【Jリーグ秘話】川淵三郎が激白「クラブ名から企業外し」はどうやって実現したか「許していたら成功はなかった」

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 思い返せばJリーグ創設時に大きな問題となったのが、チーム名に企業の名前を入れるのかどうか、だった。プロ野球では企業名を入れるのが当たり前だが、Jリーグは地域密着を目指し、親会社の意向にとらわれないようにするため、企業名を外して地域名を入れることが決まった。

 この決定に、Jリーグ参加を表明していた複数の企業が反発。特に読売サッカークラブ(のちのヴェルディ川崎)の親会社である読売新聞社の渡邉恒雄社長が反対を表明。川淵三郎チェアマンと方針をめぐって激しく対立した。

 その川淵氏がYouTube「ののちゃんねる」に出演し、企業名外しの経緯を明らかにした。

 川淵氏によると、チーム名に企業名を入れることを禁ずる規約は、Jリーグ設立時からないのだという。

「Jリーグに参加してくれますか、どうですかっていうヒアリングをした時に、企業名を出さないでできますかと個あたりしたら、読売はもうダメで、もうひとつかふたつ。パナソニックもダメで、大阪で仕事をしているわけではなく日本全国で仕事をしているので、地域名なんて付けたくないという感じ。そういうのを無視して強行突破すると、Jリーグを設立できる可能性が薄いかもしれない。ここは様子を見ようということで話を進めたら、マスコミが僕らをバックアップしてくれた。この勢いならいけるな。そういう流れを見た上で、企業名を外せと言った」

 なんと川淵チェアマンの言葉だけが、企業名外しの理由だったのである。その上で、

「これ(企業名外し)がなくちゃ、もう絶対成功しない。間違いなく成功しなかったよ」

 そう言って自画自賛したのである。ただし、決定までにはブレまくっていた事実もあり、

「ジェフユナイテッド市原が、JR東日本と古河電工で合併した会社だからジェフにしたい、と言ってきた。それだと会社の名前が入ってるじゃないかと言ったら『会社の名前かどうかってそんなの別で、ジェフなんです』というわけのわからない説明を聞いて、ジェフがJR東日本と古河電工だと思う人はいないという感じがあって、決めたいきさつがある。例えばコカ・コーラが入って、『CC〇〇』というチーム名になって、CCがコカ・コーラと思う人はいないのと同じ。それが(コカ・コーラが売れる)結果になったって、それはそれでいい」

 この考え方がOKであれば、読売サッカークラブが「YSヴェルディ」でもいいことになってしまうのだが、川淵氏はそこまでは考えが及んでいないようだった。

 Jリーグの根幹でもある「チーム名から企業名を外す」という理念が、このように生まれたことに、サポーターは驚いたことだろう。

(鈴木誠)