモデルの修理依頼もありました。僕らが生まれる前の物なんですよね。でもちゃんと音も出たんですよ」と話してくれた。そんな昔のものまで!? しかも直せちゃうんだ……

一番多い修理は“ケーブル”。音は出るけど皮膜がボロボロに……

修理依頼の多くはプラグの根元部分とケーブルの分岐上部分なのだそうだ。その理由は、曲げ伸ばしによる断線や皮脂や汗による表皮の劣化によるもの。実はこの表皮の劣化の方が断線よりも多いそうで、音は出るのにケーブルがボロボロになってしまいケーブル交換という内容が最多だそう。

ケーブル修理依頼の一例。こんなにバキバキでも音は出るそう

こちらは肌に触れやすい耳元あたりのケーブルが裂けてしまっている。こちらも音は出るそう

部品の劣化は長く使っているとどうしても避けては通れない問題だが、長持ちさせるコツを聞いてみると、「個人でできるメンテナンスとしては、夏場は特になのですが、汗をかくので肌にあたって汚れてゴムが劣化しやすいです。使用後にレザー部分やケーブル部分をタオルやマイクロファイバークロス等で乾拭きしてあげれば長持ちしやすいですね」とのことだ。普段使いしているとあまり気づかない細かい汚れではあるが、肌に触れる部分は小まめに手入れしてあげよう。

ケーブルの修理の際に、全く別のケーブルにしてみたり、バランス接続化したりといったカスタマイズも人気なようで、取材時にもリケーブルできないタイプのヘッドフォンのバランス接続化の依頼品が複数あった。秋葉原という立地もあり、オヤイデのケーブルを購入してきて、ここでカスタマイズしてもらうということもよくあるそう。

修理の多い機種でいうと、Shureのイヤフォン「SE535」「AONIC 5」「SE846」といったロングセラーかつ決して安くはないモデルが多いという。ロングセラーのモデルの場合、メーカーのサポートがあるのでは? と思うかもしれないが、有償かつ修理ではなく交換対応となってしまうことがある。

「あくまで今使っているモデルを使い続けたい」という要望が多く、耐用年数をとっくに超えた、筐体自体が崩れてしまいそうなものも修理したことがあるそうだ。そんな話を聞いてしまうと、「これはもうダメかもな」と思うような状態でも、とりあえず診てもらう方が良さそうだ。

MDR-CD900STは全箇所修理できる!! バランス接続化などのカスタマイズも

実は今回はAV Watch編集部にあったソニー「MDR-CD900ST」も一緒に持ち込んでいる。この900ST、編集長も「いつからあるのかよくわからない」という代物で、パッドはペタンコだし、中身もボロボロ。なんならたまに音の出方も怪しくなってしまっている。このままだと比較用に使うのも心許ない。

編集部のMDR-CD900ST。パッドとウレタンリングがボロボロ……

もちろん、ソニー・ミュージックソリューションズでいつでも有償修理が可能ではあるのだが、e☆イヤホンクリニックに持ち込めば、不調の原因やそもそも修理が必要なのかという相談もできる。混雑状況に寄れど比較的早く直してもらえることも利点だ。

持ち込んだ900STは、イヤーパッドだけでなく、その内側のウレタンリングもペッタンコになっていたので交換。音回りの不調はXB700同様にプラグのくすみが原因……だったのだが、本体の標準プラグではなく、3.5mmの変換ケーブル側のプラグ。ドライバーやケーブル部含め、本体側にはとくに不調がなかった。消耗品と工賃含めて2,500円程度だ。こんなに安く済むとは思わなかった。

緩みなどもチェック

新しいウレタンリングに

イヤーパッドも交換

まるで新品のような見た目に

興味深いのが、900STについてもプラグ部の変更や、ケーブルのリサイズといったカスタマイズができること。ケーブルの着脱化も可能なほか、持ち運びのしやすい折りたたみ化もできるそうだ。今回は編集部の検証用なので修理に留めたが、私物であればケーブル着脱化と折りたたみ化はお願いしてみたかった。

ケーブル着脱化、折りたたみ化、少し厚めのイヤーパッドにカスタマイズされたMDR-CD900ST

Webには詳細ページも用意されているので、MDR-CD900STユーザーは一度確認しておくと今後のもしものときに役に立つだろう。

大事なものをより“使いやすく”直してくれる

「より使いやすく、より長く使っていただきたいという思いでユーザー一人一人のニーズにお応えしています。どのように修理するか、どのようにカスタマイズするかで金額は変わってきますが、触診や音出し等であれば無料で。分解が必要な場合は有料になってしまいますが、まずは気軽にご相談いただければ、過去のデータベースから最適の修理を提案させていただきます」と伊藤さんは語る。

まさに駆け込み寺だ。修理やカスタマイズを含めて今後、筆者も困った時はe☆イヤホン クリニックにお願いしよう。e☆イヤホンのスタッフの方々はとても親切に一緒になって”一番イイもの”を考えてくれる。

是非、お気に入りのものやこれから購入を考えているもの、はたまた今は眠っているかつてのお気に入りを持ち込んでみてはいかがだろうか。きっと、あなた"だけ"のイヤフォン・ヘッドフォンに再会できることだろう。