記事のポイントトゥーフェイスドは、メイクアップ商品のキャンペーンで長尺コンテンツを再導入し、クリエイターのアマンダ・マッキャンツを起用した。主力商品「ボーンディスウェイ・マルチユーススカルプティングスーパーカバレッジコンシーラー」の売上が34%増加し、ファンからの強い支持を背景にさらなる拡販を狙っている。ほかの美容ブランドも長尺コンテンツに力を入れており、トゥーフェイスドはこのトレンドを維持するかどうかを今回のキャンペーンの成功にかけている。
1998年に設立され、2016年に化粧品メーカーのエスティローダーカンパニーズ(Estée Lauder Companies)に買収されたメイクアップブランドのトゥーフェイスド(Too Faced)は、ソーシャルメディアプラットフォームやトレンドの興亡を十分に見てきた。最新のキャンペーンでは、かつて採用していた長尺コンテンツに再び力を入れており、かなり長いあいだ活用していなかった形式に取り組んでいる。

トゥーフェイスドが再び「長尺」を手がける

同ブランドは、主力商品のひとつであるボーンディスウェイ・マルチユーススカルプティングスーパーカバレッジコンシーラー(Born This Way Multi-Use Sculpting Super Coverage Concealer)にフォーカスしたキャンペーンのために、2022年から協業しているクリエイターのアマンダ・マッキャンツ(TikTokのフォロワー数95万9000人、インスタグラムのフォロワー数53万3000人)を起用した。4分間のキャンペーン動画で、マッキャンツは本人役で、ポッドキャスト「トゥーフェイスドとお茶を(Tea With Too Faced)」に登場し、自身の完璧な肌の秘密について正直に語っているかどうかを明らかにするために嘘発見器テストを受けるよう求められる。司会はトゥーフェイスドのグローバルビューティー担当エグゼクティブディレクターのエリーゼ・ルノー氏だ。このショートフィルムのフルバージョンは5分近くあり、ブランドのYouTube(登録者数26万3000人)で視聴できる。これをさらに短く編集したものが、ブランドのインスタグラムとTikTokに投稿される予定だ。さらに、TikTok、メタ(Meta)の各種プラットフォーム、ピンタレスト(Pinterest)、YouTubeでプロモーション活動が行われる。キャンペーンは9月23日に開始スタートし、11月3日まで続く。

「トゥーフェイスドとお茶を」のYouTubeプロモーション

熱狂的ファンへのアプローチ

トゥーフェイスドが長尺コンテンツに挑戦するのは、これが初めてではない。同ブランドはこれまでにも、カンディー・ジョンソン、ジジ・ゴージャス、マリアレ・マレロ、エリカ・ジェインなどのクリエイターと協業し、ベターザンセックス(Better Than Sex)マスカラなどほかの主力商品をフィーチャーしたYouTubeコンテンツを作成してきた。しかし、これらの動画は6年前から9年前のものだ。スーパーカバレッジコンシーラーは旋風を巻き起こし、同ブランドが再び長尺コンテンツに手を出すきっかけになったと、エスティローダーカンパニーズで西海岸ブランドのトゥーフェイスドとスマッシュボックス(Smashbox)のグローバルブランドプレジデントを務めるタラ・サイモン氏は話した。「熱狂的なファンがついている」のだという。「新しいトラベルサイズを6月に発売したところ、この人気商品はますます話題になり、売上も増えた。そこで、この商品にもう少し手をかけたいと思った」。サイモン氏によると、ユーザーはこの商品に対してロイヤルティが高く、コンシーラーやハイライト、コントゥアなど、さまざまな用途に使用しているという。市場調査企業のサカーナ(Circana)が報じたところによると、スーパーカバレッジは過去1年間で売上が34%増加しており、サイモン氏は、この商品は使用前と使用後の違いが即座にわかるため、「ソーシャルメディアで大人気」だからだろうと述べている。トゥーフェイスドは、TikTokのフォロワー数が100万人を超えた数少ない美容ブランドのひとつだ。しかしこのキャンペーンは、同社がTikTokや、さらに1260万人のフォロワーを擁するインスタグラムから撤退する計画の兆候というわけではないと、サイモン氏は語った。

競合他社も長尺を取り入れる

最近、長尺コンテンツに手を出した美容ブランドはトゥーフェイスドだけではない。エルフ(E.l.f.)は1月に「コスメ泥棒(Cosmetic Criminals)」と題した15分間のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)を公開した。これはソーシャルメディアで展開されたほか、一部の映画館でリメイク版『ミーン・ガールズ(英題:Mean Girls)』の前に上映された。また、ボディケアブランドのイオス(Eos)はデザイナーのジョー・アンドー氏と提携し、NYファッションウィークに合わせて同ブランドのボディローションからインスピレーションを得たドレスを作成し、その後、製作過程を描いたミニドキュメンタリーを公開した。

イオスとジョー・アンドー氏のコラボレーションを追ったミニドキュメンタリー

トゥーフェイスドの動画では、歌手オリビア・ロドリゴなどのヘアを手がけるクレイトン・ホーキンス氏がアマンダ・マッキャンツとエリーゼ・ルノー氏のヘアを担当し、ケイティ・ペリーなどを手がけるアレックス・フレンチ氏がメイクアップを担当。タビサ・サンチェス氏がファッションスタイリストを務めた。「こんな神様のような人たちに囲まれて、世界的大企業が私を中心とした寸劇をまるごと書き上げてくれて、最高に光栄だった」とマッキャンツは語った。このキャンペーンはトゥーフェイスドの社内チームの発案によるものだ。サイモン氏は投資額を明らかにしなかったが、エージェンシーを雇う必要がなかったため、キャンペーンは「思ったほど高価なものにはならなかった」とだけ述べた。トゥーフェイスドが引き続き長尺コンテンツに力を入れていくかどうかについて、サイモン氏は、キャンペーン「トゥーフェイスドとお茶を」が成功するかどうかにかかっていると語った。[原文:Why Too Faced is leaning into long-form content]Sara Spruch-Feiner(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)