日本政府が「犯罪王国カンボジア」に6000億円超の援助…「そのほとんどがフンセン一族の収入になっている」ヤバすぎる実態

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第1回記事『元「関東連合」見立真一も合流か…「犯罪者の天国」カンボジアに群がる日本裏社会の住人ら…その腐敗の限りを尽くした闇底』もあわせてお読みください。

政府と財閥が癒着し、オンライン詐欺を“公認”

9月12日、アメリカ財務省がカンボジアの有力上院議員、「リー・ヨン・パット」(66歳)をマグニツキー法に基づいて資産凍結や入国禁止の制裁対象にする、と発表した。この法律は人権侵害に関わった個人や組織に資産の凍結や入国禁止を課す制裁法で現在、世界34か国でも同様の法律が施行されている。

この「リー・ヨン・パット」はタイ国境のコッコン州出身の大地主で地元の漁業やごみ処理などの権益を独占し、フンセン前首相の最高顧問、コッコン州開発政府代表、そして多くの経済特区やニュータウン開発、巨大プランテーション事業からホテルチェーン、不動産、物流、テレビ局と多岐にわたるコングロマリット企業「LYPグループ」のCEOを務めるカンボジア5大財閥の一人だ。そして昨年設立されたカンボジア国王から民間人に与えられる最高の貴族階級の称号を持つ人たちの組織「オクニャー」協会の会長にも選任されている。名誉会長はフンセン前首相だ。

そんなカンボジアを代表する経済人にかけられた人権侵害の嫌疑は「自身が経営するタイ国境にあるカジノホテル「O-smachリゾート」でのオンライン詐欺や仮想通貨詐欺と虚偽の求人で集めた人間への強制労働、逃げようとした人への暴行監禁、拷問」などだ。インドネシアやタイ、中国人などの多くの被害者がこのホテルから救出されたという。電気ショックなどの拷問も行われ2名の自殺者も出ている。

いまカンボジアでは日本などのアジア各国や海外にメールやSNS、IP電話などインターネットを駆使した投資詐欺や特殊詐欺の「オンライン詐欺」が堂々と行われ、インドネシアやタイ、中国など海外から大量に高収入を煽った虚偽求人広告などで集めた人間たちを監禁し強制労働させている、と海外のメディアや人権団体から厳しく指摘されている。今年に入って何か所もの拠点で大量の人間が保護されているが、首謀者は一切逮捕どころか捜査もされていない。そこには政府と財閥が共謀して「オンライン詐欺」を行っている、という信じがたい疑惑の構図が存在するのだ。

そしてこの「リー・ヨン・パット」をはるかに凌ぐ規模の経済力で政府と癒着し、詐欺や犯罪を繰り返している、と指摘されているのが中華系財閥「プリンスグループ」だ。

若き大悪漢「陳志」

代表の「陳志」は若干36歳。福建省で小さなネットカフェをやっていた彼は23歳の時に国を捨てカンボジアに移住した。そしてあっという間にシアヌークビルのカジノバブルで資産を築き、カンボジアに帰化。さらにマイクロファイナンスを手始めに商業銀行免許を取得、一気に事業規模を拡大した。僅か10年ほどで金融、不動産、映画、観光業、ホテルチェーンなどあらゆる分野を網羅する一大コングロマリット企業に急成長した。フン・セン前政権やフン・マネ新政権でも大臣クラスの地位に就き正式な政府の要職として外交使節団にも同行、ラオスには政府代表として援助をした。

海外に分散した資産も半端ではない。彼らはロンドンに1億1400万ドル程のオフィスビルを持ち、31か国で確認できるだけで少なくとも15億ドル以上の有価証券を保有し、さらになぜかキューバの国営葉巻会社の25%、28億ドル相当を所有しているとアメリカ政府系メディアRFA(ラジオフリーアジア)が指摘している。

そしてRFAはプリンスグループの収益の多くは国際オンライン詐欺、暗号通貨詐欺などの詐欺犯罪で得た収益で、さらに「リー・ヨン・パット」同様に人身売買や強制労働、暴行監禁などを行っている、と告発している。ほかにも麻薬売買や未解決殺人など多くの疑惑もある。事実、今年6月には監禁されていたホテルから逃げ出した中国人がその実情を中国のネットサイトで告発し話題になった。「ポーライホテル」の別棟に監禁されパスポートを取り上げられ、脅迫や電気ショックなどの暴行を受けて働かされたという。朝8時から深夜1まで休日もなく働かされる。週に1本の飲み物と腐った果物と粗末な食事。まさに奴隷のような生活で、5階が日本エリア、7階がインドエリアと詐欺対象地域ごとに担当が分けられ、「裏ではプリンスグループが関与している」と告発している。

また、昨年、このようなオンライン詐欺グループに騙されて働かせられ、命からがら脱出した実話を基にした映画「孤注一擲(No More bets)」が中国で公開され大ヒットした。その影響で中国からの観光客が激減したという。もちろんカンボジアでは上映禁止だ。

さらにRFAの調査ではマン島にあるAというゲーム会社を通じて巨額のマネーロンダリングも行っている、と報告している。中国政府も国際オンライン詐欺による大量の資金の海外流出を国家安全保障上の脅威と判断しており、北京公安局も特別チームを作ってプリンスグループの調査を開始した、という。まさにこれはメキシコのマフィア・カルテルと政府の癒着を超えるギャング映画のような世界と言えるだろう。

日本に迫る魔の手

そして最近、これらカンボジアを拠点とした国際オンライン詐欺シンジケートに日本の反社グループや半グレ集団が接近し、傘下に入ろうとしている、というのだ。昔、元関東連合のIら反社グループと親しく一緒によく飲んで遊んだ、という吉田氏(仮名)は「彼らがやっているオンライン詐欺の仕組みは元々中華マフィアのやり方を真似たモノ。今度、プリンスの軒下を借りられるんだ、と自慢げに話していました」という。

カンボジアと反社グループの接点を作って後ろ盾にもなっていたと言われ、フンセンと昵懇の仲で貴族の称号も得ている元山口組系後藤組の後藤忠正はすでに日本に帰国した。

日本の反社グループが新たにプリンスグループなどの巨大シンジケートの傘下に入ると、日本をターゲットにした、日本の警察力が届かない強力な犯罪ネットワークが構築され、日本での被害が拡大するのは間違いない。

先日、フィリピンのバンバン市元市長で別人に偽装した中国のスパイや中華マフィアとの関係を疑われるアリス・グオが逮捕された。彼女も大規模にオンライン詐欺を行っていた。いま、ミャンマーやタイなどアジア各国で同様の犯罪が急速に広がっている。これは決して偶然とは思えない。アンタッチャブルと言われるプリンスグループを唯一厳しく追及するRFAもこの現状に危惧するアメリカ政府の意向が反映されているのは間違いない。ほかにもシアヌークビル近くの中国系経済特区の180社ある中華系企業は米国への迂回輸出拠点だという疑惑が絶えず、さらにリアム海軍基地を中国解放軍が軍事利用するのでは、とアメリカ政府は警戒している。

日本政府の援助は4000億円以上

中国とカンボジアの深い関係の歴史は長く複雑だ。ポルポト政権への援助や闇資金、北京で客死したシアヌーク国王との複雑な関係。実は2019年のフンセンの突然の「オンラインカジノ禁止令」はフンセンが中国政府から海外への外貨流出を防ぐために厳命された、と言われている。シアヌークビルのカジノバブルも背景には中国マフィアや福建省など地方政府や関係者の闇資金のマネーロンダリングがあるのだ。

カンボジアはドルが流通しアジアで最も外貨の出入りが自由な国、つまり「マネーロンダリング大国」だ。これがアジアの犯罪集団を吸い寄せる要因の一つでもある。プリンスグループが銀行経営を始めてから急成長したのも納得がいく。犯罪集団が銀行を持つほど強力なものはない。推測の域だが10年で巨大な成長を遂げたプリンスグループの背景には陳志個人の能力とは別に何らかの巨大な力が隠されていると思わざるを得ない。キューバ葉巻会社への投資や政府視察団としてのキューバ要人との交流など、不可思議な行動が多々あるからだ。

しかし、我が日本政府はなんら疑問を持たずカンボジアに技術協力含め累計6222億円以上の援助資金を出してきた。「そのほとんどがフンセン一族の収入になっている」と日本在住のカンボジア人民主活動家は言う。しかし、これらはすべて国民の血税だ。入居者が僅か1社の日本が開発した経済特区、利用者がほとんど中華系企業のシアヌークビル港の港湾整備への援助。今年4月、外務省はカンボジアへの開発協力方針でデジタル基盤整備や司法・行政機能強化の支援などを明言した。果たして「犯罪王国・カンボジア」の現状をどこまで把握しているのか。それとも十分把握しながら伝統的「事なかれ主義」や「本省と在外との認識の乖離」、「内交官と揶揄される官僚体質」を貫いているのだろうか。

日本にはマグニツキー法に相当する法律はない。しかし日本からのデジタル技術支援でオンライン詐欺がより高度化し、司法・行政機能強化の名目でより腐敗した政府が巧妙に犯罪組織と癒着する法の抜け道を工作したら笑うに笑えない。政府は早急に戦略的援助への見直しや警察庁の新たな対応策を検討する必要があるだろう。いまもカンボジア発の国際オンライン詐欺集団は堂々と日本の被害者を狙っているのだ。

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