恐怖再び…首都圏で相次ぐ緊縛強盗 高齢者狙う闇バイトか 「トクリュウ」の正体とは

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 埼玉県所沢市で起きた、強盗事件の犯人とみられる男が走って逃げる映像です。後ろから警察官が追いかけていく様子が映っています。今、首都圏で、高齢者が住む住宅に押し入る強盗事件が相次いでいます。実行役は闇バイトで集められるなどいくつかの共通点が見えてきました。

【画像】刃物のようなもので80代夫婦切り付けか…玄関には多くの血痕 庭には通帳

■85歳、83歳住人に「金出せ」切り付けも

 1日午前2時20分ごろ、埼玉県所沢市の住宅街で撮影された防犯カメラの映像です。

 画面奥から、赤色灯を光らせた1台のパトカーを先頭に、警察車両が後ろに続いて走行しています。そのわずか1分後に、パトカーなどが通り過ぎて行った方向から逃走する容疑者とみられる男が猛スピードで走っていきます。

 警察官が逃走する容疑者とみられる男を走って追いかけているのが分かります。逃走する人物の服装は、黒い半袖にグレーの長ズボンを着ています。

 住宅街の別のカメラには、画面奥から必死に逃走する男が映っていました。そのおよそ10秒後、後を追う警察官が明かりを照らしながら追いかけます。

 そして男は、住宅街ではなく畑へと逃走。男は茂みがある方へと消えていきます。どうにか男の姿を捉えようと、警察官が明かりを照らし続けているのが分かります。

住民からの110番通報(午前2時すぎ)
「ドアをたたいている音がする」

 勝手口のガラス戸が割られ、その手前の鉢植えはなぎ倒されています。現場は西武池袋線・小手指駅から西に700メートルほど離れた、埼玉県所沢市の2階建て住宅。

 警察によると、1日午前2時ごろ所沢市の住宅に4人の男が押し入り、住人の85歳と83歳の夫婦に「金を出せ」と脅し、粘着テープで縛ったうえで、刃物のようなもので2人の腕を切り付け、現金およそ8万円などを奪いました。

 玄関を出てすぐの所には、多くの血痕があります。

 庭には通帳も落ちています。

 住人の男性は腕に全治2週間のけがをしたものの、命に別状はないということです。

■実行役は面識なし「闇バイトに応募した」周辺の住民
「ちょっと強めの男同士のやりとりみたいなのは聞こえた。声が聞こえたのが午前1時(台)ぐらいとは思うんですけど。うるさいなって」

 捜査関係者によると、警察官が駆け付け家の中から男が出てくると、そのまま逃走。100メートルほど追いかけたところで警察が現行犯逮捕しました。

 強盗致傷の疑いで逮捕されたのは、前橋市の自称・飲食店店長の海藤貴志容疑者(43歳)。容疑を認めているということです。

 警察によると、緊急配備をかけたところ、事件発生から2時間後に現行犯逮捕された海藤容疑者のほかに服に血が付いているなど不審な男2人を確保。

 佐藤聖峻容疑者(24)。和佐裕夢容疑者(28)を1日夜逮捕しました。捜査関係者によると、2人は「SNSを使って闇バイトに応募した」と話し、容疑を認めているといいます。

 残る1人はまだ逃走中ですが、逮捕された3人はいずれも実行役で面識がなく、秘匿性の高いアプリを利用して連絡をとっていたとみられます。

■ハンマーのようなもので顔を殴られ…

 この強盗事件の前日、現場からおよそ11キロ離れた東京・国分寺市でも、現場周辺の防犯カメラには不審な音が記録されていました。

 日が昇る前の先月30日午前4時ごろ。数分おきに車が行き交うなか、住宅街に何度も響き渡る異様な音。

防犯カメラを設置していた家の住人
「去年お母さんが亡くなって独りになったっていうので、ちょっと目を付けられてしまったのかな」

 所沢の事件同様、勝手口のガラスが割れています。

 捜査関係者によると、一人暮らしの60代女性がハンマーのようなもので顔を殴られ、粘着テープで頭から足までグルグル巻きに縛られました。

 午前5時すぎ、女性が助けを求めた時とみられる防犯カメラの映像です。白っぽい服を着た人物が、バイクに乗った人に助けを求めるような姿が。白っぽい服の人物が被害女性と見られ、後ろ手に縛られているようにもみえます。そして2回、屈伸をしているような動きも。

通報者(新聞配達員)
「口にガムテープ張られた状態でうなるような感じで。寝巻ですね。後ろでガムテープぐるぐる巻きで口もふさがっていて、明らかにただならない状況だったので、とりあえず女性の口に貼ってあったガムテープをはがして『携帯もっていないか?110番してほしい』と。女性は縛れていたので自分が携帯を前に置いてあげるような形で『4〜5人の男性でハンマーみたいなのを持っていて』っていうのははっきり言っていて。とにかく『お金出せ』みたいな感じで。最後まで口を割らなかったらしいです。金があるないは言わなくて、ひたすら殴られたみたい」■東京・練馬区でも…

 所沢と国分寺で起きた強盗事件。2つの事件の共通点が見えてきました。

 所沢市の犯行現場から100メートルほどしか離れていない場所に、犯行グループの痕跡が残されていました。

 1台は前橋の「わ」ナンバー。レンタカーとみられます。

 そしてもう1台は、白いコンパクトカー。ナンバーは「11−30」。実はこの車、国分寺市で起きた強盗事件にも使われていました。

 国分寺の犯行現場からわずか50メートルしか離れていないコインパーキングを映した防犯カメラには、犯行直前10分前の午前3時50分ごろ白のコンパクトカーが現れます。所沢の事件と同じ車種で、ナンバーも同じ「11−30」。

 駐車場を出たのは、その1時間後でした。

 映像を巻き戻してみると、同じ駐車場に止まっていた軽ワゴンが出ていきます。捜査関係者はこの軽ワゴンも、国分寺での事件に使われたとみています。白いコンパクトカーはその後を追うように去っていきました。

 国分寺市と所沢市は夜中なら車で30分ほどの距離。警視庁などは2つの事件の関連を調べています。

 先月28日には、東京・練馬区で住宅に窓ガラスを割って侵入「金を出せ」などと脅し、50代と20代の親子に暴行を加えけがをさせた疑いで3人が逮捕。「闇バイトに応募して犯行に及んだ」と、供述しています。

■首都圏で再び相次ぐ「トクリュウ」

 首都圏で相次ぐ、闇バイトによるとみられる強盗事件。

 おととし10月から去年1月にかけても関東などで、闇バイトによる強盗事件や窃盗事件が多数発生しました。

 去年1月には、東京・狛江市の住宅で90歳の女性が結束バンドで両手を縛られ殺害される事件が発生。現場からは指輪など60万円相当が盗まれています。

 警察は去年2月、一連の強盗事件の指示役として犯行グループのメンバーを潜伏先のフィリピンから移送し次々と逮捕。警察庁は、狛江の事件を受け取り締まりを強化してきました。

警察庁 露木康浩長官
「匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」というふうに呼んでいますけれども、これに対する戦略的な取締りをさらに強化してまいりたい」

 「トクリュウ」とは、匿名・流動型犯罪グループの略称で、SNSなどを通じて犯罪の実行役を集め互いの素性を知らずに集合・離散を繰り返すのが特徴です。

 取り締まりの強化から1年半、首都圏で再び相次いでいる「トクリュウ」による強盗事件。

 その背景について、元埼玉県警捜査一課の佐々木成三氏は次のように話します。

佐々木氏
「トクリュウ型、匿名・流動型犯罪グループっていうのは、一つではなくて多くのグループが活発に動いているということだと思う。匿名性アプリを使ったりとか、SNSのやり取りで、実行犯が指示した通りに動いてくれるという、この仕組みがあるから、指示役、中枢の被疑者までたどり着く突き上げ捜査がかなり難しいのが現状ですね」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年10月2日放送分より)