Appleが「従業員のソーシャルメディア利用を制限している」として全米労働関係委員会から告発される
アメリカにおける労働関係法を執行する全米労働関係委員会(NLRB)が、Appleは従業員のSlackやソーシャルメディアの使用を制限しているとして、同社を告発しました。
US labor board accuses Apple of restricting workers' Slack, social media use | Reuters
https://www.reuters.com/technology/apple-accused-restricting-workers-slack-social-media-use-by-us-labor-board-2024-10-11/
現地時間の2024年10月10日(木)、NLRBはAppleに対する訴状を提出しました。訴状では、AppleがSlackの使用に関する違法な就業規則を維持したり、Slack上で職場環境の改善を訴えた従業員を違法に解雇したり、別の従業員に対してソーシャルメディアへの投稿を削除するよう要求したりしているとして、同社を非難しています。
NLRBが2024年10月にAppleを告発したのはこれが2度目のことです。NLRBは2024年10月第1週にも、「Appleは従業員に対して違法な秘密保持契約や就業禁止契約への署名を義務付けるといった職場規則を設けることで、従業員が団結し、労働条件の改善を求める権利を行使することを阻害していた」と非難しました。
米労働当局がアップル告発、違法な職場規則で社員の権利侵害か | ロイター
https://jp.reuters.com/world/us/RK5RCBIKTFOMDAKH3PB5EDLEUA-2024-10-02/
NLRBの告発に対して、Appleの広報担当者はロイターに「前向きで包括的な職場」を維持することに尽力しており、従業員からの苦情を真剣に受け止めているとコメント。ただし、NLRBの主張については「当社はこれらの主張に強く反対しており、公聴会で引き続き事実を伝えていく」と説明しています。また、2024年10月の最初の告発に対して、Appleは不正行為を行っていることを否定し、賃金・労働時間・労働条件について話し合う従業員の権利を尊重すると説明しました。
AppleがNLRBと和解できない場合、行政裁判官が2025年2月にこの訴訟の最初の審理を行います。裁判官の決定は5人のメンバーからなる労働委員会によって再検討され、判決が不服の場合は連邦裁判所に控訴することも可能です。
NLRBによる今回の訴訟は、2021年にヤネケ・パリッシュ氏がNLRBに提出した苦情に端を発したものです。同氏はAppleで行なわれていた従業員運動を主導していた人物ですが、同氏はこれらの活動が原因で2021年に解雇されたと主張しています。
今回の訴状によると、パリッシュ氏はSlackやソーシャルメディアを利用して恒久的なリモートワークを提唱したり、賃金平等に関する調査を配布してApple社内で巻き起こる性差別や人種差別の疑惑を詳述し、Appleを批判する公開書簡を投稿したりしました。
従業員によるグループ会話が可能なSlackは、数年前にAppleで導入され、新型コロナウイルスのパンデミック期間中に社内のコミュニケーションツールとして人気を集めました。NLRBの告発によると、Appleは従業員が管理者の許可なく新しいSlackチャンネルを作成することを禁止しており、職場の懸念に関する投稿は管理者または「People Support」と呼ばれるグループに送信されなければいけないそうです。
なお、パリッシュ氏の弁護士を務めるローリー・バージェス氏は、2024年10月11日(金)にAppleが労働者の権利を「広範囲に侵害」したと語っています。バージェス氏は「Appleは違法な社内規則を駆使することで、職場に浸透している性差別やその他の公民権侵害を告発するという保護活動に従事した従業員を解雇しました。この件について、裁判でAppleの責任を問いたいと考えています」と述べました。
訴状において、NLRBはAppleが違法とされるポリシーを撤回し、パリッシュ氏の解雇による収入の損失やその他の経済的影響を補償するよう命じることを求めています。