食事をするとき脳内では4つのニューロンのグループがリレーをするように順番に働いている
動物が生きていくためには、定期的に食事をしてエネルギーを補給する必要があります。このとき、最初の空腹感が収まってすぐ食事をやめると必要なエネルギーに足りないので、適切なところまでは食事を続ける必要があります。脳がこの食事の持続時間をどう制御しているのかはこれまではっきりわかっていなかったとのことで、ドイツの研究チームが食事中に脳で何が起きているのかを調べました。
https://www.jneurosci.org/content/early/2024/09/04/JNEUROSCI.0518-24.2024
Brain divides meal into different phases | FAU Erlangen-Nürnberg
https://www.fau.eu/2024/09/17/news/brain-divides-meal-into-different-phases/
Mouse Experiment Reveals Brains Divide Meal Time Into Four Stages : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/mouse-experiment-reveals-brains-divide-meal-time-into-four-stages
調査を行ったのは、ドイツにあるフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク(FAU)とケルン大学病院の研究チームです。チームを率いるFAUのアレクセイ・ポノマレンコ教授は「脳が『満腹期』の持続時間をどのように制御しているか、ほとんどわかっていません。適切なエネルギーを摂取するためには、長すぎても短すぎてもダメなのです」と語っています。
研究チームは、ヒトの視床下部と似た構造を持つマウスに人工知能の手法を用いて、視床下部の特定領域の電気的活動を分析しました。「これにより、どのニューロンが食物摂取中の特定時間に『発火』、つまり電気的刺激を発生させるかを突き止めることができます」と、研究の共同筆頭著者であるマフサ・アルタフィ氏は述べました。
分析の結果、食事を行うと、4つの異なるニューロンのグループが順番に活性化することが確認されました。
ニューロングループは、まるで協力してレースの異なる局面に参加するリレー走者のように働いているとのことで、ポノマレンコ教授は「血糖値、空腹ホルモンの量、満腹度などに応じ、視床下部は我々の食事量が少なすぎず、かつ多過ぎでもないようにしているのです」と説明しています。
研究チームはまた、それぞれのグループ内のニューロンがどのようにコミュニケーションを取っているのかについても調べました。
神経細胞には活動のリズムがあり、活発に「発火」するときとほとんど「発火」しないときがあることが知られていて、状態は規則的に入れ替わり、時には1秒間に数十回「発火」することもあるとのこと。コミュニケーションを取るためには、同じリズムで発火しなければいけませんが、調べによると、食物摂取に関与するニューロンのグループはすべて同じリズムで発火しており、食物摂取に関わらないニューロンは異なるリズムで発火する傾向があることがわかりました。このため、食事に関連するニューロンだけで情報交換を行い、適切なタイミングで食事のプロセスを終わらせることが容易になっているそうです。
また、今回の発見は、たとえば外部から磁場の振動を用いてニューロンの発火に影響を与え、食事に関連するニューロングループのコミュニケーションを改善することで、摂食障害の緩和にも役立つ可能性が示されています。
ポノマレンコ教授は「マウスの場合、ニューロンの振動性挙動は光遺伝学的操作によってさらに直接的に影響を受けるため、これが摂食行動にどのような影響を及ぼすのか調べるための追跡研究を計画しています」と語りました。